13:閑話※ケイオス失踪後のケイト
あの日、アタシはケイオスへの気持ちにはっきりと気づいてしまった。
でも仲良くしたくても素直になれない性格が災いしてばかり。
口から出るのは可愛げの無い減らず口ばかりだった。
今まで、嫌われたくないと誰に対しても思っていた。
だけど、好かれたい、と思う事は初めてで戸惑いばかりだった。
アタシの心は大変な事になっている。
なのにケイオスはいつも通りでムカつく!
コイツ何なの! とよく1人で憤慨していた。
ますますアタシは可愛げのない事ばかりを言ってしまう……
そんなアタシにケイオスは笑顔で楽しそうに答えてくれる。
もう! 何なのよ! バカ!
ー・ー
「ケイオスが居なくなった?」
また行方不明。
何かあったのでは?
不安になり必死に探すが見当たらない。
今回は見つからず、1人で探し回るには限界があった。
アタシは町の人に聞き込みをしたり、ケイオスの自宅を見に行ったりした。
「どこに行ったのよ……」
数日経ってようやくわかった。
ケイオスの両親が馬車の事故で亡くなったらしい。
事故現場へ飛び出して行ったケイオスはそのまま戻ってきてない。
ケイオスの心境を考えると胸が苦しくなった。
ケイオスは両親と3人暮らし。
両親は駆け落ちしてこの町に流れ着き商売を始めた。
その経緯もあって頼れる家族は他には居ないだろうと、町の人は言っていた。
ケイオスは独りぼっちになったのだと町では言われていた。
アタシは? アタシが居るのに。
アタシはおじさんとおばさんにお願いした。
独りぼっちのケイオスを一緒に住ませて欲しいと。
優しいおじさんとおばさんは快く了承してくれた。
でも肝心のケイオスが居ない。
どこに行ったの……ケイオス……
ー・ー・ー
ケイオスが居なくなってしばらく経った。
私は寂しくて悲しくて仕方なかった。
心の隙間を埋める様に魔法に打ち込んだ。
魔法が好きだったから?
もちろんそれもある。
でも本当の理由は違った。
ケイオスが冒険者になったと噂で聞いた。
しばらくするとギルドにも顔を出さなくなったという。
未だに行方はわからない。
私には力が無い。
戦う力が欲しいんじゃない。
ケイオスを見つけだす力が欲しかった。
考えた結果、アタシは世界一の魔法使いになる事を目指した。
有名になればケイオスはアタシに気づくわ!
世界一の魔法使いになれば皆も探すのを手伝ってくれるはず!
居なくなったケイオスへの想いは決して消えていなかった。
ー・ー・ー・ー・ー・ー
「はぁ? 今更!」
両親から届いた手紙を見てアタシは怒りに震えていた。
あれから、アタシは頑張った。
魔法学校に特待生で入学し、ぶっちぎりの首席で卒業。
アタシと周りの生徒とのレベルが違いすぎた。
行く意味あったのかしら? と少しだけ思ってしまった。
その後、冒険者として活躍。
【賢者】という事も有り、強力な魔物の討伐依頼が多かった。
が、しかし! アタシの特大魔法で一発退治!
気づけばあっという間にランクはゴールドになっていた。
そして、活躍が認められたアタシは国から宮廷魔道士の称号を与えられる事になった!
世界一の魔法使いへの道ももうすぐね! と喜んでいたのに……
両親の手のひら返し!
帰宅命令の手紙を送ってきた!
アタシは怒り心頭だった!
「ふっざけんじゃないわよ! アタシの親はおじ様とおば様よ!」
もちろんそんな命令は無視よ!
両親に捨てられた、兄と姉には裏切られた。
その事は忘れていない。
頑張ってきたのはケイオスを探す為の力を得る為だ。
だけど、アタシを捨てて裏切った家族を見返してやる!
と言う思いも小さくは無かった。
両親の馬鹿な命令を無視して王都向かった。
宮廷魔道士への就任について陛下と謁見する為だ。
アタシはおじ様とおば様にも一緒に来てもらっていた。
ー・ー
王都に着くとすぐに登城する様にと騎士から伝えられた。
おじ様、おば様と共に謁見へ向かう。
謁見の間に入ると、両親と兄と姉がすでに来ていた。
は? なんなのこいつら!
と言う怒りをこらえ、両親達を無視し陛下へ挨拶する。
「陛下、ケイトです。宮廷魔道士として認めて頂き光栄です」
「うむ、【賢者】の名に恥じぬ活躍ぶりは聞いている」
「はい、これからますます頑張りたいと思います」
「ケイトは我がフィンラッド伯爵家の誇りでございます!」
父が急に口をはさんできた。
「ふむ……しかしフィンラッド伯爵家は長男、長女の話しか聞いた事が無かったが?」
「そ、それは! ケイトを家名の重圧と精神的負担から解放し成長と活躍をさせる為に配慮を……」
キレそう!
父が好き勝手に言い陛下へアピールをしている。
フィンラッドとは私の実家の家名だ。
家から追い出されてから名乗った事は1度も無い。
追い出される前に父から二度とフィンラッドを名乗るな! と釘を刺されたのを覚えている。
コイツら燃やしていいかしら?
陛下の前では流石にダメよね……
「陛下……厚かましいのは承知で2つお願いがございます」
父に火球を撃ちこみたい衝動を堪え、両親を無視して陛下に話しかける。
「ふむ、何が望みだ?」
「1つ目は、ケイオスと言う【剣士】を探す事に協力頂きたいのです」
「ふむ、ケイオス……それはそなたの……」
「こ……友達です、数年前から行方不明で……」
【恋人】もしくは【婚約者】と言いそうになった。
ケイオスの真意はわからないが、以前アタシの事が好きだと言われた事がある。
その記憶がアタシの中で都合よく解釈され妄想が暴走している。
我に返って【友達】と言った自分を褒めたい。
「わかった、こちらで手配しておこう、係の者へ特徴などを伝えてくれ」
「ありがとうございます!」
やった! これでもしかすると……!
そんな期待感に包まれてすっかり両親の事を忘れていた。
「ケイトそいつは何者だ? 平民か? 【賢者】たる者がそんな下賤の者と関わるな」
ブチン。
父の発言にアタシはキレた。
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