第111話  佳織視点

「最初から一人で戦う事しか出来なかった私と違って、佳織は今の自分に合った戦い方をすれば良い。火力不足はこれからの経験で得ていけばいいから」

「…………………………………」


 真白に諭されアタシは何も言えない。自分でも理解してるからだ。

 自分でも次の昇級試験の合格は今のままでは不可能なのは理解している。


「佳織、真白の言うことが正しいと思うわ。あなたはまだ若いから、これからもっと経験を積めばいいはずよ」


 クラマスも真白と同じ考えらしい。

 まぁ、それはクランマスターとしてメンバーを思っての言葉だと思う。


 けど、アタシはどうしても強くなりたい。

 それは、憧れなのか嫉妬なのか、またはその両方かは分からない。けど、数ヶ月前まで身近な存在の真白が遠くに行ってしまったからだ。

 真白が強いのは知っていた。フリーの時からいつも一人でダンジョンに潜っていて、最初は最上層や上層のモンスターの素材だけ収集してたのに、いつのまにか下層や深層の素材を収集していた。それだけでなく、生産者としての腕も超一流と言ってもいい。


「そうなんだけど……………」


 でも、アタシの気持ちが納得しない。真白が何かする度に、アタシも早く真白に近づきたいと思ってしまう。例えどんなに困難だとしてもアタシはどうしても強くなりたいの。


「……んー…まあ、佳織の考える事はなんとなく予想つくけど、焦る事はダメだよ」


 幼馴染なだけあって、アタシの考えが分からないと言いつつ、なんとなく真白は分かっいてるみたい。

 分かってる。分かってるけど、それでもアタシは————


「でも、幼馴染のよしみで、私が昔よくやってた、短期間である程度強くなる特訓があるよ。そしたら昇級試験の合格率は二、三割くらいには多分なると思う」

「え!」

「!! …真白……あんたまさか!」


 ————でもそこに、真白はアタシを強くする為の特訓の提案をしてきた。その言葉は、真白がアタシには希望をくれたかの様に感じた。

 でも、その隣りで何故かクラマスが恐怖と絶望に染まった顔をしている。


「佳織! 辞めなさい! その話には乗ってはダメよ!!」


 クラマスが凄い必死な形相でアタシを止めてきた。こんなクラマスの顔は見た事ない。


「え!!? ど、どうしてですか?! クラマス?」


 もしかして、アタシ、何かヤバい事やらされるのかな。


「翠さん、私は佳織に訊いてるんですよ」

「真白! あんた幼馴染を本気で殺す気!!」

「大丈夫ですよ。本気で挑んだらそう簡単に死にませんよ。………………多分?」


 なんだろう、すっごいやな予感がしてきた。

 真白が強くなる為に特訓していたのは知っている。けど、どんな内容なのかは知らない。でも、それで少しでも強くなれるなら————


「……真白、その特訓…教えてくれる」

「佳織!! 本気で言ってる!?」


 ————アタシはやると決めた。

 真白がよくやっていた特訓で少しでも強くなれるなら望むところ! あと、真白がやっていた特訓に少しだけ興味もある。


「ハァー…どうなっても知らないわよ」


 でも、クラマスの反応を見てると、想像以上の内容なのは分かった。

 アタシ…生きて帰れるのかな………。

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