告白ざまぁ？

第1話

　告白、成功すれば天国。失敗すれば地獄。だから、簡単に背中を押せない。

（告白は確認って言うけど、ちょっときついよな）

　友人の音無が好きな子に告白するか悩んでいた。友達だから当然幸せになって欲しい。

　でも友達だからこそ分かる。少し高望みし過ぎじゃね？と。

「美樹本明日香か。俺、あまり話をした事ないんだよな」

　正確に言うと俺はある理由で女子とは、最低限の会話しかしていない。クラスの女子とも挨拶をする位だ。

キングオブモボな人間だから、それでも人間関係に波風は立ちません。

「釣り合わないのは、僕も分かっているよ。振られても後悔しない」

　音無の目は真剣だ。本気で美樹本さんの事を好きなんだと思う。でも、本気で好きだからって、告白が成功するとは限らない。

「分かった。でも、ラインで告白するのだけは止めておけよ……まあ、ラインを知っていればの話だけど」

　美樹本さんが優しい子なら良いけど、下手すりゃスクショされて拡散されてしまう。

　何よりうちのクラスには他人の不幸は蜜の味な奴等がいる。

「なに、なに！音無、Ｂ組の美樹本に告るの？なら、俺がお膳立てやるよ」

　クラスの陽キャ連中が、強引に会話に割り込んできた。

その中心にいるのが、的島（まとじま）騒（そう。）性格も軽けりゃ、口も軽い。

見た目は良いけど、性格はクズ。趣味は動画投稿な自称クラス一のモテ男。

そして的島の顔を見たら分かる。ただ楽しみたいだけだと。

（動画でも撮って再生数稼ぎをする気か）

「的島、声がでかい。それにお前は関係ないだろ？」

　普段は女とまともに口をきけない陰キャって、俺等の事を小馬鹿にしている癖に。

「関係あるだろ？俺も同じクラスなんだし。要は告白する勇気が出ないって事なんだろ……よし、若部武（モブタケ）、お前美樹本と同じクラスの河合桜に告れ」

　……は？何を言ってんだ。こいつは。

　河合桜、バスケ部所属の元気系少女。学校で一・二を争う美少女で、当然もてる。

　ちなみに俺の名前は若部（わかべ）武。だから的島は俺をモブダケと、呼んでいるのだ。

「いや、なんでだよ？」

　俺は告白したいなんて言ってないぞ。それに告白する意味がない。

「茂野、前に河合の事が好みって言っていただろ？ダチも道連れ……一緒に告るんなら、音無も勇気出るだろ？明日の昼休みに二人を呼び出してやる。きーまり」

　まずい。これはかなりまずい。音無の心配をしている場合じゃなくなった。

◇

　放課後、俺は重い足取りである場所に辿り着いた。

俺はここである人物と待合せをしている……まだ姿は見えないけど、既に胃が痛いいです。

「武―、お待たせ。愛しの彼女の到着だぞ」

　その人物は俺を見るなり抱き着いて来た。何時もなら、鼻の下を伸ばすんだけど、今はプレッシャーでしかない。

　彼女の名前は河合桜。明日、俺が告白する人物だ。

（自分の彼女に公開告白ってなんだよ？何より上手く伝えないと……）

　何を隠そう、河合桜は俺の彼女なのだ。元は幼稚園からの幼馴染み、小学校で桜が転校して高校で再会。そして付き合ったんだけど。

「桜、ちょっと相談があるんだ。告白……」「告白？誰にされたの！その泥棒猫はなんて名前？絶対に武は渡さないんだから」

　告白のワードだけで激おこの桜さん。

そう、桜は超絶嫉妬深い。

だから、俺はクラスの女子と最低限の会話しかしない訳で……もしも、桜以外の女子を好みなんて言った日には……。

「違うっての。落ち着いて話を聞け」

　そこから俺は桜を宥めながら、今日起きた事を伝えた。怒りから一転、不敵な笑みを浮かべる桜さん。

「私が武を振る？あり得ないっての！的島って、あれでしょ？手当たり次第口説いているキモ男」

　世間的には、的島の方が俺よりイケメン扱いされると思うぞ。

「そんな事しているのか。あいつに桜と付き合っているって言わなくて正解だな。『Ｂ組と合コンを開け』とか言いそうだし」

　その前に信じないと思う。多分、痛い奴扱いされて終わりだと思う。

　下手すりゃモブ武がオッケーなら、俺にもワンチャンとか思いそうだ。

「告白を動画で撮影ね……ここは愛しの彼女ちゃんに任せておきなさい。武は素敵な告白を考えておくよーに」

　そう言って俺の肩を叩く桜。違う意味でプレッシャーなんですが。

「問題は音無か。美樹本さんって、どんな人なんだ？」

　顔だけは知っている。前に、桜が仲の良い子ってシャメを見せてくれたのだ。

「そこは安心して良いよ。明日香も音無君の事好きだし」

　まじ？なんでも二人は幼馴染み。音無の親父さんが経営している病院で、美樹本さんのお母さんが働いているそうだ。

◇

　次の日、俺は的島達に連れられて、校舎裏にやって来た。

「若部君、お話ってなに？」

　他人の振りをしてみせる桜。この流れで、がちで振られるとかないよね。

「えーと、本当は誕生日に渡そうと思っていたんだけど、給料三ヶ月分ならぬバイト代三ヶ月分の指輪です。結婚を前提にお願いします」

　これが昨日必死に考えた再告白だ。知らない人が見たら、かなり痛い奴だと思う。

　……沈黙が怖いんですが！

「きもっ！いきなり結婚なんて痛すぎだろ！視聴者の皆さん、このキモ男は、俺がしっかり叱っておきますね」

　陽キャ達の嘲笑が響き渡る。まさか過ぎる展開なんですが。

「皆、しっかり撮ったよね？それ、結婚式で流すんだから……それと武、前提ってなに？私はもう子供の名前も考えているんだから。でも、これで証拠をゲット。絶対に逃がさないからね」

　そう言うと桜は俺にキスをしてきた。

　そして隠れていたＢ組女子＆女子バスケ部員の歓声が響き渡る。

「桜、おめでとう！」

「明日香も成功だって」

「告逆ざまあって受ける。てか、性格悪過ぎでしょ」

　運が悪いと言うか、なんというか的島はダブル生配信をしていたらしい。

　結果、動画はかなりの再生数になったそうだ。

　そして的島は人気者になった。ネットの玩具という人気者に。

◇

　ある高校には、裏庭で告白したカップルは末永く幸せになると言う伝説がある。

「音無さんのご両親もここで、告白したんだよね。僕の両親もそうなんだ……好きです付き合って下さい」

　そして再び新たな恋人が誕生した。

「健のパパとママもラブラブなの？」

「うん、良く告白動画を見ている。子供の前では止めて欲しいんだけどね」