第十話 転生先でまたまた死にかけました
俺たち三人組は愛馬に乗り草原を走った。
グレスは地図を再度確認した。
「このまま西へ走れば数時間で着く予定です」
当初3日で着く予定だったのに色々あって4日かかってしまった……。
だけど、こっちの世界で共にする仲間が増えた。
一人より二人、二人より三人いれば心強いし、この二人の強さなら頼もしい限りだ。
川が見えてきた。川の近くでグレスは馬を止めた。
「丁度お昼時ですね、ここらで昼飯にしましょう」
するとグレスは馬から降りて器用に石と木で銛を作った。
「魚を取ってきますお二人は薪になりそうな木を持ってくるのと山菜を採って来てください」淡々と俺たちに指示を出すグレス。
本当に頼りになる女の子だな。この子がいなかったら死ぬ思いをしていたかもしれない、死ぬ思いしたけど……。
ということで近くの雑木林で俺は木を拾いに、ソフィアは山菜を採りに行きました。
俺は華麗な動きで枯れ木や木の枝を拾い集め、ソフィアは豊富な知識と優れた嗅覚で山菜やキノコをたくさん採りました。
しばらくして俺とソフィアは約束の場所にで合流しグレスの帰りを待ちました。
何ということでしょう。グレスは魚を取ってくると思いきや大きな熊みたいなやつを狩ってきました。
「なぜ?魚は?」俺とソフィアは唖然としました。
「そこにこいつがいたからです」
グレスは何ともない顔で答えました。
というよりもその大きな熊みたいなやつの額に綺麗に刺さっている先ほどグレスが簡単に作ったモリ……。
俺は驚きを隠せませんでした。
「それでやったのか?」
グレスは自分のナイフで大きな熊みたいなやつを捌き始めまながら答えました。
「もちろん。水辺で休憩していたところを一撃で仕留めてやりました」
そんなすぐに壊れそうなモリを皮膚の硬そうな熊みたいなやつの額を貫くなんて……普通に考えたらありえないだろ。
なんか可哀想だな熊みたいなやつ……。
「そ、そうなんだ。すごーい」
グレスは熊みたいなのを捌いた後、口から火を吐いて薪に火をつけた。
ソフィアは初めて見たのか驚いた顔をしていた。
「グレスさん口から火を吐くのですか?」
グレスは淡々と毛皮を剥がされた熊みたいなやつを木に刺して丸焼きのようにしながら答えた。
「はい、誰にも言わないでくださいね。言いふらしたら殺します」
「だ、誰にも言いませんよ」
ソフィアはグレスに睨まれると俺の後ろに隠れた。
ソフィアは思い出したかのようにグレスに話した。
「そういえば口から火を吐くといえばまるで魔女みたいですね!」
グレスはその言葉に反応した。
「魔女?詳しく教えてくれ」
ソフィアは困った顔をした。
「すみません、詳細は分からないのですが……たしか何とかの魔女は手や口から不思議な力を出すと言われていると古い本に書いてあったような気がします」
「その本はどこにあるか分かるか?」
グレスはソフィアの肩を掴み問い質した。
「えっと……幼い頃の記憶でその本がどこにあるかも分からないです。もしかしたら古過ぎて焼かれたかも……」
「そうですか……」
グレスは残念そうな顔をしてソフィアの肩を掴んでいた手を話した。
気まずい……。俺はたまらず焼けたキノコをグレスに渡した。
「グレスきのこが焼けたぞ!食べろ!」
「ありがとうございます……」
そう言ってグレスは受け取ったが落ち込んでいる。
自分の力の謎を知れるかもしれないチャンスが無くなったんだ落ち込んで無理はない。
「グレス、いつかお前の力の秘密をみんなで解き明かしていこう」
今の俺にはこれしか言えない。もしかしたらこの約束を破ってしまうかもしれないが……。
だけどグレスは落ち込んだ顔よりも大人ぶって澄ましている顔や笑った時の顔の方が可愛い。
俺はただ、落ち込んでほしくなくて無責任なことを言った。
その場しのぎの言葉、本当に最低な男だよな……。
「さぁ!食べよう!」
俺は肉が焼けるまで山菜やキノコを食べ始めた。
「そうですね、まずはやるべきことを達成してから……」
グレスはモリモリと食べ始めた。
グレスの姿を見てソフィアは笑顔になった。
「では、たくさん食べて力をつけましょう!」
そうして俺たち三人と三頭はお昼ご飯をモグモグと食べ始めた。
1時間くらいで食べ終わった俺たち三人と三頭。
「さ、さすがに食べすぎた……」破裂しそうになる俺たちの腹……。
「張り切って食べ過ぎですよみなさん」
大きくなったらお腹をさすりながら俺とソフィアに注意をするグレス。
お前が大きい熊みたいなの狩ってきたせいだろ。
あと「さすがに残すと命を粗末にすることになります」ってお前が言い出したんだろ。
それにしてもお腹が張って動けない……。
しかも肉が多すぎて山菜とキノコほとんど馬たちに食わせたせいで馬も横たわって動けなくなっている。
とんだ誤算だった。また、進めずに終わるのか……。
いや、いつまでもウダウダしていられない!こうなったらエクササイズしかない!
