第24話  真白の策

「いいね、いいね! 早速その案を幹部役員と翠ちゃん、天月さんと話して、明日発表できるようにするよ!」

「はい。よろしくお願いします。……て、自分が言っといてなんですけど、本当に大丈夫ですかね?」

「いいの、いいの! 多分翠ちゃんも賛成してくれるぜ。いい加減俺らも探りを入れられるのにイライラしてたから。…それに、以前警告はしたからな」

「ですよね!」


 真白と龍也は、お互いあくどい笑みを浮かべる。やはりこの二人は、考えが似てる所が多々あるのだろう。




翌日



 真白の案はなんと大多数の人が賛成したらしい。翠もやる気を出したらしい。かなりストレスが溜まってったらしい。

 そして今日、『生産組合』がSNS、動画配信などのあらゆる方法で、告知した内容が———


『商品を一部、販売制限いたします。

 理由につきましては、以前会見でお話しした通り、まだ一部の者達が私達と関わりがある錬金術師についての情報公表の強要や探りを入れる行い、さらに迷惑行動が目立つため、以前も申し上げましたように、このようなお知らせを致しました。

 なお、以前の配信で警告しましたので、抗議や反論の言葉は一切受けつけません。これは、彼女と関わりがある者達との話し合いで、満場一致になりました。ご理解のほどよろしくお願いします』


 この龍也の告知により、大変な事になった。テレビのニュースで速報になり、クランハウス前には、数多くの人が集まり、さらにネット内でも所々炎上してるらしい。

 それと、身に覚えのある者達は、「今すぐ告知の内容を取り消すように」と早速抗議してきたが、生憎受け入れ無いと宣言したので、取り消す事はしない。

 『暁月の彗星』と『光の癒し』にも今回の『生産組合』の告知を取り止めるよう仲介を申し入れがきたが。生憎、翠や相良も腹を据えかねていたので突っぱねた。それに、自分達も話し合いをして、この案には賛成していた。自分達は、『生産組合』からこれからも商品を購入できるので、メリットしかない。

 身に覚えのある者、特に『協会』と『戦の剣』は大騒ぎを起こした。

 『協会』は、焦りを持ったのか、協会内の過激派がダンジョン入場規制をするぞと脅してきたが、真白と龍也は当然予想できていたので、次の手を打つ。それは———


『ただいま『探索者協会日本支部』より、ダンジョン入場規制を張ると半ば脅しの発言をいされましたので、協会側は信用できない為、各国の探索者協会への取引を中止し、予約されていた依頼も勝手ながら全てキャンセルさせていただきます』


 ———これは、日本支部だけでなく各国の探索者協会が焦った。日本支部の勝手な発言により自分達の国も被害を受ける事になり、各国の探索者協会に加え、国際探索者協会も日本支部に、非難の声を上げた。

 この事がキッカケにより、協会内の過激派の上層部は辞職になり、その他加担した者は、降格扱いされた。

 『戦の剣』もアイテムを入手できないどころか、『光の癒し』での治療も完全に拒否され、パーティ派遣も組織内で一時停止した。これにより、パーティ派遣で安全に探索できていた探索者から不安の声が『戦の剣』に上がった。さらに、クラン内の下っ端達が、フリーの生産者から脅迫や買い占め、半ば強奪の騒ぎを起こし、警察の世話になる事になった。『戦の剣』の上層部は責任問題を突きつけられ、現在進行形で評判が右肩下がりである。

 その他の機会を伺っていた者達も危険と判断して手を引いた。実は、真白と龍也は、強奪紛いの行いは予想外だったが、残りは完全に想定内だった為、『協会』も『戦の剣』も二人の手のひらで踊らされただけなのである。それに、予定よりも早く折れたので二人は拍子抜けだった。


「しかし、ここ3、4日でここまで行くと思っても見なかったぜ」

「そうですね。まだまだこちらの手札があったのに、張り合いが無くてつまらなかったです」


 そんな二人の会話を聞いている今回の事に加担した者達は、呆れた顔しているが、何も言えなかった。どうやら、ストレスが相当溜まっていて、あまり冷静で居られず、先が読めなかったのだろう。


「取り敢えず、こっちはお偉いさんと話しをつけて、最低限の妥協点を話し合う。幸い新しく会長の席に着いた人は親父の知り合いで、話しが分かる人だからな」

「そこんとこは私には分からないので宜しくお願いします。…いつも最後は石井さん頼みですいません…」

「なーに、こういうのは大人の役目だ! それに、白ちゃんには恩もあるしな! これくらいまかしとけ!」

「ありがとうございます」


 こうして、今回の事は数日のうちに解決する事になった。

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