第25話 解体終了
7月の終わり、途中色々な事があったが、無事に獅子王の解体が終了した。
獅子王の素材は7割が真白、3割が『生産組合』に分配することになった。当初は8:2であったが、真白が先日の事で罪悪感があったので、7:3となった。また、『暁月の彗星』と『光の癒し』にも別にお礼をするつもりだ。
「いやー、流石レイドボス素材…品質が高いぜ」
「ですよね。解体中ずっと思ってましたので、今までで一番慎重にやりました」
「さて、これどうするかなあ?」
実は龍也は、先日の事で新しく就任した協会の会長との話しで、元々レイドボスの素材をその他の機関に割安で譲る事を考えていたが、迷惑料としてこちらで独占すると冗談混じりで言ったらしく、何故か通ってしまったらしい。協会内では、今回の事で相当追い込まれたみたいだと、語っていた。
「この大量の素材、どうしたらいいと思う? 白ちゃん?」
「ん〜。在庫で保管するかオークションで高値で売るかですかね」
「やっぱそれしかないかー」
今回の解体で得た素材はかなりの量だった。
⚫︎闇の暴風獅子王の毛皮
⚫︎闇の暴風獅子王の牙
⚫︎闇の暴風獅子王の爪
⚫︎闇の暴風獅子王の骨
⚫︎闇の暴風獅子王の血液
⚫︎魔石(1つ)
これらの素材が手に入った。この中で血液と魔石は真白にしか扱えると思えないので、必然的に真白の物になる。その他もいいのだが、レイドボス素材だけあって判断に困る。
質が高いのはいい事だが、高過ぎて生産者の技術が追いつかないと無駄になってしまう。だから龍也はかなり慎重になっている。
「なぁ、白ちゃんはこれらの素材、上手く扱える自信ある?」
「絶対とは言い切れませんが、無駄にすることは殆どないですね」
「…そっかー」
龍也には、その言葉だけで大体理解した。真白が素材を無駄にすることは殆どないと、言った時点で、『生産組合』の生産者たちには手にあまる代物だと。
龍也は、真白の生産職としての腕を誰よりも評価している。器用貧乏と言われている錬金術師だが、真白は、試行錯誤と独自の研究で得た知識、おかしな発想を努力で実現させてきた。だから、真白のアイテムの性能は独自の工夫により、本職に負けない程またはそれ以上と言ってもいい。
だから、余計にどう扱うか困る事になってしまう。例えオークションに出したとしても、買い取った人が上手く扱えるとは思えない。いや、十中八九失敗する。
それに、オークションに出したとしたら、他の所も欲しがる。しかし、手持ちは少ない。そしたら周りは、『一度収集できたのだから、もう一度、素材収集できるだろ』と、身勝手な事を言い出す輩もいるだろう。そして、それは真白にまた獅子王と戦えと言っていると同じだ。龍也は、それだけは何としても避けたい事だ。
一人で考えていると、———
「私に依頼して何か造るって手もありますけど?」
———真白から提案をしてきた。
「マジで?」
「はい」
その提案は龍也からしたら、願ったり叶ったりだ。むしろ貴重な素材が無駄にならなくて済んでいい事だらけだ。
けど、龍也も甘くはない。真白はこちらに気を遣って提案してきたのだと。いい提案だが、真白にはあまりメリットが無い。むしろ無理をさせるだけ、だから龍也は真白のその好意だけ受け取る事にする。
「せっかくの提案だがその好意だけ受け取るよ。…まっ、しばらく在庫として保管しておく」
「そうですか。わかりました」
お互いの考えは通じたのか、この話しはこれで終わった。
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