第151話 一分間の殲滅戦
「「『ッ!!!???』」」
ダンジョンの西口方面から大きな音が聞こえた。
「レオさん!」
「『ああ!』」
周りの者達は「何事だ!?」と、驚いているが、真白とレオの反応は一瞬だった。
本能的に氾濫だと判断し、お互い魔力を可視化して西口に駆ける。
西口までの距離は約15km。しかし、二人は殆どの探索者たちが姿を捉えられない速さで駆ける。
そして、氾濫してから約十五秒、モンスターの集団が二人の前まで近づいてくる。
「『フレアバースト』!」
真白がこう威力の炎の攻撃魔法を放ち、モンスターの集団を左右二つに分断した。
「『右は任せろ!』」
「お願いします!」
レオは真白の意図を察し、半分を請け負う。真白もレオの察しの良さにやり易さを感じる。
それから、お互い左右に別れ戦闘を開始する。
「『ブラインド』」
【闇魔法】の『ブラインド』。術者が範囲を指定(広さは魔力量に応じる)し、範囲内に居る相手の視界を一定時間暗転させる魔法だ。
真白は半分以上のモンスターの視界を暗転させ、腰のポーチから銃を出す。
取り出したのは、PDWのFN P90の短機関銃だ。取り回しが良く、貫通力がある銃だ。
その銃を2丁拳銃スタイルでモンスター目掛けて撃つ。
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!
例の如く、この銃も魔力を流すとレールガンの様に発射され、弾装は時空間袋の様に予め大量の弾を入れている為、弾切れの心配も無い。他にも弾丸には【貫通】を付与している為貫通力は過剰な程ある。
モンスターを貫通した弾はその後ろに居るモンスターを何体も貫通して、射程も普通のよりも五倍近くある。
そんな反則級の真白お手製魔改造銃を撃ちながらモンスターの群れに突っ込む真白。
自身の機動力をいかし、戦場を縦横無尽に駆け回る。
そして、氾濫から約50秒程で約5,000ものモンスターの群れを殲滅した。
「ふぅ〜……こっちは終わった。レオさんはどう……」
ドゥンンンン!!
真白が目を向けると、大きな砂埃が舞うのが見えた。勿論その方向はレオが戦っている方向である。
どうやらちょうどレオも戦闘を終えた様だったので、真白は合流することにした。
約10,000ものモンスターをたった一分程で殲滅した二人のSSSランク。遠くで見ていた者達はその異常な戦力を目の当たりにし、目の前で見た事が現実なのか夢なのか困惑している。
「『よう! そっちも終わったか』」
「はい」
「『ちくしょう。真白の方が少し早く終えてたな。負けたぜ』」
「競争してた覚えは無いんですが」
そんな二人は合流するなり、軽いやり取りをする。二人にとって、今のはただの準備運動の様なものなのだ。
「『しかし、思ったより氾濫が早かったな』」
「そうですね。…まぁ、仮説ですけど、心当たりは有りますが」
「『そうなのか?』」
「はい。説明が長くなるので、話しは後でいいですか」
真白はどうやらこの西側だけの氾濫の早さの理由がある程度予想出来ているみたいだ。
「マスター!!」
そこにアトラがやって来た。
「遅れて申し訳ありません! マスター!」
「大丈夫よ、アトラ。それより、頼んだ事は出来た」
「はい。完璧に全て終えて来ました」
「ならヨシ。ありがとう、アトラ。それと後で少し話しがある」
真白はアトラが頼まれた事を完璧にこなして来たと言うアトラを労った。
「レオさん、私は一度戻って直ぐに南口と東口に向かいます。」
「『ああ、俺はこのまま北口に向かうぜ。あっちにも伝えといてくれ』」
「はい。ご武運を」
ここで真白はレオと別れる。
戦いの時は、もう直ぐそこまで近づいてきている。
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