第30話



 「…これはこれは、誰かと思えば」



 敵は驚いたような表情を見せる。


 その視線の先には、「飛鳥先生」がいた。


 …でも、なんで…?



 「…おいおい、なんだこの力は」



 クルルも察知していた。


 その“異常さ”に。



 “人間じゃない”



 それが率直な印象だった。


 学校で出会った時とはまるで違う気配。


 対象が呪霊ならまだわかる。


 仮に目の前にいるのが「霊体」だったとしたら…



 「仮にそうだとしてもあり得ねぇ…」


 「そう…だな…」



 クルルの言う通りだった。


 仮に目の前にいるのが霊体だとしても、この「霊力」はやばすぎる。


 霊界に存在する魔獣や精霊。


 この目で見てきたどの「怪物クラス」よりも凌駕する質量と密度。


 俺の中にある感知センサーが激しく警告音を鳴らしていた。


 ビービー!と、赤いメモリを振り切り。



 「先…生?」



 ヒロは地面にへたり込んだままだった。


 ただ、きっとこの“気配”には気づいていないと思った。


 霊力を感知できるのは一部の人間だけだ。

 

 子供の頃から訓練を積んでないと、霊力どころか霊気の微かな動きですら認識できない。


 だけど、“何か”を感じてるようだった。


 それほどまでに大きな「力」が、目の前にあったからだ。

 

 

 「あなたが“メフィスト”ね?」



 先生は屋上に立つ敵を見上げながら、そう呟いた。


 屋上にいるアイツがただの幽霊じゃないことはわかっていた。


 恐らく、地上に徘徊する「悪霊」の一種だろう。


 ただ、気になるのは…



 「掃除屋(クリーナー)がどうしてこんなところに?」


 「懸賞金が出てるのよ。小遣い稼ぎでね」



 懸賞金。


 魔法省が定めてる地方自治体向けの懸賞制度。


 世界各地に魔法省の支部が存在するが、その中でも地域ごとに分かれた『環境整備区画』、または『地域保全管理課』があり、地上に徘徊する悪霊や呪霊の討伐、及び捕縛を、個人事業主や非加盟団体向けに発信している。


 話には聞いたことがあった。


 クルルと話し合ったこともあるんだ。


 学校なんかやめて魔物討伐で生計を立てていくか??


 って。


 婆ちゃんにめっちゃ叱られたけど

 

 

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