2章:物理無効世界~魔力0の魔道学園生活編

38:友達何人出来るかな?


「ケイオスです、よろしくお願いします」

「彼は編入試験に過去最高の455点で合格した有望な生徒です、皆さん仲良くしてください」


 担任の先生にハードル高めの紹介をされた俺は2-Sの教室にやってきた。

 2-Sクラスは10人しか居ない。

 俺は11人目として編入する。

 皆ひそひそと何か俺を見て話している。

 入試試験を見ていた生徒も居るのだろう。


『妹のアガサと友達になってあげて』


 編入するに当たってツカサさんに言われた事だ。

 どうやらタバサさん以外にも俺と同い年の妹さんが居たらしい。

 2-Sに居るって事は俺がSクラスになる事は想定済みだったのか?

 結構試験には苦労した気もするが(主に実戦)ツカサさんの俺の評価は高い様だ。


「ケイオス君は皆さんの事を知らないので一人ずつ軽く自己紹介しましょうか?」

「「「「えー」」」」


 それはありがたい、と思ったのにクラスの大半は嫌がっているようだった。

 なんで! 俺は自己紹介したじゃないか!


「はいはい、出席番号順にひとりずつね」

「それだったらケイオスさんも基礎能力についてを追加してもう一度自己紹介おねがいしますよぉ」


 なんか性格の悪そうな金髪男がこちらを値踏みするような目で見ながらそう言った。

 コイツぁ生理的に無理なタイプだな!


「うーん、まあ【リューシクス杯】も近い事だし基礎能力はお互い把握すべきかな……ケイオス君もう一度いいかな?」

「わかりました」


 魔力0とか、SSとかイジられるだろうけど遅かれ早かれだからいいか。


「えっと、改めましてケイオスと申します。基礎能力は魔力F、魔防SS、敏捷SSです」

「は? SSってなんだよ、嘘つくなよ! S+が上限なの知らないのかよ、てか魔力Fて」

「試験官のヘキサさんにSSって言われたので間違いないですよ、魔力は0なのFです」

「「「「魔力0?」」」」

「0ってゴミじゃねえかよ! 他が良くても意味ねえだろ、なんでこんなやつがSクラスに?」

「なんでって……」

「はいはい、試験はちゃんと行われた結果455点でした、魔力が無くてもケイオス君は優秀です」

「信じらんねぇな、証拠みせてくんねーと」

「そのうち見せますので今は皆さんの自己紹介をお願いしたいです」

「そうですね、次の方お願いします、番号順に」

「けっ……」


 喧嘩腰の人間が何人か居る様だ。

 そんな中、とんでもない美人がずっと心配そうに俺を見ていたのに気づいた。

 うーんあの人がアガサさんかな?


「じゃあ僕から……出席番号1番アイン・ウィンデールです。魔力B+、魔防B+、敏捷B+、得意なのは火系魔術です」


 眼鏡をかけた真面目そうな青年だ。勉強できそう。


「2番ウーム・カーム、魔力B、魔防S、敏捷C+、地魔術使いだ」


 ガタイの良い青年だ。不愛想だが超強そう。


「出席番号3番! キャロル・マーガリンよ! 魔力Aー、魔防B、敏捷B+で得意なのは水と風!」


 なんか素朴で元気な女の子だ。少し幼く見えるが親しみやすそう。


「4、エーベル・キュアリリー、魔力A、魔防B、敏捷C+、水氷」


 すげえ冷たそうな女性。美人だがクールすぎて目つきが怖い。


「番号は5番だが実力はナンバー1! 俺はアルバンダル侯爵家が次男、バカール・アルバンダルだ! 魔力はA、魔防B、敏捷Bの魔力特化型の大器晩成だ! 得意なのは強いて言えば炎と嵐、そして雷だ」


 さっきの生理的に無理なヤツ。

 金髪のオールバックがテッカテカしてる。

 自分で言う大器晩成うける。あとムカつく顔。


「出席番号6番ジャン・マタドールだ。伯爵家嫡男なので卒業後は伯爵だ、平民は気安く声を掛けるな。能力はB、B、Aーで得意は全てだ」


 この世界の貴族の品位はどうなってんだよ……

 ツカサさんとこも貴族だよな……えらい差だ。

 つか全て得意って何なんだ……

 ちなみに金髪角刈りの丸顔。


「7番、ベル・ベルモットですわ。魔力A-、魔防C、敏捷A、得意なのは風と炎ですわ」


 金髪ドリルヘアーの典型的お嬢様だ。顔は髪型のわりに普通だ。


「8番ザックだ! よろしく! 魔力B、魔防A、敏捷Aで得意なのは土と地属性だ!」


 お? 爽やか青年だ。家名も無いし平民なのかな? オレンジ色の髪の短髪の色黒メン。


「……」


 ん?


「…………」


 んん?


「………………ぁがさです」


 聞き取れねえ! けど多分この人がアガサさんだ。

 さっき俺を見てたとんでもない美人だ。銀髪で綺麗すぎる顔にスラっと背が高い。


「ぁぁの……」


 顔を真っ赤にしてモジモジしている。可愛いけど可哀そうになって来た。


「あ、大丈夫ですよ無理しなくても、ツカサさんに聞いてますので」

「ぁ、はぃ……」

「はぁ? ゴミの分際でツカサ様と知り合いなのかよ! 生意気な!」

「見るからに下賤の民の分際で……ツカサ様がどういう方か分かっているのかキサマは」

「あー次は私の番かな? 10番のアドラーだ。魔力A、魔防A、敏捷Aで得意なのは水と土だ。よろしく」


 ムカムカしてたら良い感じにアドラーさんが割って入ってくれた。

 空気読める人っぽい。見た目は真ん中分けの白髪の長髪で大人っぽい顔。


「はい、皆さんありがとうございました。ちなみに私はリンジー・リンプトンです。専門は水と土と補助魔術よ」


 先生はかなりまともそうだ。年齢は分からないがお母さんって感じの雰囲気。茶髪のショートヘアだ。


「はい、くれぐれも皆さん仲良くおねがいしますね!」


 ブツブツと金髪貴族二人は何やら文句を言っていたが先生にピシャリとしめられたので黙った。

 まあどうせわかりやすく嫌がらせとかされそうだなー。

 模擬戦とかあれば堂々とぶん殴れるんだが。

 さすがにそんな都合よくは


「んじゃ午後から【リューシクス杯】に向けての実戦訓練だからいつものように2人1組で……ってケイオス君が増えたから1人余るわね」


 お? さっそく実戦訓練だと?

 てかむしろ座学が少ないのかもしれない。

 やっぱりなんだかんだ魔法は撃って練習するのが一番! みたいな感じなのかも?

 だから演習場やら闘技場やらが充実していたのだろうか。


「あーそれなら私とアガサさんの組に入ってもらいたいのですが」

「仕方ないですね、変則的ですが一旦3人でお願いします」

「……ぁぃ」

「ありがとうございます」

「あ、よろしくおねがいします」

「よろしく、お手並み拝見したくてね」

「お手柔らかにお願いします」


 アガサさんと同じ組なのはいいが、このアドラーって人は、なんだかつかみどころが無いな。


「ケイオス君、ルール違反は無しでお願いするよ」









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