第104話  また、やっちゃった

「…………………………………」(桐島)

「…………………………………」(真白)

「…………………………………」(翠)

「…………………………………」(龍也)

「…………………………………」(相良)


 場所は協会の来客室。そこは、本来なら話し合いがされる場所なのだが、けれどそこにいる者達は全員沈黙している。


「……………はぁーーー……」


 そんな沈黙をやぶる様に桐島が溜め息をする。


「で、…白岩さん……説明してくれるかね」


 桐島がやや強めに真白に言う。


「……えーと、……私はダンジョンをタダ攻略しただけです」

「ほーう………S級ダンジョンを単独でのをタダの攻略と言うか」

「…………………………………」


 真白は気まずくなり桐島から目を晒す。他の三人は今は会話に参加する気はない様だ。


「……あぁ〜、もう! そうですよ! 完全攻略しましたよ! 金曜の放課後からダンジョン内で泊まり込みで攻略してましたよ! でも、なんで責められるんですか!?」


 だが、あまりにも場の空気が重すぎたのか、真白が急に開き直る。


「真白、少し落ち着いて」

「ましろちゃん、話しが進まないから、まずは事情を聞いて」


 翠と相良が真白を宥める。


「桐島さん、あまり白ちゃんを責める様な言葉はせずに、冷静になってください」


 龍也も桐島を落ち着かせる。


「……すない、大人気無かった」

「桐島さん、取り敢えず話しを進めましょう。ましろちゃんはどうやら状況を理解してないみたいですし……」


 桐島は一旦落ち着いて本題を話す。


「白岩さん、貴女は金曜日の放課後からダンジョンに泊まり込みで攻略していた。間違いないかな」

「はい」

「……では、白岩さん、ちょうどその日の速報のニュースを見たかね?」

「? いいえ……」


 桐島の質問に、真白は否定する。


「そうか。……実はな、その日にある速報がながれたのだよ」

「?? どんな内容ですか?」

「オセアニア連邦探索者協会がな、史上初のSS級ダンジョンの深層レイドボスの討伐をすると宣伝したのだ」

「? ………あっ」

「どうやら気付いた様だのう」


 真白は桐島が何を言いたいかを察した。


「白岩さん、君はここ数ヶ月でかなり目立っておる。探索者界隈だけでなく一般市民にまでもだ。それは解っているかな」

「はい」

「しかしだ、先日のオセアニア連邦の記事は史上初の挑戦ということもあって、大々的に報じられたのだよ」


 そう、SS級ダンジョン深層レイドボス攻略は過去に討伐どころか挑戦する事すら無かった。その理由は色々とあるが、主な理由は2つ。1つ目は、ただ単純に強い。まぁこれは当然だ。しかし、問題なのが二つ目だ。それは、レイドボスののだ。

 普通なら、事前情報としてボスの姿やスキルを下見するのだが、SS級ダンジョンの深層レイドボスは不可能なのだ。

 レイドボスの特殊エリアの扉を開けたら即襲ってきたり。姿を見せなかったり。一番最悪なのは、特殊エリアに入ったらそのまま閉じ込められるのだ。

 その為情報が全く集まらないのだ。だから、どのクランや各国の探索者協会は積極的に攻略をしない。


「……そして、世間が大きく注目して中、私がまたやっちゃったと」

「ああ………史上初のS級ダンジョンのをな。…しかも、単独で……………」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る