第6話 次女からのプレゼント

 どうやら、知らずしらずの内に未来の子孫たちに弄ばれていたらしい。

少し癪に障ったが、元を正せばその原因を作ったのは私本人なんだから強く反論もできないか。


「ちなみに、クライアントである玄孫様の高祖母様はまだご顕在でおられますよ。名前は確か……虹花様とおっしゃいましたかね」

「虹花だって!? 真ん中の子の?」

「ああ――、その真中の子とか、間の女の子とか言われるのを極端に嫌っていらしたご様子ですよ」


「……そうか、末の子が生まれてから、あまり構ってやれなかったことを根に持っていたのかもしれないな。でも虹花は立派に育って、しかも孫やひ孫に、玄孫らに囲まれて幸せに暮らしているんだね」


「ええ、現在――ああ、えっと2144年の世界では百十九歳で綽々としていらっしゃいます。日本人女性の平均寿命が百四十歳を優に超えておりますから、まだヒヨコと言っては失礼ですが、これからいくらでも玄孫や来孫に目を細める日々を送られることでしょうね」


 ――そう言えば、あの日の朝。

 朝食の席で虹花が私と視線を合わせなで、黙々と箸を動かしていのを思い出した。


「ところで、この繰り返される時間を止める件だが?」

「ああ、もちろんそのへんは抜かりご座いません。これから、あなたにはある時空に転移していただきます。そこで、クライアントの高祖母であられる、虹花様とご一緒に、あることをしていただきます」


「あることって、いったい……」

「それは、転移先に着いてみれば自然と分かりますから、ご心配なく。それでは早速」


 その未来からやってきた請負人は、懐からタバコくらいのメタリックなスティックを取り出すと、私の目の前に差し出してピカッと一瞬まばゆい光を放った……。


「未来から来た私が、今、あなたとこうして遭遇していることは、本来あってはならないことなのです。その点は私共の会社の規定でも厳しく制限されておりますし、政府から正式な認可を得た企業のみに許された事業なのは先程ご説明したと存じます」


 請負人を自称するAIは、流暢に営業トークを展開するセールスマンのようだ。


「簡単に言ってしまえば、あなたは現在軽い催眠状態にあるとお考えください。そして今から私と出会って話を交わしという事実を消させていただきます。記憶はすぐに消去されることはございません。遅い方で二日ほど、早い方で半日もすれば私との会話や私と会った記憶等の全てが完全に消去されるのでご安心ください」


 あれ? また、例の目眩が私をおそった。

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