第23.5話 何歳?
「ねぇ、フェリエッタさん。」
「はひ?」
第三班のミーティングルームでは、フェリエッタの歓迎会が行われている真っ最中であった。普段は会議に使われている机の上に、
「フェリエッタさんのこと、フェリエッタ“ちゃん”って呼んでもいい?」
「え!? はひ、んぐ! …喜んで!」
フェリエッタは口の中いっぱいにあったケーキを、急いで飲み込みながら答えた。それを聞いた音沢は、嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「ホント!? ありがとー。まじ、ひさしぶりに年の近そうな女の子が入ってくれて、良かったー。」
「わしも、ふぇりえったと呼びたいぞ。良いか!」
「もちろん、いいですよ。」
枸橘からの問いかけに、フェリエッタは彼女の頭を、なでながら答えた。
「そういえば、皆さん、おいくつなのですか?」
「えー、それ聞いちゃうかー。ちなみに私、何歳に…。」
「25。」
音沢の話を突然
「25。」
「あのー、何が…。」
「そいつ、25。」
「ちょ、君!?」
音沢が、フェリエッタの隣を飛び出し、江良川へと向かっていった。江良川は、その初動を、紙一重で回避する。
「なんだよ! ああいうノリが、一番うぜぇって知ってっから、止めてやったってんのに。」
「にして、もうちょっとやり方ってのがあったでしょ、君!」
フェリエッタから離れた場所で、音沢と江良川が、互いに言い合いながら、軽く殴り合っている構図がしばらく続いていた。
「ははは…。」
「あの二人は、いつもあのような感じなので気にしなくていいです。」
その様子を、フェリエッタが苦笑いしながら見ていると、黒薙が彼女に話しかける。黒薙は、ギプスを付けていないもう片方の手に持った紙コップを、フェリエッタに差し出していた。
「そ、そうなんですね。」
「ちなみに江良川さんは、16歳です。」
「へー、ちょっと意外です。」
フェリエッタは、黒薙から紙コップを受け取りながら答える。黒薙は、フェリエッタの隣の席に座る。
「ところで、クロナギさんは…。」
「私は、今年で18です。」
「え! そうだったんですね。」
「…フェリエッタは?」
「わ、私も18です。何か運命を感じちゃいますね。」
フェリエッタが、黒薙に、そう言いながら笑いかけると、黒薙は、紙コップを口につけた状態でそっぽを向く。
「…うん。」
彼女は照れているのだろう。黒薙の顔は赤面していた。
「わし! わしはじゃな…。」
「そして俺は、28だぜ。」
そんな二人の間に割って入るように、笹平がソファの後ろから顔を出す。
「フェリエッタ、ちゃんと食べているか?」
「は、はい。こんなにおいしい物を食べたのは、初めてです。特に、ここにあるケーキは、ホントに甘くて、フワフワして、おいしいです!」
「ありがとな。そう言ってくれると、頑張って用意した甲斐があるもんだ。」
笹平はそう言うと、頬を搔いていた。
「ササヒラさんが、28歳ということは、ここでは一番の年長ということなんです?」
「あー、えー、まー、でも、そういう訳じゃないんだ。」
笹平は、
「え? でも。」
フェリエッタは周りをキョロキョロと見渡すが、笹平より年齢が上の人は見当たらない。
「んー、あ! 分かりました。ウナヅキさんで…。」
「わしじゃ。」
フェリエッタの膝の上で、枸橘が言う。
「え?」
「わしは、
「えーーー!?」
枸橘からの
「ふぇりえった、おぬしのことなんぞ、もう知らぬ!」
フェリエッタの膝からぴょんと降りると、枸橘は、ムッとしたような表情を浮かべながら、離れて行ってしまう。
「え、あ! ご、ごめんなさい。」
フェリエッタは、ソファから立ち上がると、他の班員に見守られている中、枸橘の後を小走りで追いかけるのであった。
【第一部完結】IDIOM. 異世界から来た新人魔女は、現代で美少女エージェントに管理される @ruritate
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