第122話 特訓③
「ハァー…ハァー…ハァー…————」
現在時刻は17:30。開始から十時間半が経過した。
佳織はかなり息が上がってるが、何かを悟ったのか無意識でトラックを走れる様になり、真白の魔法も加減しているとはいえある程度は避けられるようになってきた。
そして、残りあと10周に差し掛かった所で、真白が動く。
「ラスト10周! ここからは今まで以上に集中して避けろ!」
そう言うと、真白は時空間リュックからある物を取り出した。
それは掌に収まるくらいの大きさの水晶の様な球体だった。
「アースゴーレム! 君に決めた!」
それを投げると、地面に落ちた球体が周りの土を集めて、やがてそれは2mくらいの大きさのゴーレムが出来た。
「アースゴーレム! 佳織を追いかけて。…佳織! 今度はアースゴーレムから逃げながら走れ! 軽く攻撃もしてくるから勿論それも避けなさい!」
「そんな! ここに来てそれは流石に無理!」
「いいからやれ!」
佳織は何を言っても無理だと悟った為とにかく走り続けた。
こうして残りは佳織とアースゴーレムの鬼ごっこの要素も含める形になった。
————————
スタート開始から約12時間が経った。
「ラスト一周! 気を抜かず走れ!」
佳織の特訓に終わりが見えてきた。
アースゴーレムとの追いかけっこになってからの佳織は必死だったが、既に体力が限界に近い状態からの追いかけっこの為、途中何度も危険な場面もあった。実際吹き飛ばされたりましたが、真白が回復魔法で傷を治し再開させた。
「ハァ〜……ハァ〜……ハァ〜……————」
佳織はもうおぼつかない足取りで走り、満身創痍だ。意識が有るのか無いのかも分からない状態だ。
「あと半周! 最後の力を振り絞れ!」
真白は鼓舞するが、その声は佳織には届いていない。
そして二分後————
「そこまで!」
————佳織は走り切った。
「ハァ〜……ハァ〜……————」
「佳織、もう終わったわ! 気をしっかり!」
走り終えた佳織に翠が近づく。どうやら殆ど意識なく走っていたみたいで、真白の声が聞こえず走り続けるところだった。
「………うぅ…………クラ……マ…ス……?」
「佳織! 貴女はよく頑張ったわ! 辛かったでしょ!」
「……お…終わ…った…んで…す…か?」
「えぇ、終わったのよ! 貴女はもう地獄から解放されたのよ!」
「! ………ウッ…うっ…ク、クラマス! …ア、アタシ! …辛かったです! …怖かったです! 死ぬかと思いまじだ〜!!」
「えぇ、解るわよその気持ち。でも貴女はやり切ったのよ! よく頑張ったわ」
「ウッ…うわぁ〜〜(泣)」
佳織はやっと特訓が終わった事を理解して、その解放感から翠に泣きついた。
翠もかつて同じ思いをした身の為か凄く優しく接している。
だが、その感動のところに水を差す者が現れる。
「佳織、よく耐えた。今日と明日はしっかりと休んでまた明後日から訓練を再開するよ」
頭のイカれた真白がまた恐ろしい事を言い出した。
「ッ!! …真白……悪いけど…アタシ、もう着いていけない。…ギブ」
「…………………………」
佳織は心身共に折れてしまった。
これ以降、佳織が真白の特訓をする事は無かった。
因みにだが、月末の昇級試験で、佳織は合格出来なかったが、実技戦での個人戦は最初より僅かだが、そこそこ立ち回れたらしい。
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