「お前たち!エクササイズだぁ!」
「エクササイズ!?」二人と三頭は驚いた顔をしていた。
「そうだ!簡単に言うと俺の動きに合わせてみんなで踊るんだ!」
昔、母さんが外国人が踊っていた何とかキャンプってやつを三日坊主だっがやっていたことを思い出した。
うろ覚えだけど何とかなるだろう。
「よしお前たち!俺の動きについてこれるか!お前たちには厳しいかもしれないがな!」
俺の挑発に二人と三頭は乗ってしまった。
「いつでもかかってきやがれ!」
「よし行くぞ!まずは腕を回してステップしながら〜ワンツー、ワンツー、ワンツー」
俺は適当に体を動かした。まじで適当に、しかしみんな俺の動きについてきている。
「ワンツー、ワンツー、ワンツー」
「いいぞ五人とも!次は腕を交互に前に出しながらジャンプして〜ワンツー、ワンツー、ワンツー」
「ワンツー、ワンツー、ワンツー」
「な、なんか楽しくなってきた!」
ソフィアは良い汗をかきながらエクササイズを楽しんでいる。
「こ、これは確かに楽しいですね、馬ウケも良いので今度村へ帰った時みんなに教えてあげることにしましょう」
思いの外グレスも楽しんでくれているようだ。
だが、これからが本番だ。
「さぁ!どんどん俺についてこい!」
「おお!」
俺たち三人と三頭は日が暮れるまで楽しいエクササイズをしてしまった。
「やらかした……」
まさかみんな夢中になってしまうとは……しかも言い出しっぺの俺まで。
「本当に申し訳ない。俺が辞めなかったのが悪い」
俺はグレスとソフィアに謝った。
グレスたちは自分たちも悪いと許してくれた。
「私たちも夢中なってしまいましたからね。お互い様です」
グレスは何かを考えて俺に提案をしてきた。
「ですが、さすがにあと少しなのにここで止まるのももったいない話です。ここからは山や森などないので獣や山賊などに襲われる可能性は低いと思うのですがこのまま城へ向かうのはどうでしょうか?」
俺は考えた。確かに日が暮れているとは言え月の光で周り明るいしこの先グレスが見せてくれた地図によると草原が広がる。
俺はしばらく考え決断をした。
「よし、進もう。夜遅くても城の誰か起きているだろうし俺が生きていると知ったら入れてくれるだろう」
「二人ともそれでいいかい?」
「はい」
「では昼と違って暗いから気をつけていこう」
俺たちは馬に乗って再び城へと向かった。
しばらく走ると何かが向かってきた。
何だ?さすがに月の光で明るいとはいえあの距離では見えづらくて確認ができないな。
だんだん近づいてくる謎の物体。
おいおい、このままだと俺たちにぶつかるぞ。
グレスは急ながら俺たちに指示をした。
「危ない!避けて!」
俺とソフィアはその言葉に理解ができなかったが無我夢中で避けなければいけないと体が反応し手綱引き横に避けた。
俺たちはすぐに避けて正解だと認識した。
横を通り過ぎたのは今まで見た獣の中で比にならないほど大きい二足歩行のオオカミだった。
「あ……ああ……」
俺は腰を抜かして馬から倒れた。
何だ、この怪物は……。
そうだ、外国の映画で見たことがあるこれはまさしくオオカミ人間だ。
けれど人間というレベルの大きさじゃない、3メートルはあるのではないか?
