第119話 マシロ・ザ・ブートキャンプ
「さて、佳織…準備はいい?」
「う、うん!」
真白が多摩川ダンジョンの調査を終えてから二日後。佳織と約束していた特訓をする為に朝から『暁月の彗星』の訓練場に来ていた。
「まず、今回は時間が無いから訓練は本格的にはやらず、佳織が個人戦でもある程度戦える様に身体能力を鍛える方針でいく」
「うん、分かった」
訓練場にはジャージ姿の佳織と真白、更に少し離れた所に翠が居る。
「佳織……今ならまだ引き返せるわよ」
「だ、大丈夫です! クラマス!」
「……そう」
翠は佳織を止めようとするが、これ以上言っても無理だと思い諦めた。
「大丈夫ですよ翠さん。今回は時間が無いので本格的にはやりません」
「………………………」
翠は真白に疑う様な視線を送る。
過去に翠は真白の特訓を経験して、たった一日で逃げたからだ。大規模クランの一つのクランマスターの翠が逃げる程の特訓だ。普通な訳がない。
「翠さんはやらないんですか?」
「二度とやりたくないわ! あんなの訓練とは言わないわ!」
翠が叫びながら拒絶する。
「ふぅ〜……さて佳織、心の準備は出来た?」
「う、うん!」
真白の声と目つきが鋭くなる。
「始めに言っとくけど、今回は時間がないから軽めにやるけど、手抜きはしない。とにかく今回は佳織が個人戦でもある程度立ち回れる様に訓練する。分かった」
「うん」
真白は佳織の訓練内容を長所を伸ばすのではなく短所を伸ばす方針にした。そもそも、戦いにおいて立ち回りは重要なことであるが、佳織は過去一度もソロでダンジョンで戦った事がない。それでもパーティではパーティなりの立ち回りもあると思うが、佳織はモンスターに対する妨害や牽制などのサポート面に偏っているのだ。
「個人戦はスキルや技術の駆け引きも重要だけど、それでも上手く立ち回れなければ何にも意味がない」
「おっしゃる通りです」
「だから、長時間動けるだけの体力をつける為の肉体面に、どんな状況でも冷静に行動できる様になる為の精神面を一気に鍛えるから」
「分かった」
真白は佳織に、特訓でどの面を重点に鍛えるかを説明した。
「それじゃあ、始めようか」
「その前に、一つだけいい真白」
「何?」
佳織はここでずっと気になってた事を訊く。
「真白……その格好はなに?」
そう、今の真白の格好は白を基調とし、金の刺繍に黒のレースの軍服ワンピースに裏面が蒼色の純白のマントを着て、腰には黒のダブルホルスター付きのベルトに入った真白の銃と黒い鞘に入った真白のレイピアがあった。
「……………いつものコスプレ?」
「違うよ佳織。…これは気分だよ!」
「……………大佐さん?」
「違う! 私は今から軍曹になる!!」
「ハートマンさんは撃たれて死んだけど、真白は撃たれても死なないよね! むしろ殺しに来るよね!!」
「ギャアギャア五月蝿い! いいからささっと始めるよ!」
そんないつものオタク趣味の格好する真白だったが、たった今から本気で訓練を施す。
「それではこれより、訓練を開始する! その訓練名は……マシロ・ザ・ブートキャンプ!」
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