第117話  食材ダンジョン

「まぁ、まずはどんなモンスターが居るか調べるか。一応カメラは回しておこう」


 真白は自立魔導カメラを飛ばし、改めてダンジョンの調査を開始した。

 勿論メモも忘れない様に紙とペンもある。


「マッピングはやらなくてもいいかな。今回はモンスターについて調査しよう」


 そして真白は歩きながらモンスターを探す。

 

「居た。……見た感じ、この階層はあのニワトリだけなのかな?」


 真白が見たのは、先程遭遇し逃げて行ったニワトリもどきと同じモンスターだ。それが数匹の群れを作っている。見えてる範囲でも8組の群れが居る。


「とりあえず……【鑑定】」


⚫︎臆病雄鶏チキン・ルースター

 スキル:【逃走】【威圧】【危険察知】


⚫︎臆病雌鶏チキン・ヘン

 スキル:【逃走】【威圧】【危険察知】


「一応モンスターなんだ。…けど、これじゃあニワトリと変わらないじゃん。……しかも名前の『チキン』は『鶏』って意味じゃなくて『ビビり』のほうか」


 なんともふざけた様な名前である。


「しかし、【探知】で探ってみたけど、この階層の殆どはあのモンスターだけみたいだね」


 真白はこのままじゃ何も進まないと思い調査を再開する。


「取り敢えず、倒してみるか」


 真白はレイピアを仕舞、今度は弓を取り出す。近づくと逃げられる為遠距離からの攻撃にすることにした。


「……まずはあの雄から狙うか。……それ!」


 真白が狙ったモンスターの頭が潰れて倒れる。周りに居た仲間は何が起きたのか分からない感じだったが、危険だと一瞬で判断し逃げてった。

 真白の弓は魔力を込めて放つと不可視の矢の形となる弓だ。これなら外傷を少なくし魔力の矢に何らかの属性を乗せれば、モンスターの体内に直接ダメージを与えられる。

 モンスターの素材を大量に持ち帰る真白にとって重宝している武器だ。当然真白お手製である。


「……………ドロップしたのは魔石だけか。他の素材とかは無いのかな」


 その後も真白はどんどんモンスターを倒し続けるが、一つ疑問が浮かんだ。


「可笑しい……ドロップ素材が出ない。…なんで魔石だけなんだろう?」


 通常モンスターを倒すと魔石と素材がドロップする。魔石だけドロップするモンスターもいるが、それは極々稀だ。

 しかし、真白は1階層目だけで30体近くモンスターを倒したが、全て魔石しかドロップしていない。


「うーん……取り敢えずあと少し狩をして、次の階層に行くか」


 そして、真白は次の階層に行くための階層ボスを探す。そのついでに目についたモンスターを倒していく。


「……それ」


『ゴゲ……』 ズサ!!


 もう何十体目か分からないくらいのモンスターを倒した真白だが、突然変化が訪れる。


「え! 魔石の他に何かがドロップした!」


 慌てて真白が確認する。

 しかし、それは素材ではなかった。いや、寧ろ素材よりも遥かに価値がある。


「こ、これは! だ!!」


 真白がドロップしたのは、見た目は小さく、大体100グラムぐらいの『鶏肉』だった。


「そうか。………ここ、食材ダンジョンだったんだ!」

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