第126話  疑心

 放課後、真白は今保健室にいる。


「……………………………………」


 横のベットでは輝夜が寝ている。

 倒れてから約40分が経つ。

 保健の先生曰く、少し頭を強く打っただけだから暫くしたら目が覚めるようだ。


「真白ー。…輝夜の様子はどう?」

「まだ寝てる。でも、私からみても、先生の言う通り少し強く打っただけみたいだから大丈夫だと思う」


 そして、真白と佳織は席が近く放課後は特に予定が無い為、輝夜の付き添いとして保健室にいる。


「しかし…ほんとビックリしたよ。…まさかあんな事になるなんて」

「うん。…間近で見てた私も……ヤバい光景見ちゃった」

「真白なら止められたんじゃない?」

「あの時は腕輪の出力を強にしてたから咄嗟に身体が動かなかった。……お陰でゆっくり動く世界の中で、回転の掛かったボールが弧を描いて人の頭にぶつかるところを目の当たりにしたよ」


 それからしばらく、真白と佳織が話していると、————


「………………ん………うん……」


 ————輝夜の意識が戻った。


「あ、輝夜……大丈夫? 何があったか覚えてる?」

「……ぅん………山本さん? …それに…白岩さんも?」

「輝夜、あなた体育の授業で頭にボールがぶつかって倒れたの。…覚えてる?」

「……!! あっ、確か白岩さんと話していたら、突然後ろから名前を呼ばれて……」


 どうやら、倒れる前の記憶はしっかりあるようだ。

 それから、佳織が輝夜にその後の事を話す。


「……そうですか。…ありがとうございます。白岩さんも保健室まで運んでくれてありがとうございます」

「……いえ、たまたま手が空いていたので」

「ほら、真白ー! そんな素っ気無い返事しないの! ……ごめんね、真白って基本的人見知りだから、心を開いた人としか気楽に話さないの。…最近は改善されてきてたんだけど」

「佳織……私は陰キャボッチなの……だからこれは仕方がないの」

「あなたみたいな陰キャボッチがいるわけないでしょ。本当の陰キャボッチの人に失礼だよ」


 いつもの様に真白と佳織が戯れる。


「仲が良いんですね」

「あ、ごめんね。…アタシ達いつもこんな感じだから」

「……………………」


 輝夜が真白と佳織の戯れをみて微笑む。


「そうだ! これから私ともっと仲良くして下さい。できればお二人の様な気兼ねなく話せたら嬉しいです」

「勿論だよ! ね、真白!」

「……………………………」


 だが、真白はそっぽを向いて本を読む。


「もう! 真白! 照れてるのは分かるけど相槌くらいしたらどうなの!」

「……照れてない」

「もう! 本当にあなたは! 有名人なんだからシャキッとしなさい!」

「お母さんみたいな事言わないで」

「はぁ…おばさんの苦労が少し解るわ」


 気の許せる人が居る時も居ない時も、どちらの真白にも苦労を掛けられる佳織である。


「……………ふふっw」

「………………………」


 輝夜は二人のやり取りを見て楽しそうに笑っていたが、真白は終始何かを探る様な目を輝夜に向けていた。

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