第3話 アニサマ・ラブエルフ

 兄さんと俺は人気が無い場所に移動し、ミステリは装備品を整える為一旦別れた。

 これは、訳アリ案件だな。


「最近パーティーはうまくやれているか?」

「ええ、3人で仲良くやっています」

「恋の1つでも芽生えたか?」

「全然ですよ、俺はクレージーフラグですよ? あの2人は分かりませんが」


「はっはっは、俺はフラグを高く評価している。父上や俺では突破できない壁があり、法治国家にも限界はある、だが、力を持ち、各団体に圧力をかける力を持っているフラグなら一見おかしいと思われる道で国を良くしていけるだろう」

「買い被り過ぎですよ」


「父上からの伝言だ。フラグが前に進言していたギルドのポーション管理の甘さだが、父上と俺で対策を練っている。あくまで事実を公開し、誰も罪には問わず、次は許さんと釘を刺すにとどめるつもりだ」

「ありがとうございます」


 ギルドの冒険者が国の補助制度を使い回復ポーションを安く買う。

 そして後で隠れて店に転売しする問題が起きていた。

 補助を受けて安く買えるポーションの転売は当然禁止されている。


 冒険者には荒くれ者が多く、適当にごまかすような人間が多い。

 ギルド長は荒くれ者をまとめるだけで手一杯で細かい管理にまで手が回らない。

 そして管理を細かくしすぎれば読み書きを出来ない冒険者をフォローするためにギルド員の負担が増え、さらには冒険者のやる気が無くなる。

 誰かを処罰すれば処罰された側のやる気が無くなる。


 だがポーションの補助を無くせば冒険者の死亡率が増えて長い目で見れば国としてはマイナスだ。

 よって釘を刺して「監視してますよ」と思わせるにとどめる。


「冒険者は攻の要で兵士は防の要だ。どちらか1つでも欠ければ国は成り立たない。フラグの判断は正しい」


 冒険者はモンスターを狩るアタッカーで兵士は治安維持や王都の防衛を主に行っている。

 明確な区分けは無いが倒せば金になるモンスター狩りは冒険者が行う事が多い。


 兵士は規律を守り、時間に遅れない真面目な人間が選ばれやすい。

 こうする事で国がうまく回っているのだ。

 元の世界に比べて人口の少ないこの世界で人は貴重だ。

 誰にも役割がある。


「大したことはしていませんよ。酒場で飲んでいたらたまたま噂を聞いて調べただけです」

「俺や父上とは違うフラグのような人間が必要なのだ」


 兄さんが俺の肩に手を置き、俺の耳に口を近づけた。


「それともう1つ、父上からの伝言だ」

「はい?」

「エルフ排除派とエルフ友好派の争いが激しさを増している。まだ表には出ていないが、裏では相当やり合っている」


 この国は昔隣国のエルフと戦争をしていた。

 戦争は終わり、2つの国は友好宣言を発表したが、老人世代は家族を殺されている為友好宣言に批判的な意見が多い。


「パーティー3人にミステリを入れて4人パーティーとして行動し、エルフの彼女を、モモイロを守って欲しい。正直に言おう。俺も父上もあまり守ってやれる余裕は無い」


 そういう事か、エルフ友好派と排除派の争いを納める為に忙しい。

 ミステリの面倒を見るリソースが無いし、モモイロを守る余裕もない。

 そして父上はハーフエルフで兄様と俺はエルフのクオーターだ。

 それだけで許せない、そう考える人間もいる為問題がさらにややこしくなっている。


「特にモモイロは見た目が良い。理由をつけて襲われる可能性もある。だが、フラグとモモイロが結婚をすれば王族となり守りやすくなるんだがな?」


 兄さんが冗談を言うように言った。

 占いババアと予言のメッセージが蘇る。


『モモイロはパーティーの誰かに恋をしています』


「は、ははは、モモイロは何を考えているのか分かりませんし、それに同じパーティーのバットとも仲がいいのです」

「バットか、確かにモテるが、バットの祖父はエルフ排除派の筆頭だ。あのバットがモモイロを傷つけるとは思わないが、父上からの言葉は胸に秘めたまま、4人パーティーの件には気を配って欲しい」


「バットが裏切るとは思えません」


 俺は予言を思い出した。


『バットは裏切ります』


 バットが裏切ると思いたくない。

 俺とバットは親友だ。


「俺も、そう思っている。だが、裏切らなくても、言わなくても祖父に態度だけで何かが漏れる可能性はある」

「それは、分かります」

「バットが裏切ることは無いにしても父上の言葉は誰にも言うな」

「はい」


 2人のモモイロとバットの本心が知りたい。

 

 何か気になれば確かめずにはいられない。


 だから俺はクレイジーだと言われる。


 それでも、2人の気持ちが知りたい。


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