第105話 『魔剣王』
ダンジョン攻略には、普通の攻略と完全攻略の二つがある。前者は普通に一階層から最下層までを攻略しただけ。そして後者は、レイドボスを含めての攻略だ。
そして、真白が今回したのは、S級ダンジョンの新宿ダンジョンの完全攻略である。
「本来なら誇るべき偉業なのだけど……」
「今回は、タイミングがねー……」
「でも、白ちゃんも意図してのことじゃあないんだから、いちいちネチネチ言う事ないだろ」
翠、相良、龍也の三人は何とも言えない感じだ。
「三人の言いたいことも理解出来るが。…今回は外交関係で何かありそうなのだよ」
「………やっぱり、ニュージーランドの『魔剣王』が動くからですか? 桐島さん……」
「そうだ。『魔剣王』、レオ・ウォーカー・アンダーソン……白岩さんと同じSSSランク探索者だ」
『魔剣王』、レオ・ウォーカー・アンダーソン。世界で最初のSSSランク探索者だ。彼の名前を知らない者は探索者の中にはいない。
A級ダンジョンの攻略やスタンピードのモンスター討伐、そして一番有名なのが、B級ダンジョンの深層レイドボスの単独討伐だ。
「『魔剣王』は知名度だけでなく人気もかなり高い。そのせいか、彼が何かする度にちょっとした話題になる。だから今回の話題はかなり大きな話題になっていたのだよ」
桐島が過去形で応える。
「だがな、まだ本格的に動いてない時点でも大騒ぎなのに……白岩さん、君が更に大きな爆弾を持ってきた訳だ」
「あの〜…迷惑をかけてるのはわかるんですけど、そんな大事ですか?」
「何を言っている。……S級ダンジョンの攻略が初めてされたのだぞ。SS級ダンジョン深層レイドボスに挑む声明よりも大きな話題だ!」
ダンジョンが攻略された数はそこそこある。
しかし、その殆どがE〜B級だ。余談だが、B級ダンジョンの攻略は殆どはSSS級ランクだ。彼らにとっては、片手間でB級ダンジョンを一人で攻略するのは当たり前なのだ。
話しを戻すが、実はA級以上の攻略は意外と少ない。A級ダンジョンですら両手で数えられるくらいしか攻略されておらず、完全攻略はされていない。S級以上はそもそも攻略されたことすらないのだ。
「白岩さん、今世間では君がどれ程注目されているか理解しているかな?」
「まぁ、周りの雰囲気が変わったのは分かります」
「そうか…だがな、白岩さんの変化はまだましな方なのだよ。本当なら貴女だけでなく、貴女の身内や友人などにも野次馬どもが押し寄せるくらいの存在なのだよ。そうならない様にこちらは色々と手を回しておるのだ」
「なんかすいません。………でも、だったら今回の攻略を秘密にすればよかったのでは?」
「前に言ったであろう。……君のような高ランク探索者…特にSSSランクのダンジョンの攻略関連は詳しい報告書を書いて提出しなければいけないことを」
「……そうですか」
流石に規則だと言われたら真白もどうする事も出来ない。
「本当なら、今回の『魔剣王』の話題で白岩さんの対する世間の注目度が下がれば良かったのだがな」
「…………………」
真白は何も言えなかった。桐島の言う通り、真白にとっても注目度が少しでも下がるのはいい事だ。しかし、知らなかったとは言え、逆に注目を集める形になってしまった。
「それよりも桐島さん。あっちは大々的に宣伝したんですよね。そこで白ちゃんが宣伝以上の事をした。…つまり、捉え方によっては、あちらよりもこちらの方が探索者の質は上と喧嘩を売った形になってる事ですよね」
「……………そうだ」
「あちらからは何か言ってきましたか?」
「まだ何も来ていない」
桐島と龍也の空気はやや重い。
「でも、既に何処からか漏れたのか、真白がS級ダンジョンの単独完全攻略をした情報がネットにあげられているわよ」
「ネットの情報って本当に早いわよねぇ」
翠と相良は外交関係よりも世間の話題の方が気になる様だ。
「んん! ……とにかく、過ぎた事はどうしようもない。こちらは何か言われたら、ありのままの事を隠さずに伝える」
桐島の言葉に全員頷く。
「だが、白岩さん。訊かなければならない事がある」
「なんでしょうか?」
「新宿ダンジョンの攻略に関して、詳しく聞かせてもらいたい」
「はい」
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SSSランク探索者
1人目 レオ・ウォーカー・アンダーソン
通称:『魔剣王』
2人目 ?????
通称:『閃光』
3人目 ルーシー・モリス
通称:『絢爛の魔女』
4人目 白岩真白
通称:『白の錬金術師』
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