第109話 厳重な扉
冬休み初日。12月25日、クリスマスだ。
世間では良い子の子供達がクリスマスプレゼントで喜んでいる家庭もあるだろう。
だが生憎、真白は幼い頃からサンタクロースなど信じていない変わった子供だった。恐らくだが、真白の思考のズレは幼い頃から備わっていたようだ。
しかし偶然にも、神が狙ったかの様に、真白にある贈り物を授けてしまった。
「ふっ…ふふっ……ふふふふふ…あははははははー!!」
自分の工房で狂った笑い声をする真白。その笑いは、喜びと野望を成した笑いだった。
「遂に…あと少しで…私のロマンが叶う。…あぁ〜…………ZZZzzz………」
しかし、徹夜作業をしていたが為そのまま力尽きて寝てしまう真白だった。
————————
ピンポーン!
「はーーい! …あ、佳織お姉ちゃん!」
「あら紗奈ちゃん。…こんにちは」
「こんにちは!」
時刻は正午。佳織が白岩家を訪ねて来た。
「紗奈ちゃん、真白に用事があるんだけど、真白は起きてる?」
「多分まだ寝てると思います。今日まだ会ってないので」
「そう、じゃあ起こして来てくれる?」
「いいですよ。あ、リビングで待っていてください」
「うん、ありがとう」
佳織は白岩家にあがってリビングで待つ。そして、慣れた手つきで棚からコップを出しお茶を入れる。親どうしが昔からの付き合いの為、佳織はよく白岩家に出入りしている為お茶等はよく自分で入れる。信頼されているのだ。
待つこと五分。真白と紗奈が一向に来ない為、何かあったのか気に出し始めた。
「あ、佳織お姉ちゃん」
するとちょうど紗奈がリビングに来た。だが、真白の姿がない。
「あれ? 紗奈ちゃん、真白はどうしたの?」
「多分工房で寝てると思います。…けど、ちょっと…大変な事になって……とりあえず、一緒に来てください……………」
「……ええ、分かった」
そして佳織は紗奈とともに真白の工房に向かう。
そして工房の前まで来て扉を開ける。
鍵が掛かっていないということは、必然的に真白は工房内に居る。
「こっちです」
紗奈が佳織をある場所へと案内する。
「へぇー、この工房地下があったんだ」
「うん。…でも、下の階は素材や物の保管庫らしいです。でも、その下にまだ部屋があるんです」
「え! 地下室が二つも!」
そして、地下一階の部屋(倉庫)に着くと、降りてきた階段の反対側の部屋の壁にもう一つ扉があった。だが、その扉は見ただけで分かる程の厳重な作りをしている。他にも幾つものスキルの【付与】や【刻印】もされている。
「……………何、この扉?」
佳織はその厳重な扉を見て驚く。
だが、幼馴染の佳織はすぐに理解した。真白は絶対碌なことしてないと。
「紗奈ちゃん、この扉の向こうに真白が居るの?」
「多分……でもお姉ちゃん、この中には絶対入っちゃダメって、私だけじゃなくてお母さんとお父さんにも言ってた。……それに、この扉は中からしか開けられないの……………」
「…………………………………………」
佳織は声が出なかった。確実に真白はとんでもない事をしてるのは間違いない。覗くのは戸惑う。しかし、目の前の扉を見ていると好奇心の方が強くなる。
「うーーーん……多分真白の事だから、自分の魔力じゃないと開かない様にしてるよね。それに他にギミックがありそう……………」
佳織は開ける事が出来ないと判断し、取り敢えず、真白の携帯に電話を掛けながら扉を叩く事にした。
「真白ー! いるんでしょ!! まーしーろー!」
ドンドンドンドン!
「聞こえてるー!? 真白ー! マーシーロー!!」
ドンドンドンドン!
暫く扉を叩いていると、佳織の携帯が真白の携帯に繋がる。
『あ゛あ゛ぁ゛〜い………』
電話に出た真白はかなり眠そうな声をしている。
「真白! あなた今何処に居るの!?」
『ん〜〜〜? ……あ……今工房に居る……』
「それって地下の2階? なんか厳重な扉がある部屋の……」
『ん? なんで知ってるの?』
「あなたの家に来たけど、部屋にも工房の休憩室にも居ないから、紗奈ちゃんがここかもって案内してくれたの!」
『…待ってて、すぐ行く………』
待つこと2、3分。扉の向こうから階段をのぼる音が聴こえてきた。
ゴットン! ガッガッガ! ……カチカチ…キュ〜ウ! ガッチャン!!
そして、扉のすぐ向こう側から突然凄い音がした。音を聴く感じ、扉の開閉音だろう。
佳織は、まさか二重構造になっている事は予想出来ずいきなりの大音量で驚いた。
そして、目の前の扉が開く。
「おはよう〜…ごめん待たせて……紗奈もごめんね〜………」
出てきた真白は二人に一言謝って、そして扉を閉める。
キィ〜〜…ガッシン! ガチガチ——! ピィピィピィ——……シュッ!
真白は厳重な扉を閉めた。
後ろから見ていた佳織はその扉が、魔力の認証だけでなく、縦に並んだ7、8桁の幾つものダイヤルとパスワード認証、更に左右にある刻印を同時に回してロックするギミックに声が出ない。だが、分かる事は、真白がかなりヤバい事をしているぐらいだ。
「………真白…あなたまさか徹夜したの?」
取り敢えず、佳織は真白に適当に言葉をかけてみた。
「うん。……良い物が出来たから…つい……」
「……何ができたの?」
あれ程自重しろと言ったのに、また何かしでかした真白に少し呆れる。
「これを見て」
真白が見せたのは、野球ボールくらいの大きさの、白色に輝く球だった。
「真白、何なのコレ?」
「フッフッフッ…これはね、————」
「!!」
どんな物か聞かされた佳織は、驚きはしたものの、その時の顔は何かを期待した顔だった。
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