第150話 二条の光
時刻は午後二時を過ぎ、真白は自分の準備を殆ど終え、いつでも出れる様にする。
真白はアトラに一つ仕事を頼み、アトラが戻ってき次第持ち場に向かうつもりだ。
「『やあ、真白。君は準備出来たかい』」
「レオさん。私はアトラが戻ってき次第、東口に向かい一体呼んでから南口に行きます」
「『そうか』」
レオは北口に向かう前に真白に声を掛けに来たようだ。
しかし、その声はよく聞き取らないと分からないが、若干震えている。
「……緊張してるんですか?」
「『……分かるのかい。……隠してるつもりなんだが』」
「よく聞き取らなきゃ分からないです。……やっぱり、一人で時間稼ぎは厳しいですか……」
「『いや、そうじゃない。今までスタンピードの氾濫の戦闘なんて高くてもB級までしか経験してないからさ、未知の領域のS級を今から経験する事が楽しみ過ぎて、興奮と緊張で気が昂ってるさ』」
どうやら、レオのはこの後の戦いに気持ちが昂ってあるようだ。
「戦っている間は、緊張している暇は無いですよ」
「『分かっているさ。…それより、アトラさんは何しに行ったんだ?』」
「西側以外の入口を私の作った超強化結界アイテムの設置を頼みました。多分、そろそろ戻る筈です」
「『そっか……』」
「……………レオさん、…もしかして、アトラが気になるんですか」
「『な! な、何言ってるんだい! べ、別にそういう訳じゃ……』」
真白の一声に明らかに動揺するレオ。
「……あげませんよ。それに、あの子は造りは人間に似てますが、中身は人ではありませんからね」
「『分かっているさ。ただ、好みのタイプってだけだ……』」
「ソフィーさんはどうなんです?」
「『あいつはなんていうか、…そんなんじゃ無い』」
レオはそう言うが、真白からしたら二人はお似合いだと思っている。けど、それは当人の問題だから口にはしない。
「『……さて。俺は総会長とソフィーに声を掛けて向かうぜ』」
「こっちも片付けたら直ぐに向かいます」
「『おう! ま、その間に片付けられそうなら全部やっちまうが』」
「頑張ってくださ————」
ドーーーーン!!
「「『ッ!!!???』」」
突如、耳が割れんばかりの音が、西口側から響いた。
————————
◯仮説テント(西口側)
ドーーーーン!!
「な、なんだ!?」
「何が起こった!?」
「西口側のダンジョンからだ!!」
音を聞いた探索者達が騒ぎ出した。
音の発生源を見に向かう探索者達。彼らがそこで目にしたのは、
「『嘘だろ、おい……』」
約一万もの数のモンスターだった。
「『い、急いで陣形を!』」
「まだ、持ち場に付いてない奴がいる!!」
「『西口以外はどうなってる!?』」
「『他はまだ平気です!!』」
「ど、どうするんだよ!!」
突然の事に現場はパニックだった。
「『落ち着けー! 慌てるな!! 各自冷静になり持ち場へ向かえ!!』」
「『どうなってる!? 氾濫が予想より早いぞ!』」
「戦場はいつ何が起きるか分からん! 予想通りにいく訳無い!」
作戦の指揮や部隊長クラス達の殆どは幾分冷静だ。けれど、突然の事で全体の準備も完璧で無い状況で、内心焦っている。
「『取り敢えず動ける者は前に出るぞ!』」
動ける探索者達が前に出ようとしたその時、
ビューーーーーンンンン!
純白と蒼白の二条の光が、モンスターめがけて過ぎ去った。
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