オオカミ人間はゆっくりと俺に近づいてきた。
こ、殺される。俺の体は震え自分の意思では動かなかった。
「グレス……助けて……」
俺は震えた情けない声で助けを求めた。
「スカイ様は殺させない」
グレスは俺の言葉が届いたのかオオカミ人間の前へと立った。
「生意気な小娘そこをどきなさい」
喋った、このおっかないオオカミ人間は喋れるタイプなんだ。俺が見た映画では理性がなくなるような気がしたけどちゃんとあるんだ。
グレスとオオカミ人間はじっと睨み合った。
どっちも引こうとせず、緊張が走る。
グレスは痺れを切らして先手を打った。
剣をオオカミ人間に振りかざしたが一瞬でオオカミ人間に吹き飛ばされる。
「グレスーー!」
グレスは吹き飛ばされた勢いで地面に叩きつけられそのまま気絶した。
「あぁよくも、よくもグレスを!」
俺の怒りがようやく頂点へ達した。
「うわぁぁ!!!」
俺は叫んだ。目が飛び出てきそうなほど声が枯れそうなほど天に向け叫んだ。
俺は叫ぶのに満足するとオオカミ人間を強く睨んだ。
「俺は、お前を許さない!」
俺の体はバチバチと体から放出された体内エネルギーで覆われた。……俺の頭の中では。
「俺は、絶対に許さない!」
「はぁ……」
何ともオオカミ人間の気の抜けた返事。
「いいか?絶対に許さないんだぞ!」
「そうですか……」
またしても気の抜けた返事。
「絶対に絶対にぜーったいに許してやるもんか!お前は俺が倒す!」
「そんなことよりも……」
オオカミ人間は俺をいとも簡単な持ち上げた。
「は、離せ!くそ!なかなかやるな!」
俺は必死に抵抗したけどやっぱり敵わなかった。
オオカミ人間はの身体を隅々まで臭い始めた。
「クンクンクン」
そして俺を睨みつけるように見てきた。
あぁ、食べられる。こいつヨダレ出てるし美味しそうに俺を食べようとしてる。
「やっぱりスカイ様ですね!」
「え?」
誰だろう。まじで分かんないけど死なずに済んだのだけは理解できた。
「この匂いとこの身体、そしてこの声はスカイ様で間違いない!」
オオカミ人間は俺を頬でスリスリしてきた。
「まさか、生きていたなんて!奇跡です!」
不思議そうにしている俺を見てオオカミ人間は再び俺をプク顔で睨みつけてきた。
「遠くでスカイ様の匂いがしたので駆けつけて見たんですけどまさか私のこと忘れたんですか?」
「すみません、記憶がなくてですね……あなたはどなたでしょうか?」
機嫌を損ねると握りつぶされてしまいそう。ただでさえ握られて少し体が潰れかけているのに……。俺は丁寧に刺激しないように正直に答えた。
「記憶喪失!?では、私とのあんな事やこんな事も忘れてしまったというのですか?」
肩を落とし膝をつくオオカミ人間。悪い奴ではなさそうだ。そして聞き捨てならないあんな事やこんな事とは?
まさか……このオオカミ人間、俺とそういう関係なの?
「すみませんあなたは誰ですか?」
「本当に忘れてしまったのですね……。私はスカイ様の秘書兼右腕兼ボディガード兼恋人みたいなものルーヴ・ウォルフです!」
嬉しそうに尻尾を振って自己紹介をしている。
多分だけどこいつ恋人ではないだろう。
なぜだかそんな気がした。
「ではお城へ帰りましょう!」
嬉しそうなオオカミ人間はそのまま城へ向かおうとした。
「待って!グレスとソフィアも連れて行ってください」
俺はオオカミ人間を止めた。
不機嫌になるオオカミ人間。
「何故ですか?どう見てもスカイ様にはいらない二人、男ならまだしも女なんて不必要ですわ」
すごい怒っている。だけどこれだけは譲れない、譲りたくない。
「二人とも大切な仲間なんだ。何度も俺を助けてくれたしこいつらがいなかったら俺はここまで来れなかったかもしれない」
俺はルーヴに頭を下げた。
「だから、お願いだ。この二人も城に連れて行かせてほしい、頼む!」
ルーヴは驚きのあまり口が空いてしまった。
「まさか、あの超ドSのスカイ様が私に頭を下げるなんて……」
「し、仕方ないですね。今回はスカイ様のご命令ということで納得します」
ルーヴはグレスとソフィアを睨みつけた。
「さっさと来なさい!このメス豚め!」
これが男に媚びる女というやつか……。
ソフィアは馬に隠れながら怯えていた。
「すみません……怒らないでください」
グレスは気絶しているため反応がない。
ルーヴはそんなグレスを呆れた目で見た。
「いつまで寝てるの?早く起きなさいよ。スカイ様を待たせると私が許さないわ!」
さすがにカチンと頭にきた俺はちょっと頑張ってルーヴに怒った。
「お前が気絶させたんだろ!責任持って大切に城まで運べよ!」
ルーヴは思い出したかのような顔をした。
「そうでした!虫みたいな動く人間だから鬱陶しくて吹き飛ばしたのを思い出しました!では、私がこの女を持って行きます」
ルーヴはグレスを手で掴んだ。
「おいルーヴ。間違えても握りつぶすなよ!そうしたら本当に許さないからな!」
俺が注意するとルーヴは笑顔になった。
「大丈夫ですよ!さぁ、お城へ向かいましょう」
俺たち三人と三頭はオオカミ人間のルーヴに連れられて暗い夜を走り出した。
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