第136話  作戦会議

「『まず、現状の確認をします。今回、スタンピードの兆候は昨日さくじつ、S級ダンジョンのシンプソンダンジョンで観測されました。幸い、氾濫の兆しの魔力暴走は起きておりませんが、いつ氾濫が起きるか分かりません。現状、結界を張り準備を整えてる予定です』」


 会議の進行をしている役員はスタンピードの現状を簡潔に説明する。どうやら氾濫前の魔力暴走は起きておらず、結界を張って様子を見ながら準備をしているみたいだ。


「『そして、我々は今回のスタンピードを終息するつもりでいます』」


 進行役の人曰く、どうやらスタンピードを終息させるつもりらしい。


「『それは本当に可能なのか?』」


 と、横から別の役員の人が言った。


「『はい。恐らく大丈夫です。その為に日本からSSSランク探索者の白岩真白様に救援を求めました』」


 進行役の人が真白の名前を出し、そしてまた真白に視線が集まった。

 真白は進行役の人に目線が合った。どうやら自己紹介をしてほしいのだと、真白は悟る。

 真白は立ち上がり、会議室に居る人達に挨拶をする。


「ご紹介に預かりました白岩真白です。今回は貴国のS級ダンジョンスタンピードの終息に協力する為参りました。出来る限り全力でご協力致しますので宜しくお願いします」


 真白は各国の会長やオセアニア連邦探索者協会の幹部役員達に堂々と挨拶をした。

 真白は緊張で内心ヒヤヒヤしっぱなしなのだが、この場では真白は日本の代表として立っている為、人見知りや恥ずかしいなどと言ってられない。

 真白の堂々とした挨拶に、高校生とは思えない程の雰囲気を感じてか、この場に居る者達の殆どが安心感を感じた。


「『ちょっとよいか』」


 真白が自己紹介を終えると、初老の男が発言を求めた。


「『なんでしょうか?』」

「『では、Ms.白岩…今、終息させると仰ったが、本当に出来るのか?』」

「その為に来ました。…自分で言うのもなんですが、私は自国のSS級ダンジョンのスタンピードをほぼ単独で終息させています。ですので、貴国の力になれればと思い依頼を受けました」

「『貴女の実力はここにいる我々は全員期待しています。その為今回力を貸して頂けるのは助かります。ですが、今回のシンプソンダンジョンは少々厄介なのですよ』」

「どういうことですか?」


 初老の男の言葉からして、どうやらシンプソンダンジョンは普通のダンジョンとは少し違うらしい。


「司会の人、説明お願いします」

「『は、はい! …えー、実はシンプソンダンジョンは————』」


 バン!!


「『それは俺から説明しよう!!』」


 司会進行の役員が説明しようとしたら、一人の男が扉を勢いよく開けて入って来た。


「『ちょ、貴方! 何処をほっつき歩いて居たのよ!?』」

「『いや〜すまんすまん。様子見ついでにちょっとダンジョン行ってきた』」


 まるで、ちょっとコンビニ行ってきたみたいな言い方で男は言う。


「『だったら一言くらい言ってから行ってちょうだい!』」

「『悪かったって、ソフィー』」

「『公の場では会長と呼びなさい!』」

「『ああ、すまん。ソフィー会長』」


 突如入って来た男に怒鳴る女性———ソフィーが立ち上がって叫ぶ。

 しかし、男は遅れてやって来たにも関わらず、周りの者達は悪態を吐いたり責める様な事を言わない。何故なら彼は————


「『初めまして。『白の錬金術師』の白岩真白さん。…俺の名はレオ・ウォーカー・アンダーソン。貴女と同じSSSランク探索者で、『魔剣王』と呼ばれてる』」


 ————SSSランク探索者で、探索者界隈では現最強とも言われている探索者。『魔剣王』のレオ・ウォーカー・アンダーソンだった。

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