第4話

 次の日。

 私はどうにも気になって日和のクラスに行った。違うと思いつつも、連絡をくれた子が日和かもしれないからだ。


 さりげなく本人に近づくとコホンっと咳払いをして、目を泳がせながら私は言った。


「えっと……足は大丈夫か、痛むようなら早めに病院行けよ。って、なんか顔色が悪くないか」


──阿呆。鞄のこと聞きに来たんじゃないの、私。


 でも、本当に顔色が悪い。大丈夫かしら……。

 心では心配でたまらなかったが、できるだけクールに振る舞った。日和は、にこりと笑う。


「ありがとうよ。足は悪くはないんだけど、ちょい鞄を手作りしてたもんでよぅ、寝不足なんだわ」


 鞄!


──やっぱり。日和ちゃんだったんだわ。


 世間は狭いってゆうけど、こんな間近にDMの相手がいるなんてびっくりだ。ばくばくと飛び出そうな心臓を抑え込み、冷静にと自分に言い聞かせる。


「へー。鞄作ってんのか? どんなの」


 あからさま過ぎたかなと思いつつ、私は日和に聞いた。


「これなんだわさ」


 日和は机の中から作りかけの鞄を出した。

 布がヨレヨレ。なぜか、ひとまわり小さい。縫い目が、あり得ないほどガタガタ。


──なぜにこうなった。


 そっと作りかけの鞄を手に持ってみた。


──嘘でしょ。接着芯が無いじゃない。


 仕上がりを綺麗に、型崩れ防止の接着芯。無いからヨレヨレなのだ。


──それになんで小さいの?


「もしかして、型紙無しで作ったのか?」

「やだなぁ、そんな器用じゃないわ。ほれ、これを参考にしたんじゃよ」


 そう言って日和は型紙を出す。


──うわぁぁ。しろの部分の紙が切られてる!


 縫い代。2枚の布が縫い合わされる部分。

 そこが切られていて、縫い代が無いから、適当に縫われてる。だから余計にガタガタなんだ。全くの素人。


──こんなの基本じゃない。そこから教えないといけないの。


「なんで上手くいかんのじゃろうか」


 絶句。私は内心で頭を抱え言った。


「誰か詳しい人に聞いてみろよ」

「うーん。詳しい人はいるんじゃけど、スミレさんになんども聞いて迷惑にならんかのぅ」

「そんなことないだろう」

「そうかなぁ。──そうじゃな、聞いてみるよ。ありがとう」


 一瞬、考えあぐねる様子だった、が、日和はスミレに聞くことにしたようだ。


──是非、そうしてちょうだい。


 そして、早速、その日の夜に連絡がきて、私は、どこがいけないのか指摘した。

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