第140話  お説教

「やってくれたな」

「ごめんなさい」


 作戦会議が終わって一時間後、遅れてやって来た桐島が真白と合流した。しかし、到着早々例の作戦会議の件を佐藤から聞いた桐島が頭を抱えてしまった。

 今、日本探索者協会用に用意された部屋で桐島がソファーに座りながら正座している真白を見下ろす状態だ。


「何故私が目を離すとこんな事になっている」

「すいません」


 真白も今回は謝る事しか出来ない。一時的とはいえ、信用されて日本を代表していたのだ。それなのにオセアニア州の各国の代表達の前でかなり危ない発言をしてしまったのだ。責任逃れは出来ない。


「私がどれほど頭を下げたか分かるか」

「本当にすいませんでした」

「会長…私も付き添いとして止める事が出来ず申し訳ございません」

「今回はしょうがない佐藤。まず、この頭のイカれてる錬金術師を止められる者などそうそう居るわけが無い。荷が重かっただろう。あまり自分を責めるな」


 桐島は佐藤に同情の目を向けていた。自身も真白に散々な思いをさせられたから気持ちが分かるのだろう。


「ましろちゃん…あなたって子は……」

「白ちゃん、流石に今回は俺も庇えないぜ」


 今回は龍也と相良のクランも応援に来ている。『生産組合』は物資の支援、『光の癒し』は結界と治療の為だ。


「溜まった仕事を片付けるのと準備で遅れて来た身で言うのもあれだが、今回の件は急ぎの用で時間も無いし、流石に私は直ぐに動けんからそれ相応の人物を選定して、君を信用して送ったのに」

「それなら副会長でも良かったのでは……」

「ん? 聞いてないのか? 佐藤は日本探索者協会の副会長だぞ」

「え!?」


 なんとここで真白も知らなかった衝撃事実が発覚。なんと佐藤は日本探索者協会の副会長だったらしい。


「正確には日本探索者協会副会長第三課担当だがな」

「聞いてないです!」

「佐藤…言ってなかったのか?」

「第三課は仕事があって無い様なものです。言う必要は有りません」


 真白も後で知る事になるが、日本探索者協会の副会長は三人おり、一課、二課、三課と分かれているのだ。

 第一課は会長の代わりに本部や協会にくる依頼関係の選定。

 第二課は各支部との連絡やダンジョン管理。

 第三課は国内のクランの把握や上位探索者と仲介役など。

 一見大事な仕事に思えるが、国内のクランは小規模から大規模まで数えると数が多く、殆どはそのクランが所属している支部からの報告書や年に数回佐藤の部下が監査に行くくらいだ。上位探索者の仲介も殆どがSランク探索者以上である為数が少なく、入ってくる依頼の仲介はかなり少ない。それに、そういう者に限ってクランを立ち上げている為そのクランの所属している支部からの報告書で済む事なのだ。だから佐藤は第三課の副会長の役職は飾りの様なものだと思っている。

 因みに、桐島は会長になる前は第一課副会長だった。


「まあその話はいい。それより白岩さん。作戦内容は聞いているが、何故あの場であんな案を出したのだ」

「それは————」


 コンコン


 真白のお説教の途中に扉がノックされた。どうやら来客らしい。


「入れてくれ」

「はい」


 佐藤が扉に向かう。


 ガチャ


「『お取り込み中すいません。……今大丈夫ですか?』」


 なんと来客はソフィーだった。


「カーティス会長、突然どうされました?」

「『いえ、日本とニュージーランドの会長どうし話しをしようと思ったのですが……どうやらお取り込み中の様ですね……』」

「いえ、大丈夫です。ただこの頭のイカれてる錬金術師の説教をしていただけですので」

「『そ、そうですか……』」


 ソフィーは床に正座している真白を見て取り込み中だと思ったが、説教中だとは流石に思っていなかったようなので少し困惑した顔をしていた。


「『……何してるんだ? 白岩真白』」


 ソフィーの後に続いてレオも入って来た。


「先程の会議の事でお説教中です」

「『災難だな』」

「『ちょうどいいわ、レオ君、貴方もそこに座りなさい』」

「『えっ!!』」


 どうやらソフィーもレオに言いたい事があるのか、お説教をするみたいだ。


「アンダーソンさん……災難ですね」

「『あぁ……』」


 レオも真白と同じくソフィーに言われ床に正座させられた。SSSランク同士、似た様な所があるみたいだ。


「まあ時間もあまり無いですが、少しだけでも話しをしましょうか、カーティス会長」

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