第93話  新たな悩み

 真白の欠損部位再生ポーションの製作がひと段落つき、やっと普通の日常に戻————


「文化祭まで後二週間です。皆さんは準備を頑張って下さい」


 ————らなかった。


「けれど、一年生は展示会だから、準備はそこまで大変では無いし、当日は思う存分楽しみなさい。では、解散!」


 担任の掛け声とともにクラスメイト達は席を立つ。帰宅する者、部活に行く者、まだ教室でお喋りする者など。真白は帰宅して探索者としての活動をするが、気分があまりのっていない。


「あ゛〜〜〜…文化祭か〜〜〜…」

「その声怖いからやめてよ真白」

「ごめん。……はぁ〜……忘れてた。確かそんな行事あったなぁー」

「最近研究づけだったもんね。……まぁ、モノがアレだから無理もないけど」


 文化祭、それは、学校行事の中で、生徒が日頃の学習や活動の成果を総合的に発展させ、発表し合い、互いに鑑賞する行事だ。


「皆んなで協力して取り組むか……私には酷な事だよ。…ましてや陰キャの私が……」

「…………知らぬは本人だけ、か(ボソ)」


 真白は最近は例のポーションの研究で忙しくしていたので、学校行事の文化祭のことを忘れていた。

 因みに、欠損部位再生ポーションはまだ世間に公表されていない。公表は人体試験を終え、安全性と最低限の量産が出来てからだ。真白は量産面はクリアしてる為あとは安全性だけである。その為国際探索者協会の認可待ちなのだ。


「はぁ〜…11月中旬なのに文化祭って、…遅すぎない」

「でも、うちの学校、テスト期間の一週間前に何かしらの行事があるのが普通じゃない。実際一学期の期末前は体育祭があったし」

「テスト地獄に入る前に、思いっきり楽しめってことじゃない。……特に佳織」

「………………」


 真白は基本、個人作業しかしない為、クラスメイト達と協力するのはかなり難しい。ましてや人見知りだから尚のことである。


「でもアタシ達一年は展示会だからそこまで気を張らなくてもいいんじゃない」

「そうだね……………」


 真白の学校の文化祭の出し物は、一年生はまずは文化祭の雰囲気を感じてもらう為展示会になっていて、二年生は飲食店、三年生は受験などがある為縁日や舞台劇をやる事になっている。


「けど、問題はそれだけじゃないんだよなぁー」

「あぁ〜…学校特定されてるもんね」


 真白はもう世界的に有名人だ。だから簡単に学校を特定されている。この学校は私立の進学校だが、探索者に理解のある学校である。だから入学する生徒の九割以上は探索者(フリーも含む)だ。

 それに夏休みの学校見学は例年の数倍の人数が来たらしい。それも全て真白の影響だろう。

 文化祭は学校行事で唯一、一般公開される行事だ。来場する数は想像以上になるだろう。


「当日休もうかなぁ……」

「仮病はダメだよ。腹括って堂々とすれば」

「佳織………四六時中知らない人からの視線を向けられる気分がどんなものか、想像つく?」

「……………」


 真白の地獄の文化祭まで後二週間、真白の悩みは続く。

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