第十七話 会議を始めます!
俺たち三人組はジェーン王に連れられて会議室へやってきた。
さすが王様の城、会議室がとても大きい。
立派なテーブルは一人用の椅子が10個以上置けるほどの大きさだ。
「適当に座ってくれ」王様にそう言われて本当に適当に座るグレスとソフィア。
今から話し合いだというのにテーブルの端と端に座っている。
呆れた俺は二人を注意した。
「おい、今から話し合うんだぞ。もっと近くにこいよ」
グレスはニコッと笑った。
「私は聞くだけにします。所詮平民なのでこのような場では意見を言える立場ではありません」
「そんなこと言ってないでお前も参加しろよ。俺の仲間だろ?」
ジェーン王は少し困っているグレスを見かねていた。
「まあ聞くだけで良いではないか、何かあれば遠慮なく話せ」
そんなグレスとは裏腹にやる気に満ち溢れているソフィア。
「さぁ、この王国を最強にしましょう!私たちの手で!そして私は英雄になるんです!」
何を言っているのだか……。
最強にするわけでもないしお前が英雄になることはない。
まぁ、こいつは放っておこう。
「では、ジェーン王話し合いを始めてもよろしいですか?」
「始めよう、まずはスカイの意見を聞かせてほしい」
俺はこの世界に転生してからのことを話した。
ちなみに『転生してからのこと』と言っているけど転生したとは口が裂けても言えないから言っていない。
まず、最初に目覚めた病院らしき場所では看護師さんみたいな人たちが痩せ細っていた。
それはアテンプト村もフルーティ村の人たちも一緒だった。
俺が出会った人たちを見て思ったこと、この国の一番の問題は食料だった。満足に食べれない人々は飢えを凌いで生活をしていた。
全ての原因はジェーン王に税を多く納めなければいけないためであった。
獣を狩り肉を獲ても農作物は収穫してもほとんどを納めなければいけない、例え売ったとしても売り上げのほとんどを納めなければいけない状況。
つまり自分たちで食料を得ても納めなければいけないし食料を買うお金を稼いでもそれを納めなければいけない。
どう工夫しても国の人々は飢えてしまうようになっている。
「まずは税を減らしましょう」
それが一番最初に見直さなければいけないことだと俺は考えてた。
そして俺は王様に伝えた、王国の人々が一番苦しんでいる原因は税の取り過ぎだということを。
「確かに王国の発展と維持そして防衛には税は必要です。ただ、現状では取り過ぎています」
ジェーン王は納得した様子で頷きながらさらに俺に質問をしてきた。
「では、スカイの考えでは税を少なくするということで良いか?」
少なくするだけでは早急に人々の貧困問題は解決できない、まずはゼロにする事で負担を無くしたい。
「いや、少なくするだけでなくしばらくは税を取るのはやめましょう」
これが人々にとって一番行なってほしい事だろう。
だからこそ必ずしなければいけないこと。
ジェーン王とグレスは驚いた顔をした。
ソフィアはそもそも税というものを知らないといった顔をしている。
「スカイよ、それだとこの城で働くものへの食料と給料はどうすればいいのだ?」
そう、税をゼロにするということは城の人間に与える賃金と食料がなくなるということ。
だが、俺の予想では今までたくさんの税をとってきたということはこの城のどこかにお金や食料を貯めているはず。
「今まで搾取してきたのを使いましょう。どこに保管していますか?」
ジェーン王は困った顔をしていた。
「我は管理していなかったから分からぬ。全てスカイが管理していたからな」
これは困った。どうすれば良いのか……。
「とりあえず、私がなんとかします。なのでしばらくは先ほど話したように税を取らないようにしましょう」
ジェーン王は俺に信頼を寄せてくれているのか優しい笑顔を浮かべた。
「分かった。期間はどうする?」
「できるだけ多くの国の人々の飢えなくなるまで続けたいです」
「そうか……だがそうすると城の金がなくなり騎士団や使用人が飢えることになるかもしれん。なるべく税は取りたいのだが……」
ジェーン王は困った顔をして俺に尋ねた。
「それについては少し考えさせてください。なるべく早く解決できるように考えます」
と言っても何も浮かんではないんだけどな。
「そうか……ではスカイに任せる」
今度は笑顔を見せる王様、笑えば本当に可愛い幼女だ。
「分かった。他にも我に話したいことや解決してほしいことがあればどんどん言ってくれ」
