第160話  シンプソンダンジョン終息戦・南口①

〈シンプソンダンジョン南口〉


「————……さて、るか」


 南口のモンスターの氾濫が起きた。その数は約30,000くらいだ。


「邪教巫女、まずは全体の動きを止めて」


『(コク)』(シャン!)


 真白の命令で邪教巫女が舞う。

 左手に神楽鈴に付いてる布を持ち、右手に持った神楽鈴は胸元から垂直に上に上げる。


 シャン……シャン……シャン……————


 邪教巫女はその動作を何回も繰り返す。

 すると、モンスターの群れに変化があった。

 30,000くらいのモンスターの大群が一斉に動きを止めた。


「よし。邪教巫女、今度は手前の方に居る弱い奴ら(上層モンスター)だけを近くまで近づけて」


 シャン、シャン、シャン、シャン————


 そして、邪教巫女が右手を前に伸ばし、モンスターにこっちに来いという感じの動作で神楽鈴を鳴らす。

 すると、下層のモンスターたちだけが500mくらいの距離まで近づいて来た。


「その辺で止めて。…よし、いくよ!」


 そして、真白はガトリング砲をモンスターに向け撃ち始める。

 戦場に騒音が響き渡る。

 魔改造されている超高威力のガトリング砲を真白は、右に左にと旋回させて、手前のモンスターを次々と撃ち倒していく。


「……まだ(ダンジョンから)出てくるか。邪教巫女、奥の方のモンスターを使って足止めしといて。もし出来そうなら、階層ボスも倒しちゃって」

『(コク)』


 シャッシャーン! シャッシャーン! シャッシャーン! シャッシャーン! ————


 邪教巫女はまた違う振りの踊りを舞う。今度は神楽鈴を高く上げ、半時計回りで、一回転する事に鈴を鳴らして一拍止まるを繰り返す。

 すると、後ろで動かず控えていたモンスターたちが、新たに氾濫して来たモンスターたちを襲い始めた。

 邪教巫女の戦闘スタイルは、直接の攻撃は有るにはあるが、主にサポートを得意としている。

 そして、邪教巫女の攻撃の正体は精神干渉である。邪教巫女が使っているスキルも精神干渉系のスキルで【瘴乱舞踊】という。

 このスキルは、任意の相手の精神に干渉し、異常行動や幻覚症状、パニック症状などの異常を起こす。

 そして、これは普通の状態異常とは違う為、状態異常の耐性や無効のスキルを持っていても防ぎ用がない。


「邪教巫女、奥の奴らを集中的に争わせて、手前のはなるべく私がやる。もし、突っ込んで来た奴がいたら反撃して」

『(コク)』


 真白の指示で、入口近くのモンスターたちに精神干渉して争わせる邪教巫女。

 モンスターたちは醜く争い血を流しあっていて、弱い奴は消え、強い奴は残るが傷だらけで満身創痍だ。

 邪教巫女は、本来真白やその他の『邪魂シリーズ』とペアで戦う事になっている。

 今回は早期殲滅を優先してる為、真白とペアを組んでいるが、普段は瘴壁騎士(第81話参照)と組む事が多い。

 最強の防御力に守られ、敵を操り、戦況を有利な形にするという組み合わせだ。


「下層のモンスターがちらほら出てきたか。そろそろ終盤か————」



 バァーーーーーン!!



「————ッ!?!?」


 突如、空気が揺れる程のデカい音がした。

 真白は音の方向に目を向ける。その方向は東口の方角だった。


「ア、アイツ! 私が張った結界装置を壊したな! 加減しろって言ったのに! あれ一つで大体の見積もりで7,500万もするのに!!」


 真白は今の音が不滅巨人が原因だと直ぐに分かった。

 そして、不滅巨人の力を誰よりも知っているからこそ分かる。今ので結界装置が全て壊れた事が。

 約7,500万円のアイテムが7つ、約5億2500万円が、不滅巨人の一撃で全て消えてしまった事に、真白は後で不滅巨人に文句を言ってやると心に決めた。

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