第28話 紋章術
翌日、真白宅の工房にて。
「さてと、昨日散々練習と実験も済んだから、始めるようか」
現在の時間は、午前9時を回った頃、真白は、少し早めに作業をする。
作業台の上には、獅子王の血液、各属性の魔石が複数個とSSSランクの魔石が用意してある。そして作業台の隣りには、【紋章術】に使う魔法陣を描く台が置かれている。
真白が今からやる作業は魔石の結合だ。しかし、今回は普通の結合ではなく、【紋章術】を使う結合だ。
【紋章術】とは、その名の通り、魔法陣の紋章を描いて、触媒液という素材でアイテムに合成や結合などをし易くするスキルだ。
ただし、真白はこのスキルをあまり使わない。それは、条件が非常に面倒だからだ。
魔法陣を描く時は———
触媒液は魔力を含んでいること。
アイテムは触媒液より魔力が少ないこと。
魔法陣は明確な意味と形をイメージして、魔力を込めて描くこと。
———と、条件がややこしくて面倒なのだ。だから真白は、量産アイテムや急ぎの製作のときは使わない。しかし、翠の新装備の製作のときは使った。
【紋章術】のメリットは、付与や結合が成功した時、確実に同等以上の性能になる。真白は【真理の天眼】が有るためあまり意味ないが、その2つのスキルを併用すると汎用性があり、スキルや装備の性能が2、3倍になる。
「まず基本属性の6つ(無属性以外)から手をつけますか。…取り敢えず、六芒星を円で囲って、頂点に少し小さめの円を6つ、それも更に円で囲んで…できた! まずは、火属性から…」
火属性のAランク魔石6つ用意して、小さめの円に1つずつ置き、魔法陣に魔力を流すと、魔法陣が光り出す。真白は、溢れ出る魔力を凝縮して、6つの魔石が丸く1つになる様にイメージしたら、———
「【真理の天眼】、【錬金術(結合)】!」
———光の輝きが増す。
光が収まると、消えた魔法陣の真ん中あたりに、パチンコ玉ほどの赤い魔石があった。
「…ふぅ〜、…取り敢えず、【鑑定】…よし、成功! SSランクの魔石だね! この調子で他の属性もやっていこう」
それから、水、風、土、光、闇の5つの属性のSSランク魔石を作った。
「はぁ〜。流石に疲れた。…休憩しよう」
現在時刻は午後1時前、昼の時間はとっくに過ぎていた。それだけ集中する作業だったということだ。
「ちょっとお腹空いたな。今日は家に私一人だし、…冷蔵庫に何かあるかな?」
真白は工房から家のキッチンに向かう。冷蔵庫と冷凍庫の中を漁っていると、パスタの冷凍食品を見つけた。
「あ、やった! 冷凍食品あるじゃん! これにしよう」
真白にとって、冷凍食品は最高の食品である。レンジで数分で温めて皿に移して食べるだけ。時間を無駄にしない食べ物だ。
真白はペペロンチーノの冷凍パスタをレンジで温めて、テーブルに着き食べる。皿を台所で洗い、水切りカゴに入れる。ここまでたったの30分弱。
これで真白は短時間で食事を終えてすぐ生産作業に戻れる。この後は最後の仕上げがある。
真白は工房に戻り、残り作業に取り掛かる。
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