第133話 二択
「失礼します」
真白が職員室に着くと、近くの先生が真白に声を掛かる。
「白岩さん! 探索者協会の人が来てます。こちらに来てください!」
何故か慌てている先生が真白を職員室と隣接している校長室まで案内する。
コンコン
「白岩真白さんをお連れしました!」
「入ってくれ!」
声が聞こえたので、案内してくれた先生が扉を開ける。
校長室には、校長先生と真白の担任や各学年のダンジョン学の教師が居る。
だが、その他に一名、明らかに教師ではない者が居る。真白は以前、その人に会った事があった。
「あ、探索者協会の職員さん」
「お久しぶりです。白岩真白様」
なんと、多摩川ダンジョンの調査の時に会った探索者協会の職員だった。
「白岩真白様、申し訳ないのですが、緊急事の為今から探索者協会までご同行願います。詳しい説明は移動中に」
「? 分かりました」
「あと、…申し訳ないのですが、今回は非常に大変な緊急依頼ですので、どうしてもSSSランク探索者の白岩真白様の協力が必要不可欠な為、暫く学校を休んで頂く事になってしまいます」
「え?」
真白は何かとんでもない事態が起きているのを薄々感じてはいたが、まさか学校を休んでまでの緊急事態だとは流石に思わなかった。
真白が呆気に取られていると、校長先生が横から声を掛かる。
「白岩さん、どうか協力してあげてほしい。此方は事情は聞いているから心配ない。出席に関しては公欠扱いにします」
「……分かりました」
こうして、真白は暫くの間学校を休む事になった。荷物は必要な物だけ持って、車で探索者協会に向かう。
「では、まず今回の事なのですが…」
車が移動し始めると同時に協会の職員の人が今回の案件について説明する。
ちなみに、職員の人の名前は
「…実は既にネットニュースにも緊急速報になっていまして、確認されましたか?」
「いいえ」
「では、こちらから説明します。今回、白岩真白様にお願いしたいことは、S級ダンジョンのスタンピードの終息です」
「!!」
それを聞いて真白も驚いた。前のSS級ダンジョンの海老名ダンジョン程ではないが、S級指定されているダンジョンがスタンピードを起こすのだ。
「場所は何処ですか?」
「オーストラリアです」
「え! 海外ですか!?」
なんと、場所は日本ではなく海外のようだった。
「……それと、話しを進める前に、一つ訊きたいことがあります」
「何ですか」
「白岩真白様は、探索者登録をする時に、余程の緊急事態でない限り、依頼は受諾しなくてもよいとなっています。しかし、今回は緊急事態な為そうはいきません」
佐藤からそう言われ、真白は納得する。むしろ協力するのは当然と思っている。
だが、真白は一つ気になることがあった。
「佐藤さん、探索者協会は今回のスタンピードの終息の為私の力…つまり武力の戦力が欲しいんですよね」
「……本音を言えば…そうです」
「けれど、先程からの言い方だと、私は戦わなくてもいいような言い方ですね」
そう、佐藤は直接は言ってないが、真白が絶対戦う必要はないと言っているのだ。
「……その通りです。確かに、協会としては、白岩真白様の戦力は今回の様な時はとても欲しいです。…しかし、探索者登録をする時の緊急時以外の依頼の拒否件が白岩真白様には有ります。その為、今回協会は戦闘職としての協力は無理ならせめて生産職として協力して欲しいのです」
つまり協会は今回のスタンピードに『戦う』か『支援』かの二択を選んでほしいということだ。
けれど、真白の応えは既に決まっている。
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