第31話 賢者の手袋
龍也との話しをした翌日、新装備の製作をする。
真白は、自分の戦闘動画を観ていて、過去の戦闘も振り返ってみた。そして、自分には魔法攻撃手段が少ないという欠点がある。今までは、魔力銃を使った魔法攻撃と周りの被害なんて関係なく力技でなんとしてきた。しかし、深層に入ってからは、少しずつ辛くなってきている。
この間の動画でも、獅子王の暴風壁を真白は真上まで飛んで攻撃したが、本来なら魔法攻撃で暴風壁を突き破るのが正解なのだろう。
それに、この先物理攻撃がほとんど効かないモンスターも多く出てくるだろう。だから真白は、直ぐにでも多くの魔法攻撃手段を得る事を考えた。
しかし、ここでまた、真白の厨二の性格が出ることになる。
「杖は手が塞がるから、やっぱり代わりになるのだと、グローブだよね!」
兄のマンガで、錬金術師が題材で、真白の推しキャラ。名セリフが『うろたえるな! 思考を止めるな! 生きる事をあきらめるな!!』の某錬金術師の大佐さんの手袋がモデルだ。
「ふっふっ〜。今回は全て私一人で作ろう。手袋ぐらいは作れるしね! 布はこの間のシルキースパイダーとミスリル糸を結合したシルクの布を使ってシルク手袋にしよう! 私の今の装備は白が目立ち過ぎるから黒の生地にして!」
早速真白は作業に入る。まず型紙作りから入り、必要最低限の量の布を用意して、布に印をつけて裁断したりと作業を続ける。
そして、1、2時間後、一対のグローブが完成した。今回は見た目にも拘っていたため、時間が掛かった。
続いて、グローブの手の甲に刻印を刻む。この工程はさほど難しく無いため、直ぐに終わらせる。
真白は【刻印】でクリスタルコアに刻んだ刻印を刻む。グローブには白い線で刻まれた刻印がしっかり目立つ。
そして最後に、この装備の製作で最も重要で難しい工程である。グローブとクリスタルコアの合成だ。
今回も【紋章術】を使うため、紋章台に獅子王の血のインクで魔法陣を描いた。魔法陣は昨日土台の魔石を合成させた時の陣と同じだ。左右の円にそれぞれの素材を置き、集中する。
「【真理の天眼】、【錬金術(合成)】!」
真白はクリスタルコアがグローブの刻印を通して1つとなる様に魔力を流す。魔法陣の輝きが凄いが、やがて少しずつ治っていく。そして魔法陣が消え、紋章台の上には、手の甲にクリスタルコアと同じ各属性の色が白い線で繋がっていて、艶のある一対の黒いグローブがあった。
「完成! この装備は
[賢者の手袋]
装備ランク:SSS
ス キ ル:【魔力増加】【全属性魔法】
【全複合属性魔法】【透明化】
【魔力強化・極】【斬撃耐性】
【魔法創作】
詳 細:高品質の布で作ったグローブに最高位の触媒を合成させて造られており、基本属性魔法と複合属性魔法を全て使える様になっている。また、【魔力増加】で自身の魔力の増加、【魔力強化・極】で魔攻と魔防の力が上がっている。さらに、【魔法創作】により、自分の想像した魔法の技を創り出す事ができる。魔法職の探索者にとって最高の装備である。
製 作 者:白岩 真白
真白は今、この世の魔法職が欲しがる装備を作ってしまった。
【全属性魔法】と【全複合属性魔法】のスキルは確実にクリスタルコアの影響だろう。【透明化】はグローブに使った布の既存スキルだ。その他のスキルは真白が追加で付与したスキルだ。【魔力増加】はとても使えるスキルであったため、【模倣】スキルと【付与】を併用し、追加した。因みに、スキルオーブにも良く使うスキルである。残りのスキルもスキルオーブを触媒にして付与したスキルである。ただ、【魔力強化】が極までいったのが良い意味で予想外だった。
だが、【魔法創作】は何故あるのかはわからない。けれど、今の真白にとってはどうでも良かった。
「ふ、ふっふっふっ! 私は、私は遂に凄い装備を造ってしまった!! 嗚呼、この達成感が最高! さっそくあす———」
バン!
「お姉ちゃん、うるさいよ! あと、お母さんが夕飯なのにこなくて、すごい機嫌が悪くなってるよ!」
「……はい。……直ぐに行きます」
どうやら、かなり時間が経っていたらしい。余韻に浸る事なく、真白は今日の作業を終えてリビングに向かうのだった。
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