第26話  真白の仮説(確信?)

「それで白ちゃん、白ちゃんの方はどうするの?」

「私はまず、素材の質と効果の研究ですかね。…まぁ、一つだけ困った物がありますが…」

「やっぱり、その魔石かい?」

「はい…」

「まぁ、そうだよな……SSSランクの魔石なんて、初めて見たぜ」


 真白と龍也は、そろって困った顔になった。過去に魔石のランクで確認されているのは、SSランクの魔石だけである。それが一つ上のSSSランクである。ダンジョン関係の機関や組織にいる者のなら、のどから手が出る程欲しがる代物である。


「絶対これ、ヤバイやつだよな…」

「絶対にやばいやつです…」

「「……はぁー」」


 二人揃って溜め息した出なかった。


「…石井さん、ほんと今更言うのもなんですけど、これは前から私が仮説というか、ほぼ確信だと思ってる事なんですけど、……聴いてくれます?」

「…おぅ、話してくれ」


 真白は真面目な顔で話し始める。


「私はよく、階層ボスの死体をそのまま収集してるじゃないですか。それでいつも解体していて、一時期思った事があるんです。——モンスターの魔石の質について」

「おっと、…白ちゃんがまたヤバそうな話しをしだしたな」

「…それでですね、過去に色々調べた事があるんです。魔石の質て、ダンジョンの下に行けば行くほど魔素が高くなるじゃないですか。学者も魔素の濃度が高くなるとモンスターも強くなると」

「あぁ、そう言われてるな」

「モンスターの魔石ドロップて、例えば下層だと、階層ボスはBランクがドロップするじゃないですか」

「あぁ。けど、それが普通だろ?」

「はい、普通です。でも、私からしたら何故? て感じなんです」

「……どう言うことだ?」

「私、階層ボスを毎回解体すると、AランクかSランクの魔石が手に入るんです」

「…………はい?」


 龍也はだんだんこの先の話しが読めてきた。それはつまり、———


「白ちゃんは、ドロップ品より解体で手に入れる魔石の方が質が高いと…」

「はい」

「…ちなみに、解体で同じかそれ以下が出た事は?」

「……一度も無いです」


 ———龍也も確信した。モンスターのドロップする魔石より、解体の魔石が質が高いと。けれど、死体をそのまま収集する探索者はほぼ居ないと言っていい。

 モンスターの死体は一定以下の外傷と内部を攻撃することで、収集できる。しかし、一定以下の外傷は基準が分かっておらず、内部を攻撃するにも、確実に超接近戦になり危険である。まして帰りは、余計な荷物になるため、進んでやる者など普通は居ない。いつもの事だが、真白がおかしいだけである。


「それとですね……」

「まだあるの?」

「はい。…先程下層のボスは解体するとAかSと言ったじゃないですか」

「あぁ、それがどうしたんだい?」

「私って、【真理の天眼】で魔力が見えるじゃないですか。それで見ると、大体モンスターの魔力残量が5割以上だとS、それ以下はAみたいなんです」

「…てことは、モンスターの魔力残量も関わっていると?」

「はい」


 龍也はもう何から突っ込んでいいのか分からなくなった。ただでさえ、獅子王の素材で頭がいっぱいだったのに、追い討ちをかけてこの超爆弾級の話しである。その顔はかなり疲れきっていた。


「じゃあ、今回の魔石は、深層のレイドボスだから、Aランクか極々稀に出るSランクの魔石がドロップするが、SSSランクなのは、外傷が一定以下で魔力残量が5割以上だったと」

「それしか無いですね」

「ちなみに、あの時獅子王を倒した時の魔力残量て、どのくらいだったんだ?」

「6割ぐらいありました」

「マジかよ!」

「はい。だから長期戦は不利と判断して、短期決戦にしたんです」

「正しい判断だ」


 もし、この事が世間にバレたら、真白の今後が危ぶまれる。

 魔石は現代の生活において重要だ。電気やガスなどの代わりになるエネルギーを生み出す物とされている。勿論、質が高ければ高い程、値が付く。

 真白が安定的に高品質の魔石を収集できると知られたら、絶対に真白を利用しようと考える輩が出てくる。


「(まぁ、白ちゃんは、利用される前に返り討ちにするだろうな)」


 龍也もさほど心配して無いが、それでも心配なのは変わらない。


「(この件は、翠ちゃんと天月さんの耳にも入れといた方がいいな)」


「白ちゃん、わかってると思うが、この事はここだけの話しにしてくれ。あと、これは翠ちゃんと天月さんにも話しておく」

「わかりました。…何から何まで本当にすいません」


 真白もどうやら察したらしい。

 兎にも角にも、この話しも終わり、解体作業も終え、真白は数日振りに帰宅した。

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