俺は仕事をしたことがないけど恐らく彼女は9歳にして理想の上司ではないかと思ってしまった。
そして、この世界で税の前にやるべきことそれは素早い的確な情報の伝達だ。
正確な情報を早くそして確実に王国中に届けることができれば基本何でもできる。
この国では噂程度の情報が人伝に回ってたるだけでこれではこちらからの意思が伝わりにくい。
例えば法律や規則などこちらが決めても直ぐには反映されずしばらくしてから伝わるのでタイムラグが起こってしまう。
そしてこれができれば減税の件も直ぐに王国中に広げれる。
「正確な情報を確実にそして素早く伝えれるようにしましょう」
俺以外の全員、不思議そうな顔をしながら俺を見た。
「どうやってそんなことを……」
ジェーン王は俺に問いかけた。
一番良いのはインターネットとかあればいいんだけどこの世界にはそんな便利なものはないはず。
だとすると伝書鳩的なものがあれば良いのだけれど。
最悪陸をめちゃくちゃ素早く走る馬とかいれば……。
「何かこう伝書鳩とかいないですか?」
さらに不思議そうな顔になりみんな謎の言葉だったのか眉間に皺を寄せている。
やっぱり日本と違いそんなものはないか……。
ジェーン王は目を閉じてしばらく考えた後、思い出したかのように目を開けた。
「でんしょばと?は知らないけれど獣を扱う村がある。そこでは多くの獣を飼っており手懐けておる。そこに行けばでんしょばとという獣ががいるかもしれん」
獣を扱う村か……行ってみる価値はある。
「なるほど、では私が直々にその村入ってみます」
「うん、ぜひそうしてほしい。しかし、任せきりで悪い」
ジェーン王は俺に頭を下げてきたので慌てて俺は止めに入った。
「そんな、私は当たり前のことをしているだけです。貴女の側近であり駒である私が足を運ぶのは当然のこと頭を上げてください」
ジェーン王は「感謝の気持ちだ」とニコッと笑いながら言った。
「では、今日の話し合いはここまでにしましょう」
俺の一言で話し合いは終わった。
ソフィアが急に立ち上がった。
「終わりましたか?では昼食ですね!」
そういえば張り切っていたこいつ一言も喋らなかったな。余計なこと喋り出して話し合いがごちゃごちゃになるのも困るけど。
「グレス!早速昼食の準備を!」
ソフィアはグレスの首根っこを掴み急いでダイニングテーブルへと走って向かった。
「お、お恥ずかしい姿をお見せして申し訳ありません……」
呆れながらも俺は無礼な姿を見せたことを謝った。
ソフィアは俺が連れてきたわけだし……。
そんな俺とは裏腹に二人を見て笑う王様。
「よいよい!本当に愉快だな、新しいスカイの仲間は」
「新しい仲間ということは私に仲間がいたのですか?」
「仲間というより騎士団長だな。誠実で頼りになる奴らだったのだが我とスカイが変わってからは皆バラバラになってしまった」
騎士団の長か……今の俺の魂が宿っているこの身体には関係のないことだな。
ジェーン王は俺に可愛い笑顔を見せながら提案した。
「スカイの新しい仲間とこれから一緒に食事をとることにしよう!みんなで食を囲めば楽しくなる!」
俺は驚いた。まさかジェーン王の方からそんな話がされると思っていなかったから。
「だ、大丈夫なのですか?あいつらは私に仕えている者です。立場的に良くないのでは?」
「大丈夫だ。これからは我は民に寄り添う王様にな羅なければいけない。それに我の側近のスカイが大切にする仲間は我にとっても大切な者だ」
俺は感銘した。なんて心の広い9歳児なのだろうと。
「ありがとうございます!二人とも喜ぶと思います!」
タイミングよくメイドが呼びにきた。
「王様、スカイ様お食事のご用意ができました」
俺とジェーン王は仲良くダイニングルームへと向かった。
「ジェーン王、お先にダイニングルームへ向かってください。私はグレスたちを呼んできます」
俺はグレスとソフィアに先ほど王様から食事を一緒にしようという話をした。
ソフィアは大喜びしていたがグレスは少し畏まっ様子だった。
「私が王様とお食事ですか?あまりにも恐れ多いのですが……」
「いいじゃないか、王様からのお誘いなんだしお前は俺にとって大切な仲間なんだから俺も一緒に食べたい」
少し納得してくれたのか下を向きながらため息を小さくつくグレス。
「分かりました」
それから俺たち三人組はトコトコとダイニングルームへと向かった。
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