第97話 文化祭③
「そうだ、文化祭はどんな感じ?」
食事中、雑談で真白が佳織に訊いた。
「あー……やっぱり二年生と三年生の出し物は人気だね。二年生は人が絶えず来るから忙しそうだけど、三年生の縁日はすごい面白いし、舞台劇も結構観にくる人が多いよ」
「そうなんだ。一年生の展示会の方は?」
佳織が文化座の様子を語るが、真白にとってはそれは二の次だ。長い付き合いの佳織はすぐに分かる。
「二、三年生に比べるとやっぱり人は少ないかなぁ〜」
「…そうなんだ」
「でもね〜真白。これを見て」
佳織が自分の携帯画面を真白に見せる。写っているのは、SNSの画面で、そこには真白の作った模型が写っていた。
「お〜…私の作品が写ってる」
「うん。アタシ達のクラスだけすごい沢山の人が来てるの。ネットでも、かなり評判みたいだよ」
「なら良かった」
「でも、教室入ったら驚く人は結構いたよ」
驚くのもむりはない。教室入ったら目の前にモンスター(模型)がいたら誰だって驚くだろう。けど、真白にとってはモンスターの模型の評判の方が大事だ。どうやら、かなりの人が観にきてるらしい。
「今のところ評判は良いみたいだね」
「うん、そうだね。ネットでこんなに話題になってるから、もしかしたら明日は今日よりも来校者が増えるかもね」
「かもね。…まぁ、一般受けして良かったよ」
真白はモンスターの展示物が一般受けして安心した。これで龍也にも良い報告が出来るだろう。
「そんな事より。…真白は少し危ないかもよ」
「えっ! なんで?!」
佳織のいきなりの警告に驚く真白。
「なんでって。…真白……文化祭の来校者がこんなに多いのは誰のせいだと思う?」
「……………………」
真白は目を逸らした。本人も言われて理解して、どんな状況かを察した。
「……私を探してる来校者って、結構いる?」
「結構どころか殆どがそうだよ」
「マジかー……」
そう、やはり殆どの来校者の目的は真白である。今一番話題の探索者が近くに居たら。一目見ようと来るだろう。
「どうやら極一部だけど、聞き込みまでしてる人もいるみたい」
「え〜………」
真白は今自分の置かれるこの状況を予測はできていた。しかし、聞き込みまでする輩までいるとは思わなかった。
「ねぇ、少し見て周るくらいはした方がいいと思うよ」
「それ、私にとっては、子どもをライオンの檻に放り投げるのと同じ感覚だよ」
真白は佳織の考えはいいことだと思う。けれど、今更行っても面倒と思っている真白だ。しかし、このままでは、危うい状況が変わらないのも理解している。
「う〜ん〜〜〜………なら、明日のラスト一時間だけ周るのはどうかな」
「……まぁ、まったく姿を見せないよりはましかな」
「じゃあ、そういうことで明日ボディーガードよろしく」
「………分かったわ」
そして真白は食事を終えて、文化祭の一日目が終わるまで、図書室に篭っていた。
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