第99話 文化祭⑤
教室から急いで離れた真白は佳織と共に待ち合わせした人物の元へと向かっていた。
「で、真白。…約束してる相手って誰なの?」
「佳織も知ってる人だよ」
「そう。……で、どこ向かってるの? 校門はあっちだよ」
「ん? あぁ…佳織も知らないんだ。実はこの学校、少し離れた所に裏門があるんだよ。そこで待ち合わせしてるの」
「えっ! 裏門があるの!? ………もしかして…待ち合わせの相手って」
真白の学校は正門側は広場があり大通りになっている為学校の生徒は正門を使って校舎に向かう。だが、その反対側に、校舎から少し離れた所に裏門がある。その存を知っている生徒は殆どいない。
真白も待ち合わせ相手から話しを聞くまで知らなかったのだ。こんな事知ってるのは真白の知り合いで一人しかいない。
「あっ。…ほら、見えてきた」
「あー……やっぱり」
真白達の視線の先に二人の待ち合わせ相手の姿が見えてきた。どうやら先に着いていたみたいだ。真白達が近づいていくと、あっちもこちらに気づいたみたいだ。
「あ! お姉ちゃん! 遅い!!」
「ごめんね紗奈。いい子にしてた」
真白の妹の紗奈が真白に向かって近づいてきた。
そしてもう一人の人物に真白は挨拶をする。
「こんにちは、美梨姉さん。紗奈の付き添いしてくれてありがとうございます」
「久しぶりです。美梨姉さん!」
「こんにちは、真白ちゃん。佳織ちゃんも久しぶり〜」
相手は勿論、真白と佳織の姉的存在の不破美梨だ。
そもそも、生徒どごろか教師すら裏門の存在を知っているか怪しいのに、その存在を知っている真白の知り合いなど彼女しかいない。
「しかし、相変わらず人気が少ないわね〜。まぁここは細い林道で薄暗いし目立たないからしょうがないか〜」
「でも、私に気を遣ってくれたんですよね。本当にありがとうございます」
「いいのよ〜そんなの気にしなくて〜。それより真白ちゃん、よく目立たつここまで来れたわね?」
「あぁ。…それはこれのお陰です」
真白が見せたのは、天然石を使ったパワーストーンブレスレットの様だが、よく見れば全て魔石で出来ている。
綺麗な球体で硝子並の透明な魔石が幾つもあり、そして球体の魔石に等間隔に紡がれた純魔銀(ミスリル)の台座に白金色の光属性の魔石が五つ、ダイヤモンドの様に美しくカットされはめられている。
「これには【認識阻害】を付与をしているので、そう簡単には認識されません」
「……真白…【認識阻害】をするならそんな高価な魔石とか要らないよね? なんでそんなに装飾凝ってるの?」
そう、佳織の言う通りただ【認識阻害】を付与するだけならミスリルや魔石などは要らないのだが、何故か真白はかなり質の良い魔石を沢山使っている。
佳織の質問に、真白は———
「え? ただ大量に素材が余ったからちょっと息抜きにオシャレなブレスレットを作っただけだよ。それに、ミスリルは魔力伝導率を上げてくれるし、球体の魔石には大気中の魔素を吸収する効果を付与して、台座や光属性の魔石にはスキルが効率よく発揮できる様に【刻印】スキルも使ってるの」
———珍しく饒舌に喋っている。どうやら結構自信作らしい。
だが、とんでもないのは、使っている魔石の品質が最低でBランクなのだ。しかも光属性魔石に関してはSランクだ。そこにミスリルなどの希少な物まで使って付与をしているのだ。下手したら一つ四桁万円いってもおかしくない。それを素材が余ったからという理由だけで作った真白はどうかしている。
「あ、美梨姉さん達の分もありますよ。…はいどうぞ……紗奈手出して……はい」
「ありがとう! お姉ちゃん!」
「ありがとう〜真白ちゃん。……しかしこれ、キレイな魔石ね〜。いったい幾らくらいのするの〜?」
「美梨姉さん……それは絶対聞かない方が良いですよ………」
「え〜? そう言われちゃうと、気になっちゃうな〜」
佳織の言葉で美梨はブレスレットの値段に益々興味が出てきてしまった。
だが、そこに珍しく饒舌になった真白が口を開く。
「え〜と、大体最低価格で2,000〜2,500万円くらいです」「…………………………………………………」
美梨は声を出す事が出来ず、自分が今身に付けているブレスレットの価値を聞いて体が寒気を感じると同時に顔を青褪める。自分が今身に付けてる物の値段が次元が違い過ぎて驚いていたからだ。
「聞くんじゃなかった〜…………」
「だから言ったじゃないですか…………」
美梨は聞いた事を後悔し、佳織は呆れと同情を含んだ言葉返した。
「ねぇ、お姉ちゃんたち、早く行こう!」
立ち話しが長すぎたのか、紗奈の機嫌が少し悪い。これ以上機嫌が悪くなるのは困る為、真白達は校舎の方へと移動する。
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