第29話 クリスタルコア
場所は再び工房へ戻る。
真白の手元にはSSSランク魔石がある。
魔石の属性はモンスターの住処の環境によって違うと言われている。暑いエリアなら火属性、湖や海エリアなら水属性など、それぞれの階層の環境で魔石が変わると仮説がある。
獅子王の魔石は偶然にも無属性だった。恐らくレイドボスは特殊エリアだから無属性だったのだろう。
そして、今から行なう作業はその魔石に【刻印】スキルを使う。
【刻印】スキルとは、【紋章術】と違い、イメージした刻印をアイテムや装備に刻む。よく使われるやり方は、装備に刻印を刻み魔石を嵌めて魔石の属性に合わした魔法を最小限の魔力で使えたり、威力を上げたりする。【紋章術】よりもメジャーでよく使われるスキルだ。
今から真白がやるのは、魔石の中央に刻印を刻み、6つの各属性の魔石を1つずつ【紋章術】と【錬金術(合成)】で嵌め込み一体化させるというかなり特殊で難しい方法だ。
「まず土台の魔石だね、……SSSランクの魔石、一発勝負。……ふぅ〜〜、…よし!」
真白は、【錬金術】で魔石を圧縮して形を変形させていく。品質が高いため魔力抵抗力がすごい。けど、少しずつゆっくり変形させる。そして、約30分、ソフトボールぐらいの大きさの透き通った球体な魔石ができた。
「…ハァ…ハァ…、で、できた〜」
30分近く、集中してぶっ通し作業してたため、流石に疲れた真白は20〜30分休憩する。これからまた、更に大変な工程がある為、少しでも体力は欲しい。
そして、休憩後、土台の魔石に刻印を刻む作業を始める。
「まずは刻印の形から……魔石の中央に、♢の形とその中に十字の対角線、頂点4つに魔石を嵌め込む穴、更にそれ全体を囲む大きな♢で上下に2つの穴をイメージして、……【刻印】」
土台の魔石の中央に、光り輝く魔力が、真白のイメージする形になるように、細い線と穴を作る。それはまるで、ガラス玉の中に絵が描かれている工芸品のようだ。
次は魔石を穴に1つずつ嵌め込み合成する作業だが、ここまでの作業で、真白の魔力はかなり消耗している。魔力回復ポーションはすでに20本近く使い、腹の中も限界だ。
現在の時間は、午後5時半。今日の作業は終えて、明日に持ち越す。
翌日、午前8時。今日は早起きして、昨日の続きをする。
まずは、紋章術の魔法陣を描く台(※以降:紋章台)に、♢の左右の頂点に2つの円の中心がそれぞれ重なる様に描き、空白の円の中に魔法陣ぽく五芒星を描いて、全体を円で囲む。
そして、右の円には土台の魔石、左の円には昨日作った火属性の魔石を置き、合成を始める。
「【真理の天眼】、【錬金術(合成)】!」
二つのスキルを併用して使う。【真理の天眼】を使っても気が抜けない作業だ。
真白は、内側の4つあるうちの1つの魔石の穴に火属性の魔石を嵌め込めて合成するイメージで魔力を流す。そして数分後、———
「ふぅ〜、できた。…残りは5つ、今のでコツは掴めたし、この調子でならいける」
———見事成功させ、残りの魔石も同じ方法で嵌め込み合成する。内側の穴には、火、水、風、土の4つを、外側の穴には、光と闇の2つを嵌め込んだ。1つ嵌め込むのに一本の魔力回復ポーションを使うほどの重労働だった。
けど、真白の目は疲れよりも達成感の感情が窺える。
「やっと終わった〜! 私の中で過去一番の触媒作品! その名は、『クリスタルコア』と命名しよう! ……【鑑定】」
[クリスタルコア]
素材ランク:SSS
既存スキル:なし
詳 細:高品質の魔石を大量に使い、土台となる無属性魔石に他6つの基本属性の魔石が嵌め込まれている。魔力の流れ、純度、品質が全て完璧に合成されている。触媒の素材として、この世では間違いなく最上位クラスの素材。
製 作 者:白岩 真白
鑑定結果を見ていて、自分でも文句なく良い素材だと思う。真白は心の中で自画自賛した。
早速この素材の写真と鑑定結果を転送陣で龍也に送った。そして、直ぐに真白に電話がきて、『ちょっと直接見せてくれ!』と、頼まれた。本当はこれを使って、今から新装備を造る予定だったが、午後は『生産組合』に出向いて、龍也に会うことにする。
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