第91話 魔物実験
11月の最初の日曜日、真白は魔物実験をする為、東京の江戸川区にあるE級ダンジョンの入り口前に来ていた。
「矢口さん。本日はよろしくお願いしますします」
「こっちこそよろしくねー。でもー基本僕は付き添いだからー。何かあったら真白ちゃんの指示に従えーって、龍也から言われてるからー」
そこに、真白の付き添いする形で居るのが、『生産組合』の幹部の一人、
彼は龍也の幼馴染の調薬師で、その腕前はクランメンバー全員が認めている。
真白も調薬の技術に関しては、柊作は同等かそれ以上だと思うほどだ。
しかし、彼は幹部にもかかわらず、殆どの時間は生産ばかりで、幹部としての事務仕事などは緊急の時以外は殆どしない。そしてなにより、興味のない物には無関心で、興味のある物にはかなり積極的に動く変わり者だ。その証拠に、言葉の語尾が普段なら下がり気味なのに今は若干上擦っている。
「それでー、ここからどうするー」
「取り敢えず1階層に行きましょう。あそこはエイプ系モンスターだけなのでちょうど良いと思います」
「わかったー。じゃあ行こうかー。早くそのポーションの効果見てみたいよー」
今日の柊作はやけにご機嫌だ。それほど欠損部位再生ポーションが気になるのだろう。真白は柊作と共にダンジョン内に向かう。
————————
北江戸川ダンジョン1階層。周りは草や木のある森だ。
東京の江戸川区には二つのダンジョンが有り、北と南に一つずつある。
今真白が居る北のダンジョンはE級でこのダンジョンは今回のように魔物実験や初心者の練習、そして探索者になる為初めて足を踏み入れる用にある。逆に南のダンジョンはC級で殆ど中級探索者が利用しているダンジョンだ。
それは兎も角、真白は早速モンスターを探す為【探知】を使う。
「右に3体、左に5体ですね」
「それじゃあ右にしよー。数が多すぎても大変だからねー」
「分かりました」
暫く歩くと、目的のモンスターの姿が見えた。
「スモールエイプだねー。どうするー? あのモンスター仲間意識高いからー、下手したら近くに居る仲間呼ばれるよー」
「なら、呼ばれる前に眠らせましょう。私なら3匹程度簡単です」
「普通は眠せるのも難しいんだよー」
「対策はバッチリです」
そう言って真白は時空間リュックからある物を出した。
「真白ちゃーん。…それ何ー?」
「これはですね、着弾させたい所に完全無音で撃つグレネードランチャー改め、『サイレントランチャー』です! これに私特製の広範囲の強力な催眠ガスを詰め込んだ特殊弾でバッチリです」
「おぉーーー! 便利ーーー!」
真白は以前、獅子王のとの戦いで使ったグレネードランチャーもといレールランチャーのモデルはM79グレネードランチャーの単発式の形だったが、今回はMM1グレネードランチャーをモデルにした回転式の物である。
「では、撃ちますので、少し後ろに下がってください」
真白は約50m離れたスモールエイプ三体に向けてグレネードランチャーを構える。
––––.
ブァーーーーーアアア
真白が引き金引くと、音を一切立たずに催眠ガスが一気に広がり、スモールエイプを一瞬で眠らせた。
真白が使った催眠ガスは特別製で、有りとあらゆる方法で効果を上げた為、D級ダンジョンの上層の階層ボス程度なら簡単に眠らせる事が出来る。ただ、下手をしたら自爆しかねない代物で、あまり実用的じゃないと真白は思っている。
「さて、そろそろ近づいても大丈夫です」
「おー。簡単に一瞬で眠ったよー。マジで凄いねー、その催眠ガス弾ー」
「あまり実用的ではありませんけどね」
真白と柊作は眠ったスモールエイプの所まで近づく。そこには、瞼を閉じ、小さな寝息を立てたスモールエイプが三体居た。
「ねー真白ちゃーん。コイツらどれくらいで起きるのー?」
「中型モンスターで大体10〜20分くらいだったので、30〜40分くらいは目を覚さないかもしれませんね」
「分かったー。…因みにー、そのポーションはー、コイツらが寝てても使えるのー?」
「はい」
そして、真白と柊作はモンスターを使って実験を始める。
しかし、その実験内容は、言葉では言い表せない程であった。
それが、数日間も続いた。
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