第40話 邪魂シリーズ
真白は上空100mを飛びながら海老名ダンジョンに真っ直ぐ向かってる。
遠目で見ると、まだモンスターは溢れているようだ。真白は速度を上げ目的地に急ぐ。
「お〜…。これは時間が掛かるかな」
空から地上にいるモンスターの数を見ながら呟く。その数は約10万以上いる。しかもまだまだダンジョンから溢れてる為、かなりの長期戦になるかもしれない。
「取り敢えずまずは降りないと。あいつら邪魔だからどうにかしないとね。すぅ〜…『グラビティプレス』! 『ファイアーレイン』!」
真白はダンジョンを中心に半径500m以内のモンスターを重力で押し潰し、その上から火の雨を降らせて倒していく。見た限りレイドボスは見当たらず、階層ボスがちらほらといるぐらいな為、一般モンスターならこれくらいなら直ぐ倒せる。
10〜20秒で大体倒しきり地上に降りる。しかし本番はこれからだ。まだまだダンジョンからモンスターが溢れてくる、それに真白の強い魔力で遠くからもモンスターが集まるだろう。
だが、それも全て計画通り。
「植物型のモンスターは火に弱く、しかも今は周りはモンスターに囲まれている。……やっぱり今回は、この子が最適!」
真白がベルトポーチから取り出したのは、瘴気が滲み出てる漆黒の水晶だった。そして、その水晶には《6》の数字が書かれている。
「さぁ、出番だよ。…邪魂シリーズ、No.6! 解放!!」
真白が水晶を手前に翳すと、滲み出てる瘴気が大量に溢れ出て、やがてそれが形となり、姿を現す。真白の前には、黒い瘴気を身体に纏い、長身の体躯で鬼の様な鋭い眼光をしている、黒く長い髪を後ろに纏めて下ろし、腰には黒い炎で燃えている鞘に収まった刀を持った侍が立っていた。
「
————————
場所は変わって、対策本部の仮設テント。
「龍也! 何アレ!?」
「石井君。…あれが、ましろちゃんの奥の手なの? な、なんか、禍々しいというか……」
「……取り敢えず龍也君、…疲れてるところで悪いが、説明を頼む。彼女の事は今回の件が終わったら訊く」
3人とも気になってしょうがないみたいだ。
「あれは、白ちゃんの奥の手の……まぁ、使い
魔みたいなものですかね。…邪魂シリーズて命名してます」
車椅子に座った龍也が説明し始める。
「邪魂シリーズは、白ちゃんが自身の手で造った人? 魔物? みたいなものですかね。簡単にまとめるなら、ホムンクルスです」
龍也が邪魂シリーズについて簡単にまとめて言った。つまり真白の手によって造られたホムンクルスだと。
「ま、真白が造った? あれを!?」
「私達、ましろちゃんから何も聞いていないわよ?」
「俺と白ちゃんで秘密にしてましたから。……危険過ぎるので」
龍也は、過去に真白に見せてもらったあの映像を思い出す。
「邪魂シリーズで俺が知っているのは二体います。…けど、今白ちゃんが解放したのは知りません。No.6と言ってたので、おそらくあれからまた増やしたんだと思います。…もしかしたら、まだ他にもいるかもしれないですね」
「とにかく、あれは真白が造ったてことでいいのね。……で、どういう経緯で造る事になったの?」
翠が事の経緯を問う。
「あー、翠ちゃん…青木ヶ原ダンジョンと恐山ダンジョンのモンスター知ってるでしょ?」
「あぁ〜、どっちもアンデット系ばっかのモンスターしか出ないダンジョンね。それがどうかしたの?」
「…ほら、偶にだけど、階層ボス倒すと、よくわからないドロップ品が出てたの覚えてる?」
「…あぁー。あの鑑定してもわからない黒い球のこと?」
「そうそれ、…それなんだけど、白ちゃんに鑑定してもらったんだ。あのスキルと併用して解ったらしい。……あのドロップ品は『亡者の邪魂』て言うらしい。でも、詳しい事は解らず、ただ、『死者の怨念や恨みなどの邪念が魂の形をした物』てしか説明がなかったみたいだ」
「随分大雑把ね」
「まぁな。…で、ここからが本題なんだが、実は、そのドロップ品を白ちゃんがかなり欲しがったんだよ」
「……何故?」
「白ちゃん曰く、『これは魂その物だと思うんですよ。物騒な物そうですけど、よは、これは生きている生物の魂です』…なんだと。…それで訊いたんだ。それで何をするのかを……」
「…真白はなんて言ったの?」
「…メイドを造りたかったらしい」
「「「「「「「「…はっ?」」」」」」」」
龍也は全員の反応を見て、『うん、その気持ちわかる』と思った。
「『生きている魂なら身体を与えて、定着させて、スキルを付与すればできるはず』、なんて事言ったのよ。メイドなのは、お手伝いや身の回りの世話をしてくれるなら、メイドがいいとか言ってた。……だけど、失敗したらしい」
「色々突っ込みたいけど……何故かしら?」
「あれは正しく邪魂だ。身体を造りスキルを付与し、魂を定着させるまでは良かったらしい。…だが、定着した瞬間、襲って来たらしい。まるでモンスターみたいに」
「もしかして、邪魂は怨念などの魂だから、身体を持っても襲われると…」
「でも、……アレはましろちゃんを襲ってないわよ?」
「それは状態異常系に似たスキルを使っているらしいです。【従属化】て言うスキルらしい。けど、白ちゃん以外は襲われるみたいです」
そして、龍也はここから更に詳しく説明する。
「それで、ちょうど白ちゃんは当時、下層で行き詰まってたらしくて、だったら戦ってくれる駒を造ろうと考えたらしい」
「それがアレ」
「製作工程は詳しくは知らんが、どうやら造るのは、難しいみたいです。成功確率は1%以下らしい。……邪魂の研究してたら、偶然できたらしいですよ」
「偶然であんなのが造れるの?」
「ましろちゃん…なんか悪い物に手を染めたのかしら?」
「自分は説明の半分も理解できん…」
翠と相良は真白が影でやってる事に理解が追いつかない。桐島に限っては真白を知らないから全くわからない。
そんな3人に龍也が追い討ちする様な言葉を言う。
「そして、本当に怖いのは此処からです」
「「「え?」」」
「白ちゃんも流石にこれはヤバいと思ったらしく、俺に相談しに来たんですよ。…その時撮った映像を見て、口止めされました。だからこの後始まるのは、————」
龍也がこの後何が起こるのかを、予言するような口振で言う。
「———圧倒的な力による……一方的な虐殺ですよ」
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