第48話  探索者登録

 桐島に公表する前に探索者登録をしてくれとの頼みに了承した真白。やはり真白の戦力は協会としてもしっかり把握しておきたく、フリーの探索者にしておく事はできないらしい。

  しかし、意外だったのが、協会が探索者に出す依頼を任意にしてくれた事だ。

 探索者は、上位のランクや実績を積むと、協会の依頼をなるべく受ける様に頼まれる。しかし、真白の対してはそんな事は無く、気が向いたらやってほしいぐらいらしい。どうやら、協会の都合で登録させる為、依頼の受注は任意にしたらしい。真白にとって、それは物凄く有り難かった。


「では、白岩さんには登録するのに申請用紙を書いてほしいのだが、……生産職が戦闘する事が異例なのでどうするか迷ったが、国際探査者協会と話し合った結果、戦闘部門に登録してもらいたい」


 探索者登録の生産部門と戦闘部門の違いは、生産職か戦闘職かの違いだけでは無い。

 生産職の場合、登録カードには、『名前』、『ジョブ』、『経歴』が登録される。

 しかし、戦闘職の場合、『名前』、『ジョブ』、『経歴』だけでは無く、もう一つ探索者の『ランク』が登録される。

 どうやら『ランク』の以外は共通だから戦闘職に登録でいい、との話になったらしい。これなら、無駄にカードを2つ持ち歩く事がなくて楽だろうとの事だ。真白もそれに賛成した。


「けれど、……その…実は、ややこしい事があってな………」

「どうしたんですか? 桐島さんにしては、歯切れが悪いですね」


 龍也が桐島の言葉に疑問を持つ。


「…あ〜。…これが一番の問題なんだが、…白岩さんのランクについてなんだ……」

「「「あ〜〜〜…」」」

「?」


 桐島の言葉に、龍也達3人は理解した。ただ真白だけはよくわかってないみたいだ。


「どうしたんですか? 登録したら、一番下のEランクから初めるんですよね?」

「…真白、あなた解ってて言ってるの?」

「ましろちゃん、……Eランクのソロ探索者が深層で戦うと思う?」

「………………………………」


 真白もなんとなく理解した。つまり、探索者としての能力が高すぎて、困っている事に。


「国際探索者協会としても、正当に評価して、白岩さんはSSSランクとして充分な実力と貢献があると大半の国が賛成しているが、一部の大国が納得してないんだ。……特に、アメリカと中国がな」

「…なるほど、だいたい話しが読めました」


 よは、真白の様な小娘がSSSランクになるのが気に入らないらしい。

 アメリカは、ダンジョン大国の一つで、完全実力主義の国だ。だから戦闘職優遇の考えが強く、完全実力主義の国なのに、自国にSSSランクの探索者が居ない為、日本の様な島国にSSSランクの探索者、しかも生産職の錬金術師がなるのが我慢ならないのだろう。

 中国は、国土の割にはダンジョンの数が少なく、ランクの高いダンジョンと実力が高い探索者が少ない為、ダンジョン資源が少ない。だから他国からの輸入頼りになり、そのせいで国の税金など価格が高く経済面で苦しい。だから近くの島国の日本が資源が潤うかもと思って気に入らないのだろ。


「くだらない理由ですね?」

「確かにそうなんだが、大半の国は賛成しているから、SSSランクにする事はできたが。だが、中国はともかくアメリカは大国で完全実力主義なだけあって、探索者の質も全体的に高いから、あちらの発言は無碍にはできない」


 協会で、そう言う話しがある事は予想はできなかった。真白はてっきりEランクから初めるのだとばかり思っていた。


「しかし、賛成したくれた各国の探索者協会の方々の他に、探索者の中でもが君を推してくれる。だからしばらく時間は掛かるが、その人の推薦の話をすればなんとかなるかもしれない」

「……話しはわかりました。……しかし、協会の人でなく、探索者で大きな発言力が有る人はそんなに居ませんよね? それこそ…………SSSランクの人とかでないと」

「………………」

「それと会長さん。……この部屋に来てからずっと気になってる事があるんですけど」

「ん? なんだね」

「真白、なんかあるの?」

「どうしたの、ましろちゃん?」

「白ちゃん、ここには何も変わった物はないぞ」


 翠に相良、龍也も真白の気になる事がわからない。そして、真白は桐島に気になってる事を言う。


「隣りの部屋で、気配を完全に消して盗み聞きしている人は誰ですか?」

「ッ!!」

「「「え!?」」」


 桐島はすごく驚いた顔をした。まさかバレてるとは思わなかったのだろう。

 3人も盗み聞きされてると真白が言って驚いている。


 ——ガチャ


 真白の発言で、隣りの部屋に繋がっている扉が開かれた。


「No way,I didn't think I was found out(まさか、バレてるとは思わなかったわ).」


 隣りの部屋の扉が開いたら、長いブロンドの髪に蒼眼の目の女性が入って来た。見た目20代前半だが、しかし、彼女は実年齢は30代だ。


「「「「!!」」」」


 その女性の登場に桐島以外が物凄く驚いた。なんせ彼女は、———


「 Nice to meet you, “White Alchemist”(初めまして、『白の錬金術師』).My name is Lucy Morris(私の名前はルーシー・モリス). SSS rank seeker,“Brilliant Witch”……I’m counting on you(SSSランク探索者、『絢爛の魔女』よ……今後ともよろしく)!」


 ———世界で3人しか居ないSSSランクの中の1人、…『絢爛の魔女』、ルーシー・モリスだった。

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