27:トンデモない記録に衝撃も走る
ヘキサさんは何やら倉庫をゴソゴソとし始めた。
「えっと……この辺に……あった! はい! コレ!」
グイっとヘキサさんが握力計の様なモノを俺に差し出す。
どこかで見た事が有るヤツだ。
「第一科目は基礎能力測定でーす! まずはこれをぎゅーっと握ってもらって魔力を計測しますよー」
「……魔力ですか」
魔力計を受け取った俺は以前と同じく全力で握ってみたが……
「……0ですね、聞いては居ましたけど」
「……0ね、すごい必至な顔だったのに」
「……0だと不合格ですか……?」
「いやいやーそんな事は無いですよー! ただ基礎能力は学生証に記載されるけど!」
「学生証?」
「そう、文字通り学園だからね! 生徒全員が持ってて所属クラスと基礎能力等が記載されるんですよー」
「ほらコレよ!」
タバサさんがグイっと俺に学生証らしきものを見せてくる。
名前 :タバサ・フォルスターク(写真付き)
クラス:魔術1ーS
魔力 :S
魔防 :B+
敏捷 :Aー
スキル:風魔術5、火魔法1、雷魔術2
タバサさんの写真がめちゃくちゃ笑顔で可愛い。
俺にも少しは笑顔で対応してくれよ。
「おぉぉこんな感じですか、可愛い写真ですね」
「どこ見てんのよ! 変態! クラスとか基礎能力を見せたのよ!」
「そーそーそんな感じで記載されますー、ちなみに魔力0だと……Fですかね」
「Fっていうのは……」
「最下級ですね……0ですし」
「そりゃそうですよね……」
「で、でも! ケイオスは他がすごいのよ!」
「それも聞いてますー! フフフ、楽しみデスね!」
ツカサさんが何をヘキサさんに言ったかはわからんが期待を裏切らない様に頑張ろう……
倉庫を出て広めの演習場の様な場所へ連れて来られた。
授業中なのか生徒の姿が見える。
「はい! ここではまず敏捷を測定します!」
「ケイオス! さっきの汚名を返上よ!」
「敏捷なら行ける気がします!」
「おー自信満々だねー、それじゃまずは50メートル走を測りますよー」
「走るんですね! 大好物です!」
「言い方が変態ぽいわね」
「ちなみに生徒たちの平均タイムは魔法術無しで7.6秒、魔法術有りだと最速2.5秒とかの子が居ますよー」
「……なるほど」
まあ俺は魔法術の有無は関係ないけど、2.5秒か……思ったより……
ちなみに魔法術って言うのは魔法と魔術を合わせて言う時の言い方らしい。
「準備はいいかなー?」
スタートラインに立った所で気づいたが先ほどの生徒たちが物珍しそうにこちらを見ている。
「それじゃ位置について!」
魔力は0だったし敏捷は好成績を出したいな。
【少し速く】走るか。
「よーい! どん!」
俺は力強く地面を蹴った。
「……え?」
「……は?」
少し速すぎた。
皆スタート地点で俺が急に消えたと思った様だ。
「こっちです」
ゴール位置から皆に声を掛ける。
「「ええ?」」
「少し速すぎましたね」
「え? ちょっと待って、今走って移動したんですか? 転移とかじゃなくて?」
「はい、走りました」
見ていた生徒達がざわつきだした。
――おい、今アイツ消えなかったか?
――敏捷測定じゃねえの? なんで転移魔法使ってんだよ!
――あれで走ってるって嘘つくならもう少し考えた嘘つけよ、馬鹿か!
「ちょっとアンタたち! 私の弟子のケイオスに文句があるわけ?」
――げっ! 狂犬タバサの弟子?
――でもタバサさんって超真面目だから今のもインチキじゃないんじゃ?
――そんな事より、タバサちゃん可愛い。
なんとタバサさんが俺を庇って怒ってくれている。
狂犬? 真面目? 可愛い? どうやらタバサさんは有名人の様だ。
「タバサさん落ち着いてー。しかし、アレじゃ測定出来ないですねー」
「抑えて走りますのでもう1度良いでしょうか……」
さっきのでも抑えたんだが普通の人に見えないとダメっぽい。
「わかりましたー再度測定しましょー」
俺は再度スタートラインに立つ。
先ほどよりギャラリーが増えて皆がこちらをじっと見ている。
「ふぅ……」
不正だと騒がれた剣術大会を少し思い出してしまった。
次は目に見える程度の速さで走る。その上で記録を塗り替える。
「それでは、よーい、どん!」
ガッ! スタタタタタタタタッ
「! ご、ゴール! タイムは……1.4秒!」
「「「「「おぉぉぉ」」」」」
かなり抑えて走ったが記録は出た様だ。
見ていた生徒たちも走っている姿を目の当たりにして素直に驚いている。
――やべえ、なんだよあれ。
――今度は走ってる姿が見えたけど……速すぎる!
――あれで魔法術使ってないの? 使ってたとしても速すぎるけど……
――あんなヤツに魔法当てられる気がしないんだけど
――そこは広範囲魔法でやればいいのよ!
――おいおいそんなことしたら皆巻き添えに
――てかアイツ
「「「「「やばすぎね?」」」」」
「ふん! 見たかしら! 私のケイオスの実力を! ふふん!」
「ほーんとにすごいですねー聞いてた以上ですー」
「まあ、走るのは大好物なんで……」
とりあえず魔力0の汚名を少しは返上できたかな?
「しかし、タバサさーん。私のケイオスって言いましたねー、なーんかそれって……」
「私の……弟子のケイオス! 言い間違えただけよ!」
「ふふふ、可愛いですねータバサさんはー」
皆が居る前でエロ男って呼ばれなくて良かった。
「あとは……ジャンプ力を測りますよー」
「跳ぶのも大好物です!」
「やはり変態ね」
「大好物が多そうですねー、ジャンプは魔法術無しで平均0.6メートル、魔法術有りだと最高10メートル程度でしょうか」
「10メートルですか……」
その程度なら余裕かな、まあその気になれば数百メートルは飛べるとは思うけど。
また見えない高さまで跳ぶと不正とか言われそうだから見える範囲にしとこう。
「んじゃーこの紐を持ってジャンプしてもらいますー高く飛ぶ人用の測定紐ですよー地面から離れた長さだけ紐の色が変わりますー」
不思議な道具だ。やはり魔法が進んでいる世界だからこういったものが多いのかな。
「それじゃ跳びます、見逃さないでくださいね!」
ググッ……バシュッ!
踏ん張って真上に跳び上がった。
「おー絶景絶景」
下を見ると豆粒くらいのサイズになったタバサさん達が手を振っている。
俺も手を振り返す。っと握っていた紐の長さは足りなかった様で全部空中に浮いている。
スタッ
「アンタ! ほんとにスゴイわね!」
「この紐50メートルあったんですが余裕で足りませんでしたねー」
地上に降りるとすぐにタバサさんとヘキサさんが褒めてくれた。
ギャラリーだった他の生徒達は絶句している様だ。
「「「「「アイツ人間辞めてない?」」」」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます