第41話  黒炎瘴獄魔刀侍

こくえんしょうごくとうさむらい!」


 真白が解放した邪魂シリーズのNo.6の個体、黒炎瘴獄魔刀侍。その禍々しさと圧倒的な瘴気のオーラに、モンスターは本能で恐怖を感じた。


って」


 真白が命令する。


 そして、結界の中全体に黒い炎がモンスターを逃さないように囲った。それは正に牢獄の様に周り全てが黒炎で囲まれている。


『キュー……』

『シャア〜………』

『ギャア……ァァ…』


 黒炎の牢獄が張られた瞬間、一般モンスターの殆どが毒でも飲んだかの様に倒れ、しかも突如モンスターの身体が黒い炎で燃え上がり、次第に灰も残らず無くなった。

 これは、魔刀侍(略:黒炎瘴獄魔刀侍)の特殊スキル【黒炎牢】だ。効果は、超広範囲に黒炎の牢獄を展開し、中にいる相手を黒炎の牢獄から発生する瘴気で身体を弱体化させ、一定以下まで弱ると、黒い炎で焼死させる。

 魔刀侍は、このスキルを戦闘が終わるまで、常識発動しっぱなしなので、逃れるには魔刀侍を倒すしかない。


『シャア〜〜〜〜!』


 運良く生きてるモンスターが魔刀侍に襲い掛かる。しかし魔刀侍は動かない。そして攻撃をくらう。


 ザシュ!


 魔刀侍の身体は、肩から腹部まで大きな切り傷を負った。

 だか、それは、無意味な事だった。


『ァッアア〜〜〜ァァァ〜………』


 周りの瘴気が魔刀侍を復活させる。これは、邪魂シリーズの共通スキル【瘴気回復】だ。文字通り、瘴気がある限り永遠と回復し続けるスキルだ。

 モンスターたちは、何度も何度も魔刀侍を攻撃するが、回復し続ける。けれど、モンスターたちは瘴気のせいで徐々に弱り燃えて消えていく。

 魔刀侍を倒すには、魂源を、魂源にして破壊しなければならない。その魂源の半分の一つは、魔刀侍の心臓部にある。けど、もう半分は別の場所にある為、いくら倒しても無意味だ。


 しかし、まだダンジョンから溢れてるモンスターや結界方面にいたモンスターたちが集まってくる。全方位囲まれ、なるべく早く終息させたい真白が魔刀侍に次の指示を出した。


「第二段階に移行して」


 その言葉で、魔刀侍は腰の刀を抜いた。その刀身は黒い炎で燃えており、周りを圧倒する程の瘴気を放っている。


「斬り殺して」


 真白の命令で、近づいてくるモンスターを魔刀侍は刀で斬りつける。そして、傷から炎が燃え上がり燃焼する。さらに驚く事に、空中に半透明の刃が無数に現れて、モンスターを斬りつけて、黒い炎で燃えて消えた。

 これは、魔刀侍のもう一つの特殊スキル【無幻刀】である。このスキルは、【黒炎牢】の範囲内にいる相手を無限にも等しい数の半透明の刃で斬りつけ、斬られた相手を焼死させるスキルだ。

 この第二段階は、【黒炎牢】の弱体化攻撃に【無幻刀】の直接攻撃が加わった形態だ。これで殲滅速度は何倍にもなる。どれだけ離れていようと、【黒炎牢】の中にいる限り逃げ場は何処にも無い。

 1万、2万、3万……と、たった1、2分で5万近く倒していく。正に一方的な虐殺だ。

 この魔刀には残りの半分の魂源がある。だからこの魔刀も壊れても直り続ける。

 真白が魔刀侍を解放してから約15分、ダンジョンのスタンピードによる魔力の暴走も治まり始めた。


「さて、そろそろ仕上げに入ろうかな。…魔刀侍、最終段階に移行して」


 真白がその命令すると、魔刀侍の本体と魔刀の瘴気が一つになるように纏う。そして、瘴気の量がさらに増し、やがて魔刀侍の身体を覆う瘴気がどんどん濃くなっていく。

 そして、瘴気を溜め込んだ魔刀侍がここで初めて刀を構える。


「『フライ』……。殺し尽くして」


 真白は、邪魔にならない様に数メートル程空中に飛び、最後の命令をした。

 そして、今まで動かなかった魔刀侍が相手に斬り掛かる。見えない速さで縦横無尽に動く魔刀侍が、横一閃に縦一閃、さらに弧を描くように、速くて鋭い刃でモンスターに斬り掛かっていく。

 魔刀侍の最終段階は、魔刀侍と魔刀の魂源を一つにし、瘴気の濃度を濃くして、弱体化の速度や回復速度、更に共通スキルの【瘴気強化】で、攻撃力とスキルの威力を強化し、殲滅速度を上げる。

 モンスターは、捉えられない速さで動く魔刀侍に斬りころされたり、早まった弱体化で燃え上がったり、半透明の刃で斬られたりと、なす術なくどんどん少なくなっていく。

 やがて、ダンジョンからモンスターが溢れてこなくなり、残ったモンスターも魔刀侍によって倒された。


「戻って。…封印!」


 魔刀侍は役目を終え、真白の持ってる水晶に戻った。

 こうして、SS級ダンジョンのスタンピードは、真白の登場から1時間も立たず終息した。


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 今回出てきた『黒炎瘴獄魔刀侍』は、某漫画雑誌で連載されている作品からアイデアをもらってます。

 その作品は初連載の時からずっと好きだった為、この作品を書くときに、何処かで必ず入れると決めていました。


 邪魂シリーズは、まだまだ居ますので、今後出てくるのを楽しみにしていてください。

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