第7話  真白の注文

 木曜日の放課後、麗花から連絡が入った、どうやら完成したらしい。どうやら、張り切り過ぎて、時間も忘れて造ってくれたみたいだ。

 申し訳ないと思ったが本人は「最高の依頼だったわ!」と言っている。また、アイデアがあったときはよろしく言われた。本人が楽しそうなら良かったと思う。

 しかしさすが麗花さん、早いだけでなく細かいところまでしっかり仕上げている。さすが腕の立つ裁縫師だ。

 目の前には、私と同じ体格のマネキンに完成した防具が着せられいた。

 それは、真白が機動力を損なわないようインビシブルシルキースパイダーの軽い外殻に防御力を高める為、アダマンタイトを僅かだが結合させ強度を高め、体にフィットする胸当と肩から手の甲まで一体のガントレット、膝から脛まで一体のグリーブ、それぞれの部位のプレートに魔力を伝導しやすいように、ミスリルを結合させ軽くて硬いプレートアーマーの下には、麗花が手作業で作ってくれた、厚手な布で胸元を強調するように、凝った刺繍をせず白を基調として、所々黒と空色の布使っている。膝下まであるスカートの裾の下に少し薄い生地の黒のフリルが重ねてある。まさにザ・ファンタジーというアーマードレスである。ついでに顔がバレないように仮面も作った。デザインは某アニメの悪堕ちした剣士の仮面の白色バージョンだ。


「いや〜、マジ最高! 数日でこのクオリティーに製作してくれた麗花さんにはマジ感謝ですね!」

 

 余りにもデキが良かったのか、真白は興奮している。それから、10分以上鑑賞会をした真白は、余韻に浸りながら最後の工程に取り掛かる。


「さて、最後仕上げにこの防具にスキル付与しなくちゃいけないね」


 装備の付与、これは錬金術師が唯一できる作業。基本的武器装備はそれぞれ専門の生産職が素材から作り、完成した物にはその素材のモンスターの能力が追加される。腕の立つ生産職なら【技術向上】スキルにより、ほぼ確実に能力が追加できる。

 しかし真白は専門ではなく、全て一から材料を作り完成させる為、能力の追加は出来ない。

 そこで錬金術師の【付与】スキルである。通常の【付与】は追加したい能力をイメージして付与するが、いくら【技術向上】スキルがあっても、4つが限界であるが、真白は普通のやり方をしない。


「付与するにもが足りないなぁ。石井さんにチャットして魔石を注文しよう」


————————


龍也:『おやおや白ちゃん、そろそろ連絡がくると思ったよ。魔石はいくつ欲しいんだい?』


真白:「何で私が欲しいものを知ってるんですか?」


龍也:『はっはっはー! 最近麗花の様子がおかしかったからね。訊いてみたら、白ちゃんの防具を作ってたみたいだから案の定てわけ!』


真白:「麗花さん……何故個人情報漏らすんですか? 石井さんだから良かったですけど」


龍也:『テンション上がってる麗花は口が軽いからな、なるべく気をつけるように言っておくよ。……しかし白ちゃん、今回の防具はすごい大胆だな、アーマードレスとかぶっちゃけ超意外だぜ』


真白:「どうですか! すごいかっこいいし、可愛いですね!」


龍也:『まぁそうだな。けどかなり目立つぞ…間違いなくいろんな輩から話しかけられる事になるぜ。そこんとこどうするんだ?』


真白:「そこは【認識阻害】などの付与を考えているので大丈夫です」


龍也:『わかった。それで、いくつ欲しいんだい? 在庫はたんまりあるから大丈夫だぜ』


真白:「ではお言葉に甘えて、Sランク魔石が8個、Aランクが10個、BとCのランクを5個ずつ、なるべく早くください」


龍也:『お、おう!? かなり多いな!? 結構気合い入れてるんだな……わかった、用意する』


真白:「よろしくお願いします。金額はいくらですか?」


龍也:『……それなんだが、今回は少しやってほしい事がある。勿論話しを聴いて断ってもいい。…実は目立つのを心配していると言っといて申し訳ないけど、白ちゃんには少し目立ってダンジョンに潜ってほしいんだ』


真白:「…どうしてですか?」


龍也:『実は、今までデザインが凝ったり派手な武器防具はレイドボスモンスターのドロップ品が当たり前だっただろ。でも、今回はハンドメイド品だ。白ちゃん、この間翠ちゃんにも凝った装備造っただろ。これから先、そういう装備が需要出ると俺は思うんだ。だから俺たちのクランはそういう装備を製作して販売つもりでいる。白ちゃんにはその広告塔になってもらいたいんだよ。もし、引き受けてくれるなら魔石代は半額で提供する』


真白:「それくらいの事だったら引き受けます。私もいろんな人にそういう装備してもらいたいですから…少し目立つ感じでいいんですよね」


龍也:『ありがとう。では、取引成立という事で魔石は半額で提供するよ…よかった、白ちゃん目立つの好きそうじゃないから断られると思ってた。本当ありがとう』


真白:「まぁ、目立つと厄介事がありそうですからね。……あ! そうだ石井さん、半額で提供してくれるんですよね! そしたら、広告費がわりにAランクの魔石を10個追加してください」


龍也:『…………ちゃっかりしてるなー白ちゃん。…やっぱり本当はやだった?』


真白:「そんな事ないですよ。急いで魔石を送ってくれるの待ってま〜す!」


————————


「はぁー…なんだか足をすくわれた気分だぜ」


 クラン『生産組合』のクランマスター石井龍也いしいたつやは、真白とのチャットを終えて、ひとりぼやく。

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