第156話  シンプソンダンジョン終息戦・北口②

 約20,000はいるであろうモンスターの数がダンジョンから溢れ出てきた。


「『まずはデカいの一発いくぞ!』」


 モンスターの群れに突っ込みながらレオは自身の大剣を脇に構える。

 そして、剣に魔力を注ぎ込むと、剣身の周りが光出した。


「『オーラブラスト!』」


 剣を振払い、その光は扇状に広がり、一撃で数千ものモンスターが消えた。


「『まだまだいくぞ! …『フレアエッジスパイラル』!』」


 今度は火と風の属性魔力を流し、それを融合させて、剣身の部分で螺旋状にしてモンスター目掛けて突き刺した。

 その螺旋は【風魔法】の『エアエッジ』と【火魔法】の『ヒート』を融合している。どちらも初級魔法だが、レオの魔力量と魔法戦士のみが習得できる【魔攻戦技】のスキルで威力が増す。そのため、螺旋型のこう威力の高熱な風の刃がモンスターを切り裂いていく。


「『フッ。……やっぱり雑魚は大したことないか』」


 特大高威力の先制攻撃たった二回で20,000近くいたモンスターの数を約半分まで減らしたレオ。先程の西口での戦いと違い、周りに遠慮なく戦えるからかド派手な攻撃でモンスターを殲滅していく。

 それに、レオは雑魚とは言っていたが、確かに殆ど上層のモンスターだったが中には階層ボスも混じっていた。それを雑魚と捉えてしまうあたり流石SSSランクだ。


「『……チッ! …蟻の様にどんどん出て来やがる。まぁ、やる事は変わらないけど』」


 レオは襲いかかって来るモンスターの群れに突っ込で行き、次々と倒していく。


 ズサッズサッ!スパッスパッ!ズサッズサッズサッズサッ!スパーン!ズサッズサッ!バーン!スパッスパッ!ドーン!ズサッズサッズサッズサッ!スパーン!スパッスパッ!ズサッズサッズサッズサッ!バーン!


 斬る、突く。そして時には斬撃を飛ばし、魔力を込めた斬撃で広範囲攻撃をしたりと持てる全ての力でモンスターを倒していく。

 そして、レオが戦い始めてから一時間以上経った。


「『ハァ〜…ハァ〜……』」


 流石のレオも少し疲れが出てきた。

 だが、モンスターの氾濫も少なくなってきたため、北口はもう終わりが見えてきている。


「『…ハァ〜〜…だいぶ収まってきたか。あと少しって感じか。…………ん?』」


 終わりが見えてきて心に余裕が出てきたレオだが、ふと、ダンジョンから一つ大きな気配を感じた。


「『…ハハッ! 最後はやっぱり大物が来たか。いいぜ、掛かってこい!』」


 そして、レオの言う通り、最後にダンジョンから姿を現したのは下層の階層ボスだ。


「『アレは確か58階層のボスだったか。スタンピードで暴走してるから若干強化されてるが、まぁ、大したこと無いな。面倒だから、……全部一撃で消してやる』」


 そう言って、レオは北口側の戦場全体が見渡せるくらいの高さまで跳ぶ。


「『太陽はまだ出てるな』」


 レオは剣を上段に構え、剣に太陽の光を当てながら魔力を流す。

 すると、剣身の周りが直視出来ない程輝きだす。

 しかもその光は今までと違い、先程まで行っていた全ての攻撃よりも数十倍魔力の密度と熱量が上がってる。

 ここで少し、レオのジョブについて話す。

 レオは魔法と剣を使って戦っているため『魔法剣士』と勘違いしていると思うが、正式には『魔法戦士』だ。

 魔法戦士とは読んで字の如く、魔法を用いて戦う戦士のことだ。剣や槍、弓などを用いて魔法戦も行うというオールマイティな戦闘が出来るのだ。

 その為、物理と魔法の両方の攻撃方法を持っている。

 魔法が付与されている武器を使えば同じ様な事は出来るが、『魔法戦士』は【魔攻戦技】で武器に流した魔力を攻撃の時強化出来るため威力が全然違う。

 だが、やはり物理攻撃は主に剣の力で魔法攻撃は魔法の威力である。武器に纏わせて放つ技も魔法攻撃になる。

 しかし、レオは普通とは少し違う。いや、正確にはレオの使っている魔剣が特殊だ。

 今レオは魔剣を太陽に光を当てたが、それはしっかり意味があり、太陽から発生する熱エネルギーを吸収していたのだ。

 そして、それを魔力と融合させ、剣身に纏うようにエネルギーを圧縮して、レオはそれを今から広範囲で放とうとしている。

 熱エネルギーは言わば大気の分子や原子の運動によって生じる。つまりに該当する。

 そう、レオの剣は物理法則に干渉する特殊なスキルが【物理干渉】だ。熱、重力、気圧、質量などに干渉し、自身が想像した攻撃を実現出来る。


「『まとめて消えろ! 『ソーラーミーティアスラッシュ』!』」


 光り輝く無数の太陽光エネルギーの刃がまるで流星の様に戦場全体に降り注ぐ。

 激しい音とともに大量の砂埃が舞う。その形はまるでキノコ雲の様だった。

 そして、砂埃が晴れると、まるで大量の小さな隕石が落ちて来たような跡で、モンスターは一匹も居なかった。


「『フゥ〜〜。終わった! 意外となんとかなるもんだな』」


 北口のモンスターを一掃し、氾濫の様子も無いと感じたレオは肩の力が抜ける。まるで一つ大きな仕事を終えたリーマンみたいだ。


「『…残りの方はどうなって……って! 東と南はもう終わってる!! ……今から西口に向かっても獲物は居ないか』」


 なんと、レオはここを終えたら西口に向かうつもりだったようだ。

 しかし、戦闘開始からもう一時間半も経っている。真白と不滅巨人は既に持ち場を片付けたようだった。


「『はぁーーー! ……ちと寝るか!!』」


 西口で戦えないと思ったレオは一息つく為、大の字になり空を見上げて寝転んだ。

 こうして、シンプソンダンジョン終息戦の北口はレオ一人で幕は閉じた。

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