第115話  新たなダンジョン

 1月2日、元旦の翌日。

 真白は今日も家でゆっくりする為、リビングのテレビをつけて、毎年恒例の大学生の駅伝を観ていた。

 第二区の先頭の走者が走り始めてから数分後———


 (〜〜♪ 〜〜♪ 〜〜♪)


 ————真白の携帯が鳴った。

 確認すると、相手は桐島だ。


「はい。白岩真白です」

『白岩さん。新年明けましておめでとう』

「明けましておめでとうございます。どうされました?」


 挨拶もそこそこに真白は用件を訊く。


『白岩さん、今暇かね?』

「えぇ、暇ですよ。明日までずっとゆっくりするつもりでしたから」

『そうか………白岩さん…新年早々大変申し訳ないのだが…一つ依頼を受けてくれないか?』

「なにかあったんですか?」

『…実はだな、新しいダンジョンが実現した』

「え! マジですか!!」


 そう、ダンジョンは稀に新しく現れる事がある。

 しかし、それは世界規模で、年に一つか二つである。


『こちらで魔力観測したところ、ダンジョンの階級は推定B以上なのだが…生憎、協会のBランク以上の探索者は現在動けない』

「え、どうしてですか?」

『全員休みを取り里帰りだ。しかも殆どが地方で直ぐには動かせん……』

「それで、Bランク以上で形だけですが協会の探索者である私に依頼をと」

『申し訳ない……私はSSランクだが、手が離せなくてな………』

「会長さんは休みを取らなかったんですか?」

『……………探索者協会は年中無休だ。……休みなどあってないようなもんだ。………そういえば、もう一月以上家に帰ってないなぁ……』

「……えー……その……お、お疲れ様です」


 真白はどう声を掛けたらいいのか分からなかった。

 どうやら探索者協会はブラック企業もびっくりする程の超ブラックなのだろう。


『んっ! ……それより、白岩さんを指名した理由がもう一つあってな。……新たなダンジョンの出現場所が川崎市の多摩区なのだ。しかも世田谷区との境の多摩川付近だ』

「え! 私の家の近所じゃないですか!」


 どうやら、新しいダンジョンは真白の家の近所に現れたようだ。


『強制はしないが…どうかね?』

「いいですよ」

『! よ、よいのか!』

「えぇ。今まで川崎にはダンジョンが無かったので一番近い横浜ダンジョンを主に探索してましたが、近所に現れたら気になりますし」

『そうか! 感謝する! 報酬は弾むから、調査が終わったら協会に来ていただきたい。詳しい場所はメールで送る』

「分かりました。調査方法はいつも通りでいいですね」

『あぁ、宜しく頼む』

「はい。それでは失礼します」


 桐島との連絡を終えた真白は、工房へと向かい、準備を済ませて母親に事情を話して家を出る。


「さて……行くか」


 そして真白は目的地まで向かった。

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