第123話  転校生

 冬休みが終わり三学期になった。

 三年生は受験に向けてラストスパートを掛けている。

 だが、一年生の真白はまだ先の事の為あまり気にしていない。


「全員、明けましておめでとう。今日からまた勉学に励むように。今日の予定は始業式の後にLHRをして解散だ。明日から通常授業になるからな。宿題の提出は明日だ、忘れるなよ」


 朝礼で担任の先生から今日の予定を聞く真白。まあいつも通りである。宿題に関しては休み前に全て終えている為大丈夫だ。


「あと、LHRで進路調査のプリントを渡す。君達はまだ一年かもしれないが、今のうちに考えておくように」


 流石進学校なだけあって、一年のうちから進路のことを視野に入れて教育している。


「それと一つ……今日は転校生がいる」


 先生のその言葉にクラスメイトがざわつく。

 この時期に転校生とは珍しい為皆んな興味があるのだろう。

 まあ、真白にとってはどうでもいいのかあまり興味を示さない。


「それじゃあ紹介する。……入ってくれ!」


 担任の掛け声と共に教室のドアが開かれた。

 教室に入って来たのは小柄な身長で透き通る様な白い肌にセミロングの髪をサイドテールに結んだ女子生徒が入って来た。


「自己紹介を頼む」

「はい」


 先生の言葉に返事をする転校生。見た目は可愛い系だが、声は綺麗系の高い声だ。


「皆様初めまして。月下輝夜つきしたかぐやと言います。本日から皆様と共に此方の学校で勉学に励ませていただきます。よろしくお願いします」


 そう言って月下輝夜はお辞儀をした。

 クラスメイト達も拍手をしたりして彼女を受け入れている。


「それじゃあ月下の席はあそこの空いてる席を使ってくれ」

「はい分かりました」


 そして月下が座った席は真白の後ろの席だった。

 月下は席に向かう時真白に視線を向けていたが、真白は全く興味がなく。手元に隠し持っている本(ラノベ)を読んでいた。


「それじゃあこれで朝礼は終わりだ。時間になったら体育館に移動する様に。以上!」

「起立。…礼」


 クラス委員長の号令で朝礼は終了した。

 移動まで時間がある為、クラスの生徒(主に女子)が月下のもとに集まり色々と質問している。


「この時期に転校なんて珍しいね」

「そうだね」

「真白はやっぱり興味ない感じ」

「あまり知らない人と話すのは無理」


 最近色々と人と接する事が多くなった真白だが、人見知りは健在だ。関わりの少ない人と話す時は基本的に淡白だったり事務的だ。


「…………………………………」


 真白は手元の本を読んでるが、その後ろでは月下がクラスの生徒と話しながら、時々真白に視線を送っている。まあ、真白は有名人な為気になるのは仕方がないことだ。

 しかし、月下の視線は真白への興味よりも何かを期待する視線だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る