第108話 政府と協会
12月24日、クリスマスイブ。真白の学校は明日から冬休みだ。
「真白ー! 一緒に帰ろーう!」
「…三分待って」
佳織が真白を誘うと、真白は拒否はしなかったが、机の上のプリントをものすごい勢いで書いている。
「……真白……それ、昨日貰った現文の宿題だよね……」
「うん。…あと少しで終わるからそれまで待って」
「…………………………………………………」
そして約3分後、真白は現文の宿題のプリントを終えて教室を出る。
「真白は冬休み何するの?」
「これといって何もしない。しいて言えば、青木ヶ原ダンジョンに潜ったり、メイドホムンクルスの製造の研究したりかな」
「まだ、諦めて無かったの……」
「佳織…メイドは私のロマンなんだよ!」
真白のメイドスキーは尋常じゃない。テンションの高い真白は決して諦めないのだ。
「他のダンジョン攻略や生産活動とかはしないの?」
「あー…実はかなり大きな問題があって…まぁこれに関しては私に非があるというか……とにかく、何もない限り自重する事にした」
「? ……何かあったの?」
真白が困った様に苦笑いを浮かべる。
佳織はそんな真白の表情を珍しく思い何かあると思った。
佳織の心配した顔を見て、真白は周りに人がいない事を確認してから鞄からあるアイテムを取り出す。
「『サイレンスフィールド』」
真白が取り出したのは、一定範囲内に居る者の会話を周りに聞かれない為のアイテムだ。
「え!?」
「佳織……あなたは信頼してるから言うけど…一応これはあまり言いふらさないでね」
佳織はかなりヤバい内容だろうと察したが、聞くことにした。
「……わかった」
「うん。…まず、結論から言うけど、実はここ最近の私の活動で会長さんにとても大きな負担を掛けてたみたい」
「……理由は?」
「政治絡みだよ」
「うゎ〜〜〜………」
佳織が明らかに面倒そうな顔をする。因みに真白も初めて聞かされた時も同じ反応をしていた。
「それ…結構大変じゃない。表面上あまり目立たないけど……実際、日本の協会と政府って仲悪いじゃん」
「本当そう……」
「………それで、協会の会長さんは具体的にどう大変だったの?」
真白が佳織に説明する。簡単に言うと、真白の政治利用だ。
真白がSSSランクになった大きな理由に、ダンジョンの災害地区の開放があった。
ダンジョンの災害地区は大なり小なり世界各地にある。そこに目をつけた一部の私利私欲の政治家が外交関連での利権を得ようとしていたらしい。
他にも、真白が発明した物や最近のだと『欠損部位再生ポーション』も、独占とまではいかなくとも、何かと介入しようとしたらしい。
しかし、真白が発明したアイテムなどは全てクランの『生産組合』が販売権を握っている為国は介入出来ない。
探索者関連の事は、政府は必ずまずは探索者協会に話しを通さなければならないという法がある為、クランに直接介入出来ないからだ。
「つまり、政府のお偉いさん達が真白の力を利用したいけど、それを会長が頑なに拒否しているから、そこでやり取りが大変になっているってこと」
「……それにプラス、私みたいな高ランク探索者は何かした場合詳細を詳しく資料にして国際探索者協会に提出する義務があるから、『無効系スキルの条件』、『欠損部位再生ポーションの製作』、『S級ダンジョンの完全攻略』と私が次から次へと色々やったから、資料作成で手いっぱいなんだよ。…しかも会長に就任して半年も経っていないから………」
「真白…冬休みは大人しくしようね」
「うん……」
流石に真白もこれを聞いた時は桐島に申し訳ないと思った。政府とのやり取りはクランは基本介入しない為、真白以外の三人も知らなかった。まぁ、桐島も協会の会長として、あまり巻き込みたくなかったのだ。
しかし、半分は真白の善意で探索者登録をしてもらっている為、一方的に責めるのはどうなのかと話しになり、渋々事情を話した。実際桐島もこの件については最後はかなり反省していた。
「……それにしても、政治家って、アタシ達探索者をどう思ってるのかな」
「都合の良い何かと思ってるんでしょ。…スタンピードの時はあっちは何も出来ないから探索者に任せっきりだし、何かあるとネチネチ言ってくるじゃん」
「ホントそう!」
佳織も真白から話しを聞いて結構イラついている。
「………はぁー」
真白も今回の件に関しては溜め息しか出ない為、もう忘れる事にして、冬休みは大人しくすると決めている。
「……周り…カップルだらけだね……」
「イブだからね。…アタシ達は彼氏いないから関係無いけど……やっぱ思うところあるよねぇー」
「………陽キャのリア充どもめ(ボソ)!」
こうして、真白の冬休みは始まった。
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