第147話  M.Mシリーズ

 ——二日後


 作業開始から二日後の朝、対策本部内は緊張が張り詰めている。


「『ダンジョンの様子はどうだ』」

「『観測では変わった様子はありません。しかし、いつモンスターの氾濫が起きてもおかしくない状況です』」


 予定では、今日中にスタンピードが起こるかもしれないからだ。


「『桐島殿、そちらの方の準備は順調に進んですか?』」

「こちらはいつでも大丈夫です、テイラー連邦総会長。ただ、白岩真白はまだアトリエに籠っている為分かりません。そろそろ準備を終えてくると思うのですが」

「『大変申し訳ないのですが、最後に全体で作戦の最終確認をしたい。一度白岩殿を呼んでいただいてもよろしいですか』」

「分かりました。急いで呼んでまいります」


 周りの空気が張り詰めている。中には不安で緊張したり怯えている探索者も居るだろう。

 事態は一刻も争うため桐島は急いで真白の所に向かう。


「あ、桐島さん。どうしたんですか? 生産職の待機所に来るなんて」

「やあ、龍也君。実は作戦の最終確認を全体でするから白岩さんを呼びに来たのだよ」

「……そういえば、アレから白ちゃん見てないな」

「……もしかして…あれからずっと籠っているのか」

「………たぶん」

「……………………」

「……………………」


 桐島と龍也は急いで真白の元へと向かった。

 あれから二日経ったということは、真白は時間軸が十倍早い自分のアトリエの中でずっと作業しているという事だ。つまり約二十日も引きこもっている事になる。

 そして、真白のアトリエの前に着くと扉の近くにあるインターホンを押す。一回だけでは出てこなかったので二、三回更に押すと扉の開く音がする。


「はーい。どうしました」


 真白は扉を開けて外に出て来た。


「白岩さん。こっちではもう二日経って、いつスタンピードが起きてもおかしくない。最後の打ち合わせをしたいから来てくれ」

「白ちゃん! アレから外に出て来てないだろ! 大丈夫なのかい!?」

「え。もうそんな経ったんですか。分かりました。直ぐに行きますので、ちょっと待って下さい」


 真白は作ったアイテムなどを取りに行くために、一旦アトリエ内に戻る。

 そして、数分後に再び扉が開く。


「お待たせしました」

「では、行こう……か……………」

「……え……………………………」


 アトリエから出てきた真白を見た桐島と龍也は言葉が出なかった。


「さぁ、行きましょう!」


 真白は作戦会議に行こうと言う。だが、その声はややテンションが高い。

 そんな真白に桐島と龍也は目が離さない。いや、正確に言えば真白のから目が離さないのだ。


「「白ちゃん(白岩さん)……彼女は誰(だい)?」」


 言葉の止まっていた桐島と龍也が思った事口にする。

 すると真白は、「よく訊いてくれました!」みたいな顔で気持ちの良い笑顔になる。


「さぁ、挨拶して!」

「はい。マスター」


 真白のことをマスターと言ったその女性…いや、そのは桐島と龍也に体を向け自己紹介をする。


「お初にお目にかかります。私、マスターによって創りだされました。『M.Mマシロ.メイドシリーズ』のホムンクルスメイド、名を『アトラ』と申します」


 彼女……アトラは綺麗なカーテシーをする。

 桐島と龍也はアトラのその所作に若干見惚れる。真白は真白で「いい仕事をした」と満足そうな顔をしている。


「……………白ちゃん……彼女はやっぱり…アレなのかい?」

「はい。やっと願望が叶いました!」

「ソッカー……とりあえず白ちゃん、おめでとう」

「ありがとうございます!」


 ホムンクルスのメイドを創るという願望を叶えた真白は凄くご機嫌だ。


「……………とりあえず、白岩さん。……行こうか」


 桐島は考えるのをやめ、さっさと作戦会議に向かう事にした。




—————————————————————


 更新遅れて申し訳ございません!!

 この先のストーリーの流れを少し変えるため色々試行錯誤してたら遅れました。深く反省してます。


 『M.Mシリーズ』のメイドは今回のスタンピード事件が終わってから書く予定でしたが、訳あってここで書かせていただきます。

 『M.Mシリーズ』のメイドはプロフィールを近況ノートに書くつもりなので更新をお待ち下さい。

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