第36話 龍也の宣言
場所は、変わって会見場。
「やっぱり観ているか…。このタイミングは狙ったのかい? 白ちゃん?」
「「っ!!」」
翠と相良も驚いて勢いよく立ち上がった。
『なんか理不尽な非難を言う
「ぷっ!」
龍也は必死で笑いを堪えた。
「え? えっ! 真白!?」
「ましろちゃん! 何で電話!?」
流石の報道陣も主要クランのトップの様子がおかしいので、質問できない。一人訳の分からない桐島は蚊帳の外だ。
『あ、翠さんと天月さん。そちらの方も大変みたいですね』
「いや、そんな事より! あなた何故いきなり電話してきてるのよ!?」
「ましろちゃん、…配信は観てるんでしょ。なのに何故電話したの?」
二人は真白の電話に疑問を抱く。
『すいません。時間が無いので質問は後にしてください。…石井さん! 大至急お話しがあります! 電話のスピーカーはそのままで、周りにも聞こえるように!』
「おう。……すいません、ここから決して喋らない様に! …で、白ちゃん…話しって?」
『単刀直入に言います。石井さん、私の奥の手のあの子達を使います!』
「ッ! …理由は?」
『私の目で見た様子だと、あと2時間…いや、もしかしたら1時間くらいで結界は確実に崩壊します!』
「「「「「「「っ!?」」」」」」」
その場の者は息を呑んだ。
『私は今そちらに向かっていて、あと1時間以内で到着します。なので、私が着くまで結界から漏れるモンスターを倒して耐えて下さい!』
「ずいぶん早い到着だね。……でも、一つ質問いい? ご家族はこの事を?」
『ちゃんと話して来ました。必ず帰るって約束もしています』
「そうかい。わかった! できたらもっと速く来てくれ。それまでこちらは必ず耐える!」
『はい。お願いします!』
と、真白と龍也の二人だけの話し合いに乱入する者がいた。
「ちょっと待ちなさい! また二人だけでかってに決めないでちょうだい!」
「石井君! ましろちゃん! 私達にも詳しく話しをしてちょうだい!」
翠と相良の二人は、真白と龍也の話し合いがよく分からず我慢できない様だ。
「あー、単刀直入に言う! このスタンピードを終息させる事ができる探索者が来る! それまで俺たちは何としてでも結界の崩壊を阻止する!」
「「「「「「えっ!?」」」」」」
この場の者達だけでなくテレビの視聴者や配信を観てる人々も思っただろう。『何を言ってるんだ、頭大丈夫か?』と、そんな事を龍也が言うと報道陣側から———
「石井さん! 貴方は自分が何を言っているのかわかってるんですか!?」
「えぇ。勿論わかってます! 事実を言っただけです」
「先程は無理な様な事を言っておられましたよね!」
「私はその様な事は言ってません。ただ自分達『生産組合』は現状物資の支援しかできないだけです。と、言いました」
「それは詭弁では無いのですか?」
報道陣達は今、龍也にだけに理不尽な非難や疑惑的の声を上げる。けど、その声は報道陣だけでは無い。
「龍也君。よく分からんが、今こんな状況で嘘はよく無いぞ!」
「そうよ石井君、何の根拠も無いじゃない!」
「それにどうして真白が出て来るの!?」
桐島に相良、翠も龍也を疑う目をしていた。しかし、龍也は堂々と報道陣だけでなくカメラの向こう側の視聴者達にも言った。
「いや! 必ず終息できます! 自分は確信してます!」
「石井龍也さん、貴方は自信あり気に言っていますが、第一にまず、貴方が『白』と呼ぶ良く分からない探索者なんかにどうにかできるんですか? まずそこが胡散臭い話しです!」
「………オィ! さっきから黙って聞いてやってるのに……そのふざけた口で発言してんじゃネェぞ、テメェら!!」
「「「「「「「っ(ヒィ)!」」」」」」」
報道陣のその質問に、龍也がドスの効いた声で、今まで誰にも見せた事がない鬼の様な顔になった。勿論翠と相良、それに桐島ですら見た事がない。この場にいる誰もが龍也にビビった。
「よく聴けよテメェら、俺の前で彼女に悪意ある態度や言葉を発してみやがれ! …下手したら『生産組合』全体が敵になるぞ」
皆が悟った。これ
「…もう時間が無いからこれ以上は時間の無駄だ! 翠ちゃん、そっちは結界から漏れたモンスターの対処を! 天月さん、そちらは結界の崩壊を阻止する為に結界の強度を強くして下さい! 桐島さん、あなたもできる限り戦闘員を集めてモンスターの対処と全体の指揮を! 説明は事が終わってからだ!!」
龍也は勝手に話しを打ち切った。
「……あと、そこの記者」
「ヒィィ…は、はい!」
「彼女の事を、よく分からないやら胡散臭いとか言いやがったな。……その言葉、後で後悔するぞ」
そして最後に龍也はこう宣言した。
「この場にいる者! そしてこの会見をテレビや配信で観ている視聴者達! この後起こる戦いをよく見ておけ! 本当の強者の姿という者を……いや、史上最強の錬金術師の姿を!!」
————————
「石井さん! 電話切れて無いですよ! 恥ずかしいじゃないですか!」
電話越しで聞いていた真白は羞恥な心ではあったが、急いで現地へ向かうのであった。
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