第88話 『無効系』スキルの条件
「さてと、…以前から計画してたアレをやって作ってみるか」
真白はここ暫く生産活動に専念している。勿論ダンジョンに全く潜らなかった訳ではない。ただここ最近は主に生産活動に時間を使っているだけである。
「ここ最近【瘴気耐性】の付与のアイテムばかりだったから、テストも終わったし、本格的にアレを作ろう!」
ここ最近、真白の生産活動は主に【瘴気耐性】の付与アイテムの制作だった。
実はあの配信で、各方面から真白は何故瘴気の中で平気に探索活動出来るのかと疑問が上がった。それを桐島に問われた真白は、かなり渋い顔をしたが、流石に隠しきれないと思い白状した。
それは一月前に遡る————
————————
「それでは、聞かせてくれるかね?」
「……はい」
真白は桐島に【瘴気無効】の取得経緯について説明する。
スキルの系統には、『戦闘』『生産』『補助』『特殊』の四つの系統がある。
その内、『耐性系』は補助スキルで、『無効系』は特殊スキル系に分類される。しかし、探索者の中には耐性と無効は同じ補助系のスキルと勘違いされがちだが、『無効系』は取得条件が極めて困難な為に特殊スキル扱いになる。
探索者界隈では、『耐性系』のスキルは同じ状態異常を何回か受けて回復を繰り返せば得られると実証されている。しかし、『無効系』は色々と仮説はあるが確証と実証が全く無い。
「え〜…まず、【瘴気無効】の取得条件なのですが、……一応知っています」
「!? 本当かね!!」
それが事実なら大変喜ばしい。探索者界隈でなかなか攻略が進まないアンデット系ダンジョンの進捗が進み、更に運が良ければ今まで仮説でしかなかった『無効系』スキルの取得条件が実証されるかもしれない。
桐島は期待する様な目をしたが————
「あの、期待してる目をしてるところ悪いのですが、聞かない方が良いかもしれませんよ?」
「え? 何故かね?」
「いや、…その……」
「良いから聞かせてくれ」
真白は【瘴気無効】の取得条件を話した。それは、———
①体内魔力量が最低Sランクの平均量である
こと
②【瘴気耐性(極)】を取得してること
③【全状態異常無効】を取得してること
———以上のこの三つである。
「( ° д °)?…………………………………」
真白から聞かされた取得条件を聞き、桐島はモノ凄いアホ面を晒してた。もう色々と思考が停止してしまった。
取得条件のうち、①の魔力量は納得。②の【瘴気耐性(極)】もまぁ納得できる。しかし、(極)までスキルを上げるのはそう簡単にはいかない。そして③の【全状態異常無効】、桐島はこれに一番驚いた。
それもそうだ。【瘴気無効】だけでも凄いスキルなのに、【全状態異常無効】というスキルを取得してると言われたら誰だって驚く。
まず、【全状態異常無効】について説明すると、読んで字の如く全ての状態異常を全て無効にするスキルだ。
状態異常は『物理攻撃』と『魔法攻撃』を除く毒や麻痺などの特殊な攻撃を受けた状態である。状態異常には————
『毒』……少しずつ体力が無くなっていく。毒
の強さや種類によっては急激に体力
が無くなる
『麻痺』…一時的に行動不能になる
『病』……吐き気、嘔吐、風邪などの病気にな
り、徐々に衰弱していく
『石化』…身体の一部が石になり、徐々に全身
が石化していく
『魅了』…相手に誘惑され、操られてしまう『混乱』…判断力が無くなり、身体が思考と違
う行動をしてしまう
『恐怖』…体が竦み、動きが鈍くなり、他の状
態異常にもかかり易くなる
『睡眠』…集中力が無くなり、睡魔が襲う
『発狂』…精神に異常をきたし、可笑しな行動
をとる
————の9個ある。
状態異常とは、普通のポーションで治らないのを言う。RPGの様に火傷や凍傷はポーションで治る為これに当てはまらない。
真白曰く、この9種類の状態異常を全て『無効系』スキルにするとスキルが統合され、【全状態異常無効】を取得できる。
桐島がどういう経緯で全ての状態異常を無効にしたのかを訊いてみたら、真白は当時ただの興味本位で、どうやったら『無効系』スキルを取得できるかを自分の身体を使って研究してたら取得できた、とのことだ。
普通の人が聞いたら真白のことを狂人だと思うだろう。
後日、この件に関しては、龍也も知らなかったらしく、龍也、翠、相良の三人は三者三様の反応だった。マッドサイエンティストを見る様な驚きと困惑した龍也。危険な行いに怒り狂った翠。動揺と呆れで腰が抜けた相良。三人は真白の破天荒な行動に慣れたつもりだったが、陰でやっていた事は何も知らないのだ。
そして真白は、各状態異常を無効にするスキルの条件も話した。
①魔力量がAランクの平均以上あること
②各状態異常の耐性が『極』まである事
③状態異常をスキルで治療せず、自然回復をす
るのを何回も繰り返す
しかし、③はこの中では最も過酷と言える。何故なら状態異常はポーションで治せず自身の精神力で耐えなければいけないからだ。真白が上手くいったのは、化け物級の魔力量あってこそだ。
桐島はもう何も考えず、真白に言われた情報を資料に纏め国際探索者協会に発表し、各国の探索者協会に情報がいくようにしてもらったが、真白の様に自分の体を使って実験する狂人が出ない事を祈った。
勿論この情報も価値がある為、今回の調査依頼よりも10倍ちかくの報奨金がでた為、真白の懐は潤っている。しかし、高校生がそんな多額のお金を持っているのはアレなので、殆どのお金は真白の母が管理している。
今の真白は父と母よりも稼ぎがある為、将来は色々と贅沢させて親孝行できると思っているが、両親は真白が何をやらかすかで将来は不安しか無かった。
————————
と、こんな事があり、色々とあったが、瘴気に対しての対処法があるのは探索者としてはありがたい。桐島は瘴気を無効とまでは言わないが、耐性を付けるアイテムか装備を作ってくれないかお願いした。
桐島のお願いに真白は喜んで応じた。むしろ作る事によって、アンデット系ダンジョンの攻略が進めば、『亡者の邪魂』の収集も上がるため真白からしたら棚ぼただ。
アイテムは普段通り『生産組合』を通して販売することとなった。現在でも売り上げ伸びていて、龍也も大喜びである。
そんな真白が、以前から計画していたで新しい事をやるのだ。当然普通の生産活動であるはずが無い。
「頑張るぞ! 欠損部位再生ポーションの製作!!」
またとんでもない事をしでかす。
これにより、近い内に頭痛と胃痛になる三人と懐が潤い喜ぶ一人が出るのだった。
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