28:ドMだけどSランク


「ケイオスさんの敏捷は……Sです……いや、S+? それでも足りない気がするー! SSで!」

「おぉ、なんかよさげですね!」

「よさげどころか最高ランク以上よ!」

「それじゃーさっそく次の魔防測定しちゃいましょー」

「それなら、あそこのあの人達に協力してもらいましょ! 沢山居ないと無理よ!」

「あーそれはそうかもですねー、ちょっと私話してきまーす、ケイオスさんはその間にこれを着ておいてくださーい」


 と、ヘキサさんからトレーニングウェアみたいなものを渡された。


「その服は、魔防は0だけど絶対に破損しない服よ! 私と決闘した時にもそれがあれば……」

「なるほど、それは助かりますね。服が破れたり燃えたりは困りますしね……」


 貰った服を持って、人気のない物陰へ行き、俺は着替え始めた。


「おい! タバサ様の弟子気取りってのはお前か?」

「はい?」


 振り返ると男子学生らしき青年が3人、こちらを睨んでいる。


「タバサ様が貴様の様などこの馬の骨ともわからんヤツを弟子にするわけがない!」

「そうだ! 我らのタバサ様の名を汚すな!」

「タバサ様は美しく高貴な存在だ! 貴様の様な下賤の者が近づくな!」

「……えーっとタバサさんの……ファン? とかですか?」

「ファンなどと言う低俗なものと一緒にするな! 我らはタバサ様の親衛隊だ!」


 おー、やべーのが居るなぁ。

 タバサさん、可愛いとは思ってたけどまさか親衛隊が居るなんて。


「これから測定で貴様を血祭りにあげてやる! 命が惜しくば二度と弟子を名乗るな!」

「誓わなければ測定と言う名の私刑に処すぞ!」


 なるほど、察するに生徒が撃った魔法に耐えるのが魔防測定って事?

 測定装ってタバサさんの弟子を名乗る俺をやろうとしてるのか。


「どうぞ全力でやってください、心配は無用です」

「「「な!」」」


 3人はワナワナと怒りの表情で顔が赤く染まっていく。


「「「コロす!」」」

「どうぞご自由に」


 着替え終わっていた俺はそう言い残し、タバサさんの元へ戻った。


「ん? どうしたの?」


 これが親衛隊の出来る程の綺麗な顔かぁ……とじっと見ていたらタバサさんと目が合った。


「いやぁ、やっぱりタバサさんは可愛いなぁって思って」

「はぁ? ば、馬鹿じゃないの! 当たり前の事を今更!」


 タバサさんは顔を真っ赤にしながら怒りだした。

 怒ってる顔も可愛いけど、手帳の様な笑顔が一番だろうなきっと。


「おまたせー……ってまたイチャイチャしてー、タバサさん?」

「ち、ちがうし! 測定! さっさと始めたら!」


 ヘキサさんが大勢の生徒を連れて戻って来た。


「フフフ、それではー、魔防測定始めまーす」


 よく見ると大勢の生徒の中にさっきの親衛隊3人もいる。

 こちらを睨みつけている。


「今から初級魔術、中級魔術、上級魔術を順にぶつけていきまーす! ケイオスさんはおとなしく食らってくださいねー」

「避けるなって事ですね」

「そうですー、魔術の等級と人数を少しずつ増やしたり強くして魔防を測定しまーす!」

「なるほど、面倒なんで全員強いのをいっぺんにで良いですよ」

「「「「「は?」」」」」」


 数十人の生徒たちが殺気立つ。


「いや、皆さんのお時間を無駄に取らせても申し訳ないんで……パパっと終わるように」

「そんなにパパっと死にたいのか? こいつはアホか?」


 さっきの親衛隊の奴が煽ってくる。


「まあやれるもんならやってみろって感じですかねぇ」

「舐めやがって!」

「絶対コロス!」

「死んで後悔しろ!」


 他の生徒も親衛隊につられて俺に罵声を浴びせだした。


「はいはーい、普通なら止めますが、ケイオス君は大丈夫だそうなので全力でやってくださーい」

「「「「「まじか」」」」」」

「ふん! アンタ達! ケイオスの凄さを見てお漏らしするがいいわ!」

「「「お漏らしって言い方可愛い」」」


 殺気立っていたはずの親衛隊だがタバサさんに秒でメロメロだ。

 お漏らしって確かに煽りではあんまり言わないよな。


「んじゃ、何属性でも上級魔術でもなんでも全員でどうぞ」


 そう言って俺は仁王立ちする。


「「「後悔するなよ!」」」


 タバサさんを見て締まりのない顔をしていた親衛隊が我に返ってキッと俺を睨む。

 その間にその他生徒達からの魔術が先行して飛んできた。


「火術展開! 大火柱!」

「水術展開! 大洪水!」

「風術展開! 大旋風!」

「土術展開! 大岩石!」


 おー、確か全部上級魔術だ、コレ。

 タバサさんと魔方陣書き取りしたからわかる。

 続いて親衛隊の3人も容赦無く魔方陣を展開してくる。


「炎術展開! 豪炎!」

「氷術展開! 氷柱!」

「地術展開! 地割!」


 親衛隊は上位属性? だったかな、魔術自体は中級のやつかな?

 それでも他の生徒達の魔術よりは強い。

 親衛隊を偉そうに名乗るだけはある。

 だがしかし……


「ぬるいなー」


 タバサさんやツカサさんに比べるとなー。


「「「「「なんで!」」」」」

「なんでって……効かないもんは効かないしなぁ」

「防御魔法を使ってないのにすごいですねー」

「見なさい! これが私のケイオスの凄さよ! 存分にお漏らしなさい!」


 生徒達は皆、納得がいかないようでしつこく魔術を展開してくる。


「ついでにタバサさんとヘキサさんもどうぞー」

「マジで言ってます? 私結構つよいですよー?」

「ケイオスなら大丈夫です! 一緒に展開しましょ!」


 何だろう、嬉々としてタバサさんが魔術を展開しようとしている。

 ヘキサさんはやや戸惑いながら引いてる。


「いくわよ! 嵐術展開! 乱嵐刃陣!」

「うわー、タバサさん本気ですねー……それじゃあ私も……」


 タバサさんはあの時の服が斬り刻まれた魔術だ。

 さっき借りたこの服は破れない! すごい服だな。


「行きますよー! 多重展開! 土竜炎陣!」


 うおう! これは2属性同時か?

 地面に穴が無数に空き、炎のうねりが生き物の様に這い出て来て足に纏わりつく。

 スゴイ魔術だなー。威力もスゴイけど足止めにも使えそうだ。



 生徒数十名と親衛隊3人、それにタバサさんとヘキサさん。

 全員からの魔術が俺だけに注がれる。


 そして全員の魔術が同時に発動し終わった。



「おー! この服すげえな! 燃えない! 破れない!」



「「「「「いや、すげえのお前だから」」」」」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る