第92話 結果報告
「実験結果の報告書がこちらです」
「確認する」
放課後、真白は学校から直接探索者協会に足を運んだ。以前の魔物実験の報告を桐島にする為である。
「————……確認した。…はぁ〜、良い事なのに、また忙しくなるのか」
「本当にすいません」
桐島は真白から渡された魔物実験の報告書に目を通した。しかし、今の桐島の顔は毎日遅くまで残業をしているリーマンの様な顔をしている。
「この結果なら、恐らく間違いなく大丈夫だろう。国際探索者協会に報告して、最後は人体での試験になる」
「はい。一応私の方でも【鑑定】で確認しましたので大丈夫だと思います」
真白の【鑑定】は、【真理の天眼】と併用して使っている為、普通の【鑑定】よりもより詳しく分かる。その為、真白は何も問題無いだろうと判断した。
「でだ。…この件を翠さんと天月さんに話したら、物凄く頭を抱えていたぞ」
「過ぎた事はいいじゃ無いですか。今回のは別に悪い話しでは無いですし」
「そうだがなぁ……龍也君はまた儲け話しがきたと言って喜んでたし……ハァー。本当なら、白岩さんは協会のお抱えだから委託するのは我々協会なのだがなぁー」
「すいません。昔の契約の時に、私の作ったアイテムや装備などの全ては『生産組合』を通して販売すると契約したので無理です」
「……儲かりもしない雑務をやらされてる気分だ」
本来なら真白は協会のお抱えな為、製作や開発した物は協会に委託販売するのだが、フリーの探索者の時に、龍也との契約で『生産組合』に全て委託する契約をしたのだ。正式に契約が結ばれている為協会は何も言えない。
「それと、人体試験の認可が降りた場合、『暁月の彗星』と『光の癒し』が率先して協力したいとの事だが、許可して良いか?」
「勿論です」
「分かった。認可が降りる事を期待しよう。…多分大丈夫だと思うがな」
こうして、欠損部位再生ポーションは国際探索者協会の認可待ちになった。桐島もモノがモノだけに早く事を進めた。本来なら探索者の製作した新薬は短くて半年、長くて二年は認可待ちになるのだが、国際探索者協会も各国の探索者達が身体の一部が欠損して引退することを問題視している為か最優先で協議するとの事らしい。
「それで、このポーションの
「Aランクなら安定してそこそこの量産は可能です。Sランクだと量産は厳しいですね。SSランクは無理をすればできるかものレベルです。……そして、…SSSに関しては現状ではほぼ不可能かなと」
「そうか……でも、Aランクを安定して出来るだけで十分だ。SSSランクの物は、個人でやってくれると助かる。……なるべく自重しながらな」
「はい」
会話からも分かる通り、アイテムにも
欠損部位再生ポーションにも、品質によって効果が違った。その効果は大まかに————
E…指先一本が治せる程度
D…肘、膝から先が治せる程度
C…手脚だけでなく、眼や耳なども治せる程度
B…一分以内であれば、生きてさえいればどん
な致命傷でも治せる程度
A…一ヶ月以内であれば、生きていれば致命傷
だけでなく、がんや脊髄なども完治させ
る程度
S…一年以内であれば、生きていれば致命傷だ
けでなく、がんや脊髄なども完治させる
程度
SS…十年以内であれば、生きていれば致命傷
だけでなく、がんや脊髄なども完治させ
る程度
SSS…不明
————この様になっている。
E〜Cのランクに関してはさほど難しくなさそうだが、Bランク以上になるとかなりの技量が必要だ。もう、普通の掛け算をするのではなく累乗をするかの様に難易度が上がっていく。
柊作と龍也はクランメンバーの超薬師達は全員最低でもCランクは作れる様になってもらうと豪語していた。
柊作もBランクは量産出来るらしく、Aランクは量産は無理だが、100本に1本は出来ると言っていた。
真白は【真理の天眼】がある為、Aランクの量産が可能なのだが、柊作は特殊スキルを持っていない。真白はそんな柊作の技量を本当に凄いと思っている。
「白岩さん、Aランクの物は一月にどれくらいの量を作れるのかね?」
「ん〜〜……多分、何も大事が無ければ3,000本作れます。大事があっても1,500本は作れます。『生産組合』には月に最低1,500本卸す話しを進めてます。細かいところはまだですが」
「分かった。そっちは任せる」
これで欠損部位再生ポーションの話しは終わった。
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