第94話  夜の相談?

 ピロロン、ピロロン、ピーン♪


「いらっしゃいませ〜」


 夜の九時、真白はよく利用するコンビニに来ていた。いつの間にか無くなったストックのお菓子の補充する為である。


「チョコ、アメ、カルパス、ポテチ、煎餅、かりんとう———」


 真白は欲しいと思ったお菓子をカゴに詰めていく。そして、いっぱいになったカゴと一緒にレジに向かう。


「いらっしゃい〜。…三週間ぶりかしら、真白ちゃん」

美梨みり姉さん。こんばんわです」

「もっと顔見せてよ。結構心配してるんだから〜」

「色々と忙しくて大変だったんです」


 真白が姉さんと呼ぶ女性は、家から一番近いコンビニで働く大学生、不破ふわ美梨みりだ。二人は家が近所な為よく話し、昔はよく一緒に遊んだ仲だ。


「お〜、流石SSSランクさん。…色々と大変ですねぇ〜」

「からかわないで下さいよ」

「あはは。……で、本当ここんとこどうしたのよ? ずっとダンジョン潜ってたの?」

「いいえ、最近は生産の方で忙しくって」

「あ、そっちか。また何か作るんでしょ〜。…あまりはっちゃけない様にね〜」

「は〜い」


 レジ前で二人で話していると、————


「お〜い、姉さん。誰とお喋りしたんだよ。しっかり仕事しろ」

「あ、真人まとさん。久しぶりです」

「あぁ、真白か…久しぶり。元気だったか?」

「はい」


 ————奥から美梨の双子の弟、不破真人が出て来た。


「姉さん、長話は控えてくれよ」

「いいじゃない。今は真白ちゃん以外客居ないし〜」

「まぁ…そうだけどよ」


 双子の姉弟ならではの遠慮のないやり取りをする二人。実は結構仲が良いのである。


「しかし真白、またスゲェ量を買ったな。…もうストックきれたのか」

「最近アトリエに籠ってましたから」

「体調だけは気をつけろよ。……そんじゃ姉さん、俺は仕事戻るわ」

「私はもう少し話してるね〜」

「ほどほどにな」


 そう言って真人はバックヤードに向かっていった。


「そう言えば真白ちゃん。確かそろそろ学校は文化祭だったわよね」


 美梨と真人は真白と入れ違いで同じ学校を卒業したOBだ。だから、学校行事などの事は色々知っている。


「……………はい」

「なんだか浮かない顔ね。どうしたの〜?」

「………実はですね、————————」


 真白は今の自分の悩みを話した。文化祭の準備を周りに合わせてやれるかとか、自分目当ての来場者とか、兎に角色々と不安を言った。


「なるほどね〜。けど、一年は展示会だからまぁ準備の方は大丈夫かな。…問題は来校する他校の生徒や来賓に中学生ね〜」

「はい、そうなんですよ」

「当日サボる〜?」

「佳織にダメと言われました」

「あはは、冗談よ〜。まぁ、その辺は先生達に任せとけば大丈夫のはずよ〜。後はそうね〜、一つだけいい方法があるわ〜」

「! 何ですか!?」


 真白がその方法にくいつく。


「真白ちゃん。実はね〜、文化祭の日には〜休憩室ができるのよ〜」

「? それって教員会議室のことですよね? あそこは主に来賓とか一部の生徒が利用する場所じゃないですか。何も解決してませんよ!」

「ふっふっふ〜。実は休憩室はまだあるんだよね〜」


 美梨は焦らす様に笑いながら言う。


「教えてくださいよー」

「ふっふっふ〜。…真白ちゃん。西棟にそのもう一つ休憩室があるのよ〜。そこはね〜実は一部の人しか知らないんだ〜」

「え?」

「実はね〜、西棟の図書室が、文化祭時は休憩室になるのよ〜」


 真白の学校は、北が中央棟で職員室に教員会議室や視聴覚室がある。そして東棟が各学年の教室と資料室があり、南棟は体育館や室内プールなどがある。そして、件の西棟は保健室や美術、音楽室、家庭科室に図書室があるのだ。


「西棟の室内は化学室とか色々と危ないのがあるから〜、クラスの出し物で借りることは出来なくてね〜。だから基本は保健室と飲食店をやる二年生の為の家庭科室しか使わないんだ〜」


 真白は保健室は怪我人などが出た時は必要だし、家庭科室も二年生の飲食店の出し物の為と言うのも納得する。


「けどね〜。文化祭の日でも司書さんは図書室で仕事していてね〜。静かな所で休憩したいって言う生徒の為に開放してるんだけど〜。どうやら忘れられているのよね〜。私は何度かあそこで休憩してたけど〜」


 そんな自分の過去話をする美梨。

 それを聞いた真白は良いことを聞けたと、満足そうな顔をした。


「へー。そうなんですか。流石、元生徒会副会長ですね。文化祭の運営側だから知ってたんですね」

「ふっふ〜。…あそこなら人は全くっていうくらい人が来ないから休憩するのに楽なのよ〜。運営の仕事を押し付けてサボる場所にはちょうど良い場所だったわ〜」

「……………………」


 まさか真白は美梨がサボる為に利用していたとは思わず、ジト目を向けた。


「だから当日は図書室に居るのが一番良いと思うわ〜」

「ありがとうございます。では、この辺で帰りますね」

「は〜い。ありがとうございました〜」


 こうして真白は良い情報をもらい、家に帰った。




—————————————————————


 今回出てきた不破美梨と不破真人は、友人の発案の名前で、面白そうだから採用しました。


 不破→ふわ→→ファ

 美梨→みり→ミリ

 真人→まと→マト



 と、こんなかんじです。

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