第95話  文化祭①

 二週間後、文化祭当日。


『これより、第49回、文化祭を開催します』


 放送から文化祭開始の言葉が流れる。


「始まったね、真白」

「…………うん」

「いやー予想はしてたけど、…………凄い人数ね」

「……………………………」


 教室の窓から覗くと、校門には多くの来校者の数が居た。あの中には学校見学の中学生や生徒の保護者の他に、他校の生徒や卒業したOB、ダンジョン関係者も居るだろう。


「取り敢えず、真白は美梨姉さんの言ってた図書室に居るの?」

「うん」

「せっかくの文化祭なのに…楽しむ事できないね」

「元々あまり乗り気なかったし、大丈夫。佳織には本当悪いけど…」

「埋め合わせの約束はしたからいいよ」


 真白は佳織と周れない事に申し訳ない為、後日埋め合わせする約束をしている。こんな時頼りになる幼馴染だ。


「しかし、アタシ達のクラスの展示会は、リアリティのある立体模型だけど………真白……アレは何?」


 真白のクラスの展示物は、リアリティある立体模型で、個人や班を組んで、木の彫刻や紙やダンボール、粘土を使った模型がある。だが、教室の中央に、一つだけ、異様な立体模型があった。


「え? あれは新宿ダンジョンの上層に出てくるモンスターのニードルフェザースワンの立体模型だよ」

「……うん…確かにそうね」

「いや〜、造るのに少し気合い入れたから少し時間掛かったよ。昨日の夜家で仕上げたから間に合って良かった」

「……………剥製じゃないの…アレ」


 真白が造ったのは、モンスターの素材を使って造ったほぼ本物に近い立体模型である。


「剥製じゃないよ。まず獲物を死体ごと狩ってきたら解体して、その後は臓器を取ったり汚れを洗ったりしたら、骨と皮と毛、羽に【完全無臭】と【劣化防止】を付与して、本物に近い模型にしたよ! 細かいところは色を塗ったり補強したりしたけどね」

「この教室入った人は全員驚くよ、コレ」


 真白は自分の作品を自慢するかの様に言う。

 ちなみに、これは以前龍也と話したモンスターの博物館計画の一般の反応を確かめる為の調査もかねている。一年生の展示物は制作者が撮影してもいいかを任意で決められる。まぁ、殆どの生徒はいいとは言わないが、真白は撮影だけでなく、ネットに上げる事も許可した。こうすれば、世間からの反応を確認できると思った為だ。この事は龍也にも伝えてあり、是非頼むとお願いされたのだ。


「それじゃ佳織、人が来る前に私は図書室に行くね。昼食は司書さんに訊いたら室内を汚さないなら食べてもいいらしいから」

「わかった。なんだったら屋台で買ったご飯持っていくね」

「ありがとう」


 そして、真白は人が来る前に教室を出る。


「あ!」

「どうしたの?」


 真白が何かを思い出したのか、佳織をもう一度見た。


「そうだ佳織、あの女星歌には、私の居場所を教えないでね」

「……わかった」


 最後にそう言って、図書室に向かった